ニッポンのITの将来を担うか? IPAの「未踏ソフトウェア創造事業」|[e・Gov]電子行政/電子政策|トピックス|Computerworld

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ニッポンのITの将来を担うか? IPAの「未踏ソフトウェア創造事業」

「天才プログラマー」の発掘・育成計画の実態と成果に迫る
(2005年11月28日)

「モノ作り立国」を標榜する日本であるが、ことソフトウェアに関しては、欧米諸国に大きく遅れをとっている。そのような現状を危惧し、IPA(情報処理推進機構)が2000年から実施しているのが、存在感のある天才プログラマーの発掘・支援を目標としたプロジェクト「未踏ソフトウェア創造事業」である。同事業は、どのような仕組みで、どれだけの成果を挙げているかに迫る。

「天才プログラマー」の発掘を目指す「未踏ソフトウェア創造事業」

 あなたは「天才プログラマー」と聞いて、だれを思い浮かべるだろうか。もしかすると、このような問いかけをされても、候補になりそうな人の名前すら頭に浮かばないという人も少なくないかもしれない。

 今から18年ほど前に出版された『Programmers at Work』(国内では、『実録! 天才プログラマー』という書名で翻訳・出版された)という本には、歴史に名を残した伝説的な19人のプログラマーの仕事ぶりが紹介されている。「PostScript」のジョン・ワーノック氏、「CP/M」のゲーリー・キルドール氏、世界初の表計算ソフト「VisiCalc」のボブ・フランクストン氏、マイコン用BASICのビル・ゲイツ氏――など、いずれも一時代を築くことになるソフトウェアの開発に関わったビッグ・ネームたちである。

 今の日本で、同じような主旨の本を企画するとしたら、どんな人が選ばれるべきだろうか。その答えとなるような人材を発掘しようとしているのが、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が行っている「未踏ソフトウェア創造事業(以下、未踏事業)」である。

 未踏事業は、経済産業省の意向を受けてIPAが実施している人材発掘のための事業である。独創的なソフトウェア開発に関する提案を公募し、審査の結果、採択されたプロジェクトごとに、開発に必要と認められるだけの予算が提供されるというやり方は、外形的には、IPAが他に行っているさまざまな開発支援事業とさほど違いはない。

 ただし未踏事業の場合は、プロジェクトを遂行するための開発費として提供されるお金は100%返済の必要はなく、また、開発の成果として得られた知的財産に関する諸権利も、すべて開発者に帰属することになっている。すなわち、必要なだけの予算(未踏事業においては1プロジェクト当たりの予算に上限は決められていない)を提供したうえで、成果は各自のものとしてかまわないという“太っ腹”な事業なのである。

 未踏事業によって採択された「人」(以下、採択者と呼ぶ)は、必要と認められた予算を利用しながら、1年間(契約時期の関係などで実質的には9カ月ほど)、提案した開発プロジェクトを進めていくことになる。予算には、物品などの購入費用だけでなく人件費も盛り込むことができるので、例えば、自らの人件費を計上して開発プロジェクトの作業に集中したり(生活の糧を得るための活動に時間を割かれずに済む)、壮大なアイデアを実現するために別途、開発者を雇って開発力を増強したりすることができる。極端な話、実装作業はすべて外部プログラマーに委託して、自らはアーキテクチャ・デザインに専念してもよいのだ。

 また、一般的なソフトウェア開発支援では、あらかじめ達成すべき機能要件を決めておき、それをすべて満たしたものを成果として「納品」することが、開発費の支援を受けるための絶対条件となっていることが多いが、未踏事業の場合は、そういった内容の契約は行われない。もちろん採択者は、事業者であるIPAに対して最終的な成果報告を行う必要はあるし、そのために、IPAが任用した「プロジェクトマネジャー(PM)」の指導を受けながら、当初の提案をできるだけ実現に近づけるように努力しなければならないが、最初に決めただけの成果が上げられなければ金銭的支援が受けられないといった「制約」はない。また、各採択者は、「プロジェクト管理組織」と呼ばれる企業からの実務支援を受けることができる(図1)。

 採択者に対して、ここまでの厚遇を提供する形になっているのも、ひとえに「次世代のIT市場創出を担う独創性とすぐれた能力を持つ研究/開発者(スーパークリエータ)を積極的に発掘する」(IPA)ためだ。支援の対象は、開発プロジェクトの成果などではなく、個人または数名のグループという「人」なのである。その意味では、未踏事業で開発者に与えられる予算というのは、単純な経費の支援というわけではなく、採択して見出した人材が力を発揮できるようにするための奨学金のようなものだと言えるかもしれない。

図1:未踏ソフトウェア創造事業における4者の関係

2003年度 未踏ユース スーパークリエータ

登 大遊
ソフトイーサ代表取締役社長、筑波大学 学生

●テーマ名
 イーサネットのソフトウェア実装とトンネリングシステムの開発
 http://www.softether.com/jp/
●担当PM
 竹内郁雄氏(東京大学大学院 情報工学系研究科 創造情報学専攻 教授)
●委託金支払額
 300万円
竹内氏に「すごい人が現れたものだ」と言わしめた登氏。未踏事業の成果であるVPNソフトウェア「SoftEther」が注目を集めたことで、未踏事業の知名度も高まった。世界に通用するソフトウェアの開発を目指す登氏は、「ビル・ゲイツのように技術者でありながら経営にも取り組みたい」と語る

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