IBM、分子構造の画像化に成功――半導体の小型化/省電力化への貢献に期待
分子レベルでの電子デバイス開発に新たな道筋米国IBMは8月27日、低価格で電力効率の高いチップの開発を目指す基礎研究の成果として、分子表面の画像化に初めて成功したと発表した。
IBMが発表した画像は、原子サイズで分子の構造を示したもので、将来的にはチップ内の分子や原子の状態を理解し、操作できるようになる可能性もあるという。
IBMの広報担当者は、電子メールによる取材に対して、「原子や分子のレベルで電子機器の構成要素やデバイスを探求できる新たな可能性が開かれたという点で、先駆的な成果だと言える。これにより、従来のCPUやメモリーよりもはるかに小型で高速かつ電力効率の高い製品を開発できるようになるかもしれない」と答えた。
半導体メーカーは、チップの表面に微細なパターンをエッチングすることで、性能の向上と消費電力の低減を実現するという手法を数十年前から繰り返している。しかし、小型化が進むにつれて製造が難しくなり、製造コストも上昇している。IBMが進めているナノテクノロジー研究構想では、チップの小型化と高速化、電力効率の向上に焦点を当てた数多くの実験が行われている。
IBMの研究者は、すでに分子間力顕微鏡(AFM)を使ってペンタセン分子の化学構造を描き出すことに成功している。また、プローブ顕微鏡を用いて原子レベルで分子の構造を画像化することにも成功しており、これは将来開発するチップの構造を理解するうえで重要なステップになると見られている。IBMの研究者によると、ペンタセン分子は、チップで使用されるトランジスタに応用できるとのことだ。
スイス・チューリッヒのIBM Researchの研究者、ゲルハルト・メイヤー(Gerhard Meyer)氏によると、チップ開発の分野では、個々の分子の役割が完全に把握されているわけではないという。メモリーの要素として1つの分子を使用する技術も生まれているが、分子ネットワークを形成するために、いくつの分子をつなげればよいのかという重大な疑問は解消されていない。
今回、分子構造の画像化に成功したことで、分子や分子ネットワーク上での電子の移動に関する研究を前進させることが可能になった。また、この研究によって、分子ネットワークで電荷分布が発生するメカニズムの解明も進むと期待されている。電荷分布発生メカニズムの解明は、小型で電力効率の高いチップを開発するうえできわめて重要な課題とされている。
「この研究は、分子の電荷を変えるとその形状がどのように変化するのか理解するのに役立つものだ。われわれは、こうしたプロセスを原子/分子レベルで理解したいと考えている」とメイヤー氏。だが、同氏によると、チップの基礎研究を目的とした分子構造の完全な解明には、10〜20年の歳月が必要になるという。
なお、同社は、DNAを利用して小型高性能コンピュータ・チップの基盤となるような微小回路を作り上げるための実験を行っていることも明らかにしている。
(Agam Shah/IDG News Service サンフランシスコ支局)



























