国家安全保障局の「令状なし盗聴」は違憲──連邦地裁判決
米国ミシガン州東部地区連邦地方裁判所の判事は8月17日、米国居住者の電話やインターネットでのやり取りを盗聴する米国連邦政府のいわゆる「テロリスト監視プログラム」を違法とし、米国国家安全保障局(National Security Agency:NSA)とその関係者に対して同プログラムの中止を命じた。
同プログラムは、NSAが裁判所の令状なしに、国際テロ組織アルカイダとのつながりが疑われる米国内と他国との間の通信を傍受できるようにしたもの。原告の米国自由人権協会(American Civil Liberties Union:ACLU)と複数の米国イスラム系団体は、NSAのプログラムは学者、法律家、ジャーナリストなどの米国居住者が、政府に監視されることなく国外と情報をやり取りすることを困難にしていると主張していた。
アナ・ディグス・テイラー判事は命令書の中で、2002年にジョージ W.ブッシュ大統領が承認したこのNSAのプログラムは、米国憲法の言論および結社の自由を保障した規定と不当な捜査および押収を禁じた規定に違反しているほか、米国憲法の三権分立規定や、スパイ防止活動のための盗聴に裁判所が令状を出すように定めている外国諜報活動偵察法(Foreign Intelligence Surveillance Act:FISA)にも違反していると述べている。「本件に関して、何が公共の利益であるかは明白だ。それは、憲法を支持することである」(テイラー判事)
ブッシュ大統領は、潜在的なテロリストを突き止めるために有益な手段であるとして、この盗聴プログラムを支持してきた。ホワイトハウスのトニー・スノー報道官は今回の判決を受けて出した声明で、このプログラムは「法律にしっかりと立脚」しており、対象は通話者のどちらかがアルカイダに関係している疑いのある国際通話だけだと主張し、「この判決にはまったく同意しがたい。肝心なのは、テロリストの攻撃を未然に察知して防ぐことだ。それこそ米国市民が政府に期待していることであり、国民を守ることは大統領の重要な義務である」と語った。
米国司法省によると、米国政府はすでにテイラー判事の命令を不服として控訴したという。同省は声明で、NSAのプログラムは「テロリスト攻撃を察知および防止する早期警戒システムを実装するうえで不可欠なツール」であると述べている。なお、控訴終了時まで判決の適用を延期するかどうかを決める審問が完了するまで、同プログラムの中止命令は保留されるもようだ。
一方、パトリック・リーヒ上院議員(バーモント州選出・民主党)は、NSAの盗聴プログラムは違法だとして、テイラー判事の判断に賛成の意を表明している。「これは、ホワイトハウスが、米国市民を保護するという私たちの目標実現をいかに複雑困難なものにしてきたかを示すものだ。テロリストの盗聴は既存の法律の下で行うことができるし、そうすべきである。問題は、ブッシュ=チェイニー政権が、それを米国市民の権利侵害を防止するチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)のプロセスを省いて行うことに固執してきたことにある」と同議員は声明で述べている。
このほか、テロリスト監視プログラムを巡っては、NSAの盗聴プログラムに協力したとして、個人や市民権団体が、AT&Tなどの通信事業者を提訴している。それらの17件の訴訟は先週、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所へ一括審理のために移管された。カリフォルニア州の連邦地裁判事は今年7月に、AT&Tを相手取った主訴訟の棄却を求めていた司法省の申し立てを退けている。
(グラント・グロス/IDG News Service ワシントン支局)
























