クラウド・コンピューティングのインパクト[後編:推進要因と各層への影響]
ユーザー/IT部門はどうとらえ、備えるべきかすべてのITリソースはインターネットの雲(cloud)の向こう側から提供され、ユーザーはその際、リソースの構造や格納場所などをまったく意識することがない――クラウド・コンピューティングというコンピューティング・モデルはおおむねこのような説明がなされる。クラウドは別段新しいものではなく、企業コンピューティングの世界においては、SaaSやグリッド、ユーティリティ・コンピューティングなどクラウドの考え方に沿った、ないしは類似したモデルがすでに登場済みである。[前編]では、これら既存のモデルとの比較によってクラウド・コンピューティングを定義した。今回は[後編]として、ユーザー企業やIT業界の各層に与える影響の分析を行い、このパラダイムの本質に迫りたい。
クラウド・コンピューティングの推進要因
今後、クラウド・コンピューティングの世界が進展していくことは、テクノロジー面、そして、ビジネス面から見て必然的な流れであると考えられる。クラウド・コンピューティングは一時の流行語ではなく、今後、長期的に有効であるメガトレンドと考えるべきだろう。
クラウド・コンピューティングを推進する動向としては、少なくとも以下の要素が挙げられる(図1)。
サーバ中心型コンピューティングの優位性継続
第一に、近年、サーバ中心型コンピューティングの優位性がいっそう増していることがある。コンピュータとネットワークの世界では、処理をどこで行い、データをどこに置くかという決定は固定化された判断によるものではなく、技術条件の変化と共に変化してきたものだ。つまり、その時点の技術の制約条件に基づいて、最も効率的な配置形態が採用されていったわけだ。
メインフレームの時代には、何よりもコンピュータ(の利用コスト)が高価だったため、巨大なコンピュータを中央に設置し、それを多くのユーザーが共用するという形態が唯一の選択肢であった。そして、ネットワークが高価というよりも、そもそも高速なネットワークの選択肢が存在しない状況であったため、ユーザーとコンピュータの対話は限定的なものであった。
1980年ころから、安価なマイクロプロセッサ・ベースのハードウェア(ミニコンやPC)の登場により、クライアント/サーバ型コンピューティング・モデルが一般化していった。この時代には、組織が多数のコンピュータを確保できるほどにコンピュータの価格は低下したが、ネットワークの速度とコストが依然としてボトルネックになっていた。ユーザーとコンピュータの対話的処理を効率的に行うために、データを分散し、「データをユーザーの近くに置く」ことでネットワーク・トラフィックを最小化することが設計目標とされることが多かった。
そして、1990年代後半以降のWebコンピューティングの時代には、コンピュータ、そしてネットワークも低価格化が急速に進んだ。では、何が高価なのかと言えば、運用管理のための人件費である。さらに、データを分散配置することによるデータの一貫性確保の課題も深刻になっていった。
こうして結局、「処理とデータの集中、および、アクセスの分散」というサーバ中心型コンピューティングに基づくシステム形態が最も効率的になってきた。将来的にも、コンピュータおよびネットワークの価格対性能比の向上が継続していく可能性は高く、管理のための人件費が急速に低下する可能性は低い。ゆえに、サーバ中心型コンピューティングの優位性は長期的に変わることはなく、これがクラウド・コンピューティング推進の大きな原動力となるだろう。



























