新技術を生み出す通信のパラダイムシフト
次世代ワイヤレス技術まるわかり 第1回 無線技術あれこれ最近、企業ネットワークやITシステムに変化をもたらすであろう新しい無線通信技術が続々と登場している。こうした新技術は、単に従来の技術よりも高速に通信できるだけでなく、さまざまな用途や環境に最適化された機能が盛り込まれている。この動きは、音声通信のIP化や固定/移動通信の融合化など、通信の世界で進められているパラダイムシフトと密接に関わっている。こうしたさまざまな新しい無線技術の解説を通じて、今後のネットワークがどうなっていくのか考えてみよう。
新しい通信サービスではワイヤレス技術が重要に
周知のように、現在、通信サービスの世界においては「高速化」「IP化」「ユビキタス」といったキーワードが重要な位置を占めている。
インターネット接続サービスの分野では、xDSL(Digital Subscriber Line)やFTTH(Fiber To The Home)といった安価なブロードバンドサービスが普及し、多くの家庭や企業で活用されている。しかし、これらはベストエフォート型のサービスであり、品質や実効速度については保証されていない。一方、企業ネットワークでやり取りされるデータはより大きく、より重要度の高いものとなっており、高い安全性や安定性も求められている。こうした通信を行うためには、インターネットでは力不足だ。
また、音声通信の分野においては、固定電話の通話コストや機器の運用コストなどを削減するため、VoIP(Voice over IP)の利用がさかんに勧められている。しかし、インターネットを用いたVoIPはまだまだ不安定であり、ビジネスで利用するには、より品質と信頼性の高い通信網が必要である。
こうしたニーズを満たすために登場したのが、高いセキュリティ、品質管理、信頼性確保を実現する機能を実装したIPネットワーク「NGN(Next Generation Network)」だ。そして、NGNと対をなすのが「FMC(Fixed Mobile Convergence)」、つまり移動系と固定系の通信サービスを同じネットワーク基盤上で提供しようという動きである。これらによって、ユーザーはPCやPDA、携帯電話といったデバイスの違いを意識せずに、どこからでも統一されたネットワークで同じサービスを利用できるようになる。
この「どこからでも利用できる」という特徴の実現で重要となるのが、無線通信の技術だ。IEEE 802.11a/b/gといった無線LAN規格はすでに広く普及しているものの、通信可能距離が短く、利用できる場所がまだ少ないうえ、有線LANに比べれば遅い。携帯電話やPHSはビジネスで活用されることも増えているが、データ通信速度はまだ遅く、ビジネスアプリケーションをフル活用できるほどではない。
そうした課題を解決するために、多くのベンダーや通信事業者が、新しい無線技術の開発に取り組んでいる(図1)。
モバイルWiMAXは、伝送距離1〜3キロメートル、最大伝送速度20Mbpsで、時速120キロメートルの移動体からでも利用でき、まさにどこからでも使える無線規格と言ってよいだろう。すでにドラフト2.0で製品も登場しているIEEE 802.11nは、802.11a/gとの下位互換性を保ちながら、実効速度100Mbps以上を実現する高速無線LAN規格で、大容量のデータ通信も余裕を持って利用できる。ウィルコムの次世代PHSは、PHSの利点であるマイクロセル方式の安定性を保ちつつ、20Mbpsの通信が可能とされている。各携帯電話キャリアでは、通信速度を向上させてネットワークのIP化を図る「第4世代(4G)携帯電話」へ向けた新技術の開発を進めているところだ。
新しい分野にも広がるワイヤレス技術
こうしたデータ通信のほかにも、さまざまな分野での無線通信技術の開発が活発に進められている。
「ZigBee(ジグビー)」は、低速・短距離ながら高い省電力性を有しており、多数のクライアントでメッシュネットワークを形成できるという特徴を持つことから、主に工業機械制御などの産業分野やセンサーネットワークでの活躍が期待されている。
移動体通信の安定性を強化するという点で、「フェムトセル」への期待も大きい。これは、有線ネットワークを通じて家庭内に超小型の無線基地局を設置するという技術だ。建物内で電波の届きにくい場合や、多数のユーザーが同一基地局を取り合っているような場合に、フェムトセルが小さなサービスエリアを提供することで不具合を緩和する。真のユビキタス環境を実現するためには、こうしたサブ的な技術も見逃せないところである。
PC周辺機器の通信においては、より高速な「次世代Bluetooth」や利便性の高い「ワイヤレスUSB」が登場している。家庭などで高画質映像を楽しむためには、「WirelessHD」が最適だ。伝送距離は9メートルと短いが、4Gbpsの超高速通信を実現するとして、映像プレーヤやゲーム機などへの搭載が期待されている。



























