「Web 2.0」でビジネスを変革する![後編]
事例研究:Ajaxを採用し、顧客起点の中古車紹介サイトの構築に挑んだヤマトリースここにきて、Web 2.0時代の主要技術の1つとして注目を集めるAjax(Asynchronous JavaScript+XML)を企業システムに採用する動きが活発化しつつある。Ajaxコンポーネントを導入して直感的な操作性と動的なUIを備えた中古トラック売買サイトを構築したヤマトリースも、そうした企業の1社である。Web 2.0の企業での活用をとらえた前編に続き、今回は、同社の「中古物件紹介サイト」を紹介しながら、Ajaxの可能性について探ってみたい。
「使いやすさ」へのあくなきこだわり
ブラウザの画面にトラックの車体を展開した図面が表示されている(画面1)。車体にはカメラのアイコンと矢印のセットがいくつかある。カメラをクリックしてみると、その部分の写真がスムーズに拡大表示され、実際にトラックの周囲を歩いて外装を確認したり、内部の状態をのぞいたりしている感覚をWeb上で体験することができる──これは、ヤマトリースが開発した中古トラックの仲介を行う「中古物件紹介サイト」の画面であり、そのダイナミックな表示を実現しているのはAjax(Asynchronous JavaScript+XML)ベースのWebコンポーネント技術である。
グーグルの「Google Maps」などに採用されるAjaxは、Webサイトの表現力を高める技術として、また、“Web2.0的”な次世代インターネットの主要技術の1つとして注目を集めている。そのAjaxを企業間のオークション・システムに採用したのがヤマトホールディングスのグループ企業であるヤマトリースだ。中古トラックの売り手と買い手をマッチングさせるこのシステムは、エクストラネットの形態で提供されているが、中古トラックの流通市場創設を目指している同社にとってきわめて戦略性の高いシステムであり、「Web2.0的なアプローチで開発されたミッション・クリティカル・システム」とも言える。
ヤマトリースの中古物件紹介サイトがWeb 2.0的と目されるのは、単にAjaxを採用しているからではなく、利用者が難解なマニュアルなしに直感的に使えるシステムを実現するというコンセプトで開発されたことが、「ユーザーを主体」とするWeb 2.0の思想に通じているからである。
とはいえ、ヤマトリース代表取締役社長、小佐野豪積氏によると、中古物件紹介サイトを構築するにあたって、Web 2.0という概念を意識したことはまったくなかったという。同氏は、「あくまで利便性を重視してシステムを作り上げた結果、周囲から『Web2.0的だ』と評価されるようになった」と半ば驚きの表情で語る。
小佐野氏によると、同社の中古物件紹介サイトの利用者の多くは、ITリテラシーがさほど高くない運送会社の経営者たちであるという。ヤマト運輸の情報システム部に13年間従事した経験を持つ同氏は、「ヤマト運輸の社員も、他の運送会社の人たちも、ITリテラシーのレベルは同じ。マニュアルがなくても直感的に操作できて、しかも、“おもしろいから触りたくなる”ようなシステムを作りたかった」と語る。Web 2.0の世界では、ユーザー・インタフェースの使いやすさが追求される。そのため、小佐野氏の「使いやすさ」へのこだわりがWeb 2.0への道をたどったのは必然だったと言えるだろう。
Web 2.0時代の新市場創出に挑む
ヤマトリースの中古トラック紹介サイトの詳細を説明する前に、まず同サイトが開発された背景について述べておこう。
運送業界は荷主の需給に左右される。トラックを固定資産でなく、流動資産として運用したい、というのが運送会社の共通の考えだ。余ったトラックは売却したほうがリース料を払い続けるよりも負担は少なくなる。そこで、不要なトラックを売りたい会社は買い手を探すわけだが、トラックには一般乗用車のような中古車市場がなく、結局安い価格でしか売却できないという問題を抱えていた。
一方、ヤマトリースでは、新規事業の立ち上げを課題としていた。ヤマト運輸のリース子会社である同社は、長年、ヤマト運輸を主な対象に事業を展開してきたが、2003年からはヤマト運輸の1,200社の協力会社も対象に外部への事業展開をスタートさせた。その市場は大手リース会社と競合するものの、小佐野氏は、「当社の社員は運送業者に直接訪問し、コンサルティング的な営業活動も行っている。市場の動きを常につかんでいるのがわれわれが強みだ」と強調する。
しかしながら、近年、運送業界は、燃料価格の高騰や、環境・安全規制強化への対応によるコスト負担などにより、きわめて厳しい収益環境下に置かれており、ヤマトリースとしても、そうした環境を乗り越えるための新しい施策を講じる必要があった。そこで同社が考案したのが、Webを使った中古トラックの流通市場を新たに立ち上げ、売り手と買い手の両方のニーズを満たすとともに、それらの手数料によって利益を得るという新しいビジネス・モデルを創出することであった。
新システムを構築するにあたって、小佐野氏は、ユーザーの視点から「使いやすい」、「おもしろい」、「わかりやすい」システムの実現を目指したという。その一例が、冒頭で述べたようなAjaxによるスムーズな画像拡大表示機能である。
同氏は、「積載量や走行距離、車検といった基本情報を提供するだけでなく、ユーザーを楽しませる要素もシステムに盛り込みたいと考えた。新しいビジネス・モデルを成功させるためには、まず、PCの操作に不慣れな運送会社の経営者にも利用してもらうことが重要なポイントとなるからだ。そこで、マニュアルがなくても触ってしまうような“おもしろさ”を実現することを、システムの第一要件として掲げた」と説明する。
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