米国議員、新たなサイバー・セキュリティ法の必要性を訴える
「ブッシュ政権が定めた従来の法律は実行力が不十分」と主張米国下院サイバー・セキュリティ小委員会の新会長に就任したニューヨーク州選出の民主党議員イヴェッテ・クラーク(Yvette Clarke)氏は3月10日、「電力網や水道、金融システムなどにかかわる重要度の高いサイバー・インフラを民間企業に保護させるように、米国政府は新たな法令と奨励制度を作るべきだ」との見解を示した。
クラーク氏は、下院国土安全保障委員会のサイバー・セキュリティ小委員会による同日の聴聞会で、サイバー・セキュリティに関する新たな国家戦略を策定することを求めた。同氏によれば、ジョージ・ブッシュ(George Bush)前大統領の2002年の戦略では、民間企業にサイバー・セキュリティを義務付けてはいなかったのだという。
クラーク氏は、どのような法令を制定すべきかについては明言しなかったものの、従来の方針はさして実効力がなかったと指摘した。「残念なことに、2002年の戦略は強制力がなかった。前政権は18の基幹インフラ部門のほとんどを自主的な保護システムに任せていたが、主要なインフラは法令と奨励制度を組み合わせてしっかり守るべきだ」と同氏は持論を展開した。
「現在は、きわめて危険な状況だ。膨大な数の基幹ネットワークに膨大な数の脆弱性が存在し、高度な技能を持つ世界中のクラッカーにねらわれている。システムが被る被害も多岐にわたる」とクラーク氏は警鐘を鳴らす。
「過去20年間、識者が数え切れないほどのリポートを発表し、その中にはサイバー・スペースの状況を改善する方策について何百もの勧告が記されている。今まで足りなかったのは、これらの勧告を実行に移す勇気とリーダーシップだ」(クラーク氏)
同日、サイバー・セキュリティの専門家からさまざまな案が出されたが、クラーク氏の法制化には米国Microsoftのトラストワーシー・コンピューティング担当バイスプレジデント、スコット・チャーニー(Scott Charney)氏が賛同した。
「民間企業に米国のサイバー・セキュリティを保護する対策を取らせるには、限定的かつ“適切に調整した法律”が必要だ。政府は業界のベスト・プラクティスを参考に、厳しすぎない程度に法令を制定すればよい」(チャーニー氏)
また、かつて国土安全保障省(DHS)のサイバー・セキュリティ部門でディレクターを務め、現在はセキュリティ・ベンダー、NetWitnessのCEOであるアミット・ヨーラン(Amit Yoran)氏は、「DHSがサイバー・セキュリティに取り組むことに批判的な向きもあるが、情報機関に一任すれば解決するというものでもない」と述べた。
ヨーラン氏は、「サイバー・セキュリティを情報機関に独占させるのは非常に危険だ」と主張する。同氏によれば、サイバー・セキュリティの問題が発生した際、システム・オペレータが修正パッチを求めるのに対し、情報機関は敵を監視し、相手のやり口を突き止め、活動を追跡することを重視するのだという。
Microsoftのチャーニー氏も、ヨーラン氏に同意し、「もし議会が国家的なサイバー・セキュリティ策を国民に信頼してほしいなら、秘密主義の国家安全保障局(NSA)を最高機関にすべきではない」と警告した。
ちなみに数日前には、DHSの下部組織である国家サイバー・セキュリティ・センター(NCSC)の局長、ロッド・ベックストロム(Rod Beckstrom)氏が、サイバー・セキュリティにおけるNSAの役割の大きさに苦言を呈したうえで局長を辞任することを表明した(関連記事)。
米国のシンクタンク、CSIS(Center for Strategic and International Studies)でプロジェクト・ディレクターを務めるジム・ルイス(Jim Lewis)氏は、バラク・オバマ(Barack Obama)政権に対し、ホワイトハウス内にサイバー・セキュリティ対策室を創設するよう訴えかけた。
「サイバー・セキュリティに取り組んでいるすべての機関をまとめる権限はホワイトハウスにしかない」と同氏。これはCSISが昨年発行したサイバー・セキュリティ報告書で勧告案の上位に挙げられていた項目の1つだ。
「巨大な権力を持つ多くの政府機関に共通の目標を持たせ、お互いに調整を図らせることができるのはホワイトハウス以外にない。サイバー・セキュリティ対策を成功させるには、情報機関、法執行機関、軍事外交、そして国内法をうまく融合することだ」(ルイス氏)
一方、ジョージア州選出の共和党下院議員ポール・ブラウン(Paul Broun)氏は、「ブッシュ政権のホワイトハウスはサイバー・セキュリティにたいして積極的でなかったし、オバマ大統領もそこまで関心を持っているかわからない」とし、ホワイトハウスに働きかけることに疑問を呈した。
(Grant Gross/IDG News Serviceワシントン支局)






















