ネットワークの「移行設計」と「作業手順」ベストプラクティス(第2回)
(第2回) ネットワーク移行設計のポイントトラブルを防ぐためには事前の準備が不可欠設計フェーズでは、まず、ネットワークの移行作業全体に関する移行計画を策定し、「移行設計書」にまとめる必要がある。
移行作業の“台本”となる移行設計書の作成
移行計画策定時は、ネットワークシステムの移行作業によって影響を受ける業務システムやサーバを洗い出し、移行要件を加味しながら、可能なかぎり影響範囲を最小化し、かつ短期間に移行作業が完了するよう考慮することが重要である。
移行設計書には、次のような項目を記述する。ユーザーが見ても理解できるようにわかりやすく記述し、ユーザー側の責任者にも承認を得ることが望ましい。
(1)移行作業概要 問題発生時の対処法も整理しておく
移行要件や移行期間、新旧ネットワーク/システム構成図、新ネットワークの運用開始日、切り戻し方針などを記載する。
移行要件は、ユーザーにヒアリングを行うことによって明確にする必要がある。例えば、移行に伴うサービス停止時間や現行システムの変更可否などに関する制約事項の整理を行えばよい。
移行期間と新ネットワーク/システムの運用開始日も、非常に重要である。運用開始日から逆算して移行期間を設定することになるが、リスクも考慮しながら十分な移行期間を設けたほうがよい。そのため、設計・構築作業を優先して直前に移行設計を行うのではなく、上流工程で余裕を持って移行設計を行うことが望ましい。
切り戻しとは、新ネットワークへの移行をあきらめ、現行ネットワークに戻すことである。移行中や移行後に、移行が原因となる何らかの問題が発生し、新ネットワークで提供すべきサービスが提供できない場合も考えられる。万が一を想定して切り戻し方針を決めておくことを忘れてはならない。
また、移行作業が完了し、新ネットワーク稼働後も、トラブル対応や問い合わせ対応を想定して特別な運用体制を一定期間維持しなければならない場合もある。そうした体制維持が必要かどうかも確認し、明記しておきたい。
(2)移行方式 現行システムへの影響とコストを考慮する
移行方式とは、新ネットワークへの移行方法のことである。どのような移行方法を採るのかによって現行システムに与える影響も異なるため、最初に移行方式について検討する必要がある。
一般的に、移行方式としては、現行ネットワークと新ネットワークをワンポイントで切り替える「一括移行」、ネットワーク内の機能単位ごと(例えばDMZ(非武装地帯)やフロアLAN、サーバLAN、WAN接続部など)に順次切り替える「段階移行」、新ネットワークを現行ネットワークと並行して稼働させ、検証しながら移行する「並行運用」の3つがあげられるだろう。
一括移行は、ネットワーク機能の全停止を伴うため移行リスクは大きくなるが、移行作業中に問題が発生した際には現行ネットワークシステムに切り戻すことも可能である(図4)。
段階移行は、機能単位ごとの部分停止で済むため、移行リスクは小さいが、移行作業を数回に分けて実施するため、一括移行と比較すると移行コストが高くなる傾向がある(図5)。
並行運用では、現行ネットワークに新ネットワークを接続し、新ネットワークに問題がないとわかった時点で現行ネットワークを切り離す(図6)。そのため、移行リスクは最も小さいが、新ネットワークで使用するIPアドレスを別途用意する必要があるなど、利用するIPアドレスの制約によっては適用が難しい場合がある。
一般的に、大規模なネットワークでは、移行リスクを低減するために段階移行や並行運用を選択することが多いようだが、確保可能な移行期間を考慮して移行方式を決定する必要がある。
例えば、移行期間に比較的余裕がある場合はリスクの高い一括移行などの方式は選択せず、余裕がない場合は移行作業時間短縮のためにリスクの高い移行方式を選択するなどが考えられる。また、移行にかかるコストに制約がある場合も多い。その場合は、移行前のテストや移行リハーサルなどのために使用する追加機器を最小限に抑えて複雑な手順を回避するなど、コスト削減策を検討して盛り込む必要があるだろう。



























