データセンターの省エネ対策のあり方と今後の行方を考える
シュナイダーエレクトリックデータセンターソリューションフォーラム2011ITのグリーン化が叫ばれて久しいが、今年3月11日に発生した東日本大震災によって、ITにまつわる省エネ対策はより切実かつ現実的な問題と化した。シュナイダーエレクトリック(旧エーピーシー・ジャパン)が10月11日、東京港区のザ・プリンスパークタワー東京で開催したイベント「Schneider Electric Data Center Solutions Forum 2011」では、データセンターのプロフェッショナル達によるパネルディスカッションを開催。データセンターの省エネ対策についてのヒントを示すべく、熱い議論が繰り広げられた。
データセンターの第一人者が集結
データセンター完全ガイド 編集長
土屋 信明氏
イベントの最後に行われたパネルディスカッションのテーマは、「データセンター業界が直面する次世代ITインフラと来るべきエネルギー効率化への要請~夏の電力使用制限を乗り越えた先にあるもの~」。ディスカッションには、国内外を代表するデータセンター事業者のトップなどが一同に会した。
今回パネリストを務めたのは、エクイニクス・ジャパンの代表取締役社長である古田敬氏、さくらインターネットの代表取締役社長である田中邦裕氏、富士通のアウトソーシング事業本部ファシリティマネジメント統括部統括部長である北中猛詞氏、そしてシュナイダーエレクトリックの取締役兼技術担当である佐志田伸夫氏の4名。
まずは、ファシリテーターのインプレスビジネスメディア 「データセンター完全ガイド」編集長、土屋信明氏に促されて、各パネリストが自社のデータセンター事業を紹介した。
富士通は、国内40か所、グローバルでは約100か所のデータセンターを運用しているが、今後は北米地域を中心にさらなる拡大を計画中だという。
1996年に当時学生だった田中氏が創業したさくらインターネットは、当初レンタルサーバーのホスティングビジネスを中心に行なっていたが、現在は東京と大阪の数か所にデータセンターを構え、ホスティングとハウジングの両方を手がけて都市型のデータセンターサービスを展開している。今年11月15日には、北海道石狩市に大規模なデータセンターも開所し注目を集めた。
エクイニクス・ジャパンは、グローバルに展開するデータセンター事業者で、世界13か国37都市で99か所のデータセンターを稼働。グーグルやアマゾン、マイクロソフト、ソニーといった名だたるグローバル企業が顧客となっていることでも知られている。
電力不足をどう切り抜けたか
土屋氏は、東日本大震災を受けて今年夏に実施された電力制限について、「データセンターは規制緩和の対象だったものの、政府からはなるべく省エネに協力をして欲しいという要請もあった。15%という削減目標がどれだけ厳しいものであるかは、データセンターにかかわる人間ならわかるだろう」と語った後、各事業者がどう乗り切ったのかについて質問した。
ファシリティマネジメント統括部 統括部長
北中 猛詞氏
これに対して北中氏は、空調をいかに止めるかを模索することが最大の対応策となったと回答した。富士通では、「顧客のシステムを絶対に止めない」というポリシーのもと、サポート体制の維持を含めて節電対策を実施。そこでポイントとなったのが、止められる空調機器はできるだけ使わないようにすることである。なかでも最も効果が高かったのは、外調機器を停止することだったという。これにより、群馬県館林市にあるデータセンターでは、5%弱の電力消費量の削減を達成できた。
「5%の削減というのは、まさに雑巾をギュッと固く絞るに等しい、我々にとってギリギリの数値だった」と北中氏は振り返る。
続いて田中氏は、都市型のデータセンターによる節電対策例を示す。さくらインターネットでは、検証中や実験中のサーバー、さらには自社用の冗長化されたメールサーバーなどの稼働を停止したという。顧客と相談しながら、顧客に影響の生じない範囲で東京以外の場所にあるサーバーへと仮想化による集約や移設を進めたところ、約600台のサーバーの削減に成功した。他にも同社では、震災以前から節電への取り組みに注力しており、そうした経験を踏まえて田中氏は、次のような持論を述べた。
「サーバーは、冷却するのではなく放熱させるのだという認識を持つべき。その際には、冷気と暖気をいかに分離するかが重要となる。そして、熱だまりを上手に回避しつつ、最適な設定温度を探る事が効率的な節電につながるのだと思う」(田中氏)
代表取締役社長
古田 敬氏
古田氏は、顧客とのコミュニケーションについて言及した。エクイニクス・ジャパンでは、震災後すぐに顧客に対して、同社のサービス提供体制に支障がないことを知らせた。その後、省エネ措置のために設定温度を3℃上げてもいいかを問うたところ、まったく反対はなかったという。
「結果的には設定温度を上げなくても大丈夫だったが、お客様の省エネする意識の高さがうかがえた」と古田氏は言う。同氏もまた、空調機を間引いて運転することが最大の省エネ効果を発揮すると主張した。
一連のやり取りを受けて佐志田氏は、設定温度と電力消費の問題について解説した。それによると、データセンターにおいて空調機や冷却水の循環装置が大きな電力消費源となっており、そこで使われるファンやポンプは回転数の3乗に比例して電力を消費するという。
「だからこそ、ファンの風量を絞るという対策が有効となる。80%の運転で50%、70%では35%もの消費電力を抑えることができる。やみくもに温度を下げるのではなく、その辺りを踏まえることが大事だろう」(佐志田氏)
これからのデータセンターに必要なこととは
ディスカッションの終盤には、今後のデータセンターのあり方がテーマとなった。
古田氏は、海外の最新のデータセンター事情を紹介。エクイニクス・ジャパンのオランダにあるデータセンターでは、地熱による熱交換システムも活用している。また、基本的に同社のデータセンターは、大空間を効果的に活用するスタイルを採用しているという。
取締役 技術担当
佐志田 伸夫氏
一方、田中氏は、国内では貴重な大規模データセンターである石狩データセンターの概要を説明。同データセンターは、寒冷地にあるため普通に空調機を動かしただけでも熱交換にかかるコストを抑えることができるが、さくらインターネットでは外気をそのまま活用することをコンセプトに掲げている。同社が東京で運用している古いデータセンターのPUEが2.0なのに対し、石狩データセンターでは実に1.2という低いPUEを試算しているという。
「単に運用コストを抑えられるだけでなく、高価な冷却関連設備の費用まで抑えられる。建物構造にまでこだわった省エネ対策が石狩データセンターの肝だ」(田中氏)
既に富士通では、2009年に開所した館林データセンターで外気冷房を導入している実績を持つ。北中氏によると、冬場で気温が15℃以下になれば、外気を取り入れて冷却を行なっているという。
田中氏はまた、これからデータセンターを建設する際の留意事項として、「電源設備は高いうえに維持費もかかるので、小さな単位で増設できるように工夫することが肝要だ。5年後さらには10年後にはデータセンターをめぐるテクノロジーも大きく進化していることだろう。であれば、まずは必要最小限の設備を整えて、5年後に増設する分は最新テクノロジーを取り入れられるようにした方がいいだろう」と訴えた。

最後に土屋氏は、「今回のやり取りを通じて、データセンターの進むべき方向性は見えてきたと思う。現実的な省エネ対策をどのように行うべきかという課題についても、大いに参考になる答えが示されたのではないか」と総括し、パネルディスカッションを締めくくった。

























