「全社員を在宅勤務に」大胆戦略プロセスに学ぶ
コスト削減と生産性の向上を両立させた米国企業のワークスタイル革新事例コスト削減と通勤に伴う社員のストレス緩和を目的に、全従業員を在宅勤務にした企業がある。医療機関向けのソフトウェア・プロバイダーである米国Chorusは2008年6月初頭、ニュージャージー州ハスブルックハイツにある本社を閉鎖し、その1カ月後にテキサス州ヒューストン郊外にあるスタッフォード・オフィスを閉鎖した。同社でCIOを務めるリック・ボイド(Rick Boyd)氏は、「このワークスタイル革新は、われわれに多大なるメリットをもたらした」と胸を張る。本稿では同社の取り組みをはじめ、各ポイントで直面した課題とその解決方法を紹介しよう。
コスト削減だけではない、在宅勤務体制の効果
ボイド氏はつい最近まで、ニューヨーク州ウェストチェスター郡にある自宅から48マイル(約13キロメートル)離れたニュージャージー州ハスブルックハイツのオフィスまで、毎日自動車で通勤していた。毎月の通勤コストは、ガソリン代と高速料金の合計500ドル。しかしChorusが物理的なオフィスを閉鎖し、ビジネスの場を“バーチャル・ワールド(すべてオンライン上の世界)”に移してから、同氏は通勤する必要がまったくなくなった(画面1)。
ボイド氏はChorusがオフィスを閉鎖した主な理由について、「オフィス・スペース賃貸料などのコストの削減と、通勤に伴う社員のストレス緩和」と説明する。
Chorusで社長兼CEOを務めるA.J.シュライバー(A.J. Schreiber)氏は、敷地面積1万5,000平方フィートのオフィスを閉鎖しただけで、年間40万ドルのコスト削減を達成できると胸を張る。もちろん、賃貸契約や通信契約の破棄に伴うコストは負わなければならないが、それを補って余りあるコストの削減を見込んでいるという。
「オフィスを閉鎖しても、以前と変わらない顧客サービスを維持できる自信はある。もし(オフィスを閉鎖することで)顧客へのサービスにマイナス影響が及ぶと判断していたら、すべての業務をオンライン上で行うなどという、“無謀”な決断はしていない」(シュライバー氏)
ニュージャージー州にあるコンサルティング会社、米国Work+Life Fitの創設者であり社長を務めるカリ・ウィリアムズ・ヨスト(Cali Williams Yost)氏は、Chorusの決断を、「ワークスタイル革新をビジネス戦略として位置づけ成功させた例だ」と評価する。
「フレキシビリティは企業経営の重要な戦略だ」と言い切るヨスト氏。同氏はChorusの戦略について、「社員が勤務場所を選択できることは、人材確保や在職率の向上にプラスの作用をもたらすと同時に、不動産などの資産管理の手間も省ける。(Chorusを見習って)毎日同じ場所、同じ時間に勤務する必要はないと考える企業が今後は増加するだろう」と分析した。
とはいえ、全社員を在宅勤務にするための道のりは、決して平坦ではなかった。調査、プランニング、そして何度もの試行錯誤を経て、次々と直面する課題を解決しなければならなかった。ボイド氏は、「確かにタフな作業だったが、克服できない課題はないと確信していた」と当時を振り返る。
同社が直面した課題とは何か。そしてその課題をどのように克服したのか。以下からはボイド氏とChorus社員の話を基に、彼らがワークスタイル革新を実現するまでのプロセスを紹介しよう。



























