豪州の研究者チーム、原子サイズのトランジスタを開発
理論上、「ムーアの法則」が2020年まで維持可能に
オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の研究者チームが、超微細技術を使ってリン原子1個から成る初のトランジスタを開発した。
このトランジスタ技術により、少なくとも2020年まで「ムーアの法則」に沿ったプロセッサの進化が続く可能性がある。また、この技術は、現在のデバイスよりも格段に高速にデータを処理する汎用量子コンピュータの開発に道を開きそうだ。
ニューサウスウェールズ大学の研究者らはこのトランジスタを作るため、走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope:STM)を使って、超高真空チャンバー内の結晶表面の原子を操作した。新開発のトランジスタは非反応性水素層で覆われ、シリコンに埋め込まれた。
超微細な原子サイズのトランジスタが作られたことは以前にもあるが、多くの場合、それは偶然によるものだったと、研究者らは述べている。「われわれの研究成果は、こうしたレベルの超微細な基板内の原子1個をコントロールすることに成功した初めての例だ」と、ニューサウスウェールズ大学量子計算通信技術ARCセンターのミシェル・シモンズ(Michelle Simmons)教授は語る。
■ムーアの法則の維持
米国Intelの共同創業者ゴードン・ムーア(Gordon Moore)氏が初めて提唱した「ムーアの法則」は、チップ上に集積可能なトランジスタ(マイクロチップの主要コンポーネント)の数が、24か月ごとに倍増するというもの。ムーアの法則のペースが維持されるためには、2020年にはトランジスタのサイズが原子レベルにならなければならない。
ニューサウスウェールズ大学のチームによる原子トランジスタの初期研究成果が、製造技術として実用化されるまでにどれだけ時間がかかるかは不明だ。学術誌「Nature Nanotechnology」で発表された研究者チームの論文によると、原子サイズのトランジスタを実現するうえでの問題の1つは、その動作温度がきわめて低い“液体ヘリウム温度”であること。液体ヘリウムの沸点は、摂氏マイナス268.93度だ。
■量子コンピュータ
また、原子1個から成るトランジスタは、量子コンピュータ時代の扉を開く可能性もある。量子コンピュータは、現在のコンピュータよりも大幅に高速かつ小型のデバイスだ。2つの状態(1または0)を持つバイナリ・ビットを使う代わりに、量子コンピュータでは、1または0のほか、それらの重ね合わせの状態も取りうる量子ビット(キュービット)を使う。
その実用上のメリットは、一度に1つの演算を行う現在のトランジスタとは異なり、量子トランジスタは一度に複数の演算を行えることだ。ただし、一部の研究者は、量子粒子は奇妙な振る舞いをすることから、汎用量子コンピュータの実現性を疑っている。
ニューサウスウェールズ大学の研究者チームは近年、ナノテクノロジー分野で目覚ましい成果を挙げており、2010年には、量子ドットを使ったトランジスタを開発。このトランジスタは、現在のコンピュータ・チップ上の従来型トランジスタと比べて10分の1のサイズに小型化されている。
(Ian Paul/PC World米国版)



























