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すでに失速気味の電子書籍に未来はあるか

カギを握るのはタブレットのアプリケーション
(2012年02月03日)

 電子書籍が初めて登場したとき、わたしの胸は高なった。大量の紙を苦労して持ち運ばなくても、何冊もの本とともに飛行機に飛び乗ったり、裏庭でのんびりしたりできる日がやってくるのではないか、と。別の本が読みたくなっても大丈夫だ。わたしの個人電子書籍図書館の蔵書は実質的に無限なのだから…。

▲米国Barnes & Nobleが2011年11月に発表した「NOOK Tablet」。「本屋が作った電子書籍端末」でも読みにくければユーザーは獲得できない

昨年時点ですでに伸び悩み

 このように考えた人はほかにもたくさんいたらしく、電子書籍端末および電子書籍の売り上げは過去数年間で爆発的に伸びた。だが、電子書籍界に詳しい筆者の友人によれば、「米国出版者協会(AAP)」が発表した2011年11月の米国内書籍売買額(AAPに報告を入れている出版社からの情報を基にした米ドルの卸売価格)における電子書籍のセールスは、ここ6カ月ほど月額約8,000万ドルのあたりで推移しているという。「Nook」や「iPad」などさまざまな電子書籍端末が大ヒットを飛ばしている現状を考えると、この「横ばい」という結果は、予想を裏切るものだろう。

 こうした現象を引き起こした理由について、前述の友人は、「現代のデバイス購入者は電子書籍読者ではない。彼らはオンライン・メディア消費者だ。ビデオや音楽、そういったものなら何でも好む。腰をすえて電子書籍を読むなどということは絶対にしない」と持論を展開している。

 彼の指摘は問題の核心をついていると思う。物理的な本は、ただ本でありさえすればよい。だが、電子書籍端末上でそうした本と同じ内容を展開するなら、もっと魅力的な何かを提供しなければならないのだ。

本をそのまま電子化してもジリ貧は確実

 先日、マーク・ビターマン(Mark Bitterman)著の『Salted: A Manifesto on the World's Most Essential Mineral(塩漬け:世界で最も基本的なミネラルに関するマニフェスト)』をNookアプリで購入し、iPadで読んでみた。大げさな言い回しややや冗長な内容も気にはなったが、何よりもそのレイアウトに失望し、イライラさせられ、最終的には金をムダにしたと思ってしまった。

 デジタル・フォーマットにおいては、書籍の内容自体はけっしてアドバンテージにならないことを覚えておきたい。例えば、読みにくい小さな文字で書かれた文章がつまった表が多用されていて、iPadの通常の”ズームイン”ジェスチャーでも拡大できない場合、読者はストレスを感じる。言い換えれば、プラットフォームが多かれ少なかれ役に立たないときは、何の工夫もこらされていない素のままの電子書籍は、物理的な本よりも使い勝手のわるい代物に成り下がるわけだ。

 こうした問題は、俗に電子書籍と呼ばれているものの多くに言えることである。電子書籍と銘打たれ、iPadのような電子デバイス上で表示されるものなのに、うまく機能しないのだから当たり前だ。出版社がこのことを理解し、何らかの付加価値を持つ製品を作り始めないかぎり、電子書籍の売り上げはこのまま低迷するに違いない。そうした価値を付与されたものはもはや電子書籍ではなく、アプリに近づいていくだろう。

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