トーバルズ氏、新しいLinuxカーネル開発管理ソフトに着手
Linuxカーネル開発の管理に使用してきたソフトウェアのメーカーと、著名なオープンソース開発者との対立から、Linux生みの親のリーナス・トーバルズ氏は、代わりになる新しいソフトウェアの開発に取り組まざるを得なくなった。
先週開発プロジェクトが始動した「git」は、トーバルズ氏がLinuxカーネル開発の管理に2002年以来使用してきた米国ビットムーバー社(カリフォルニア州サウス・サンフランシスコ)」の「BitKeeper」に代わるものだ。トーバルズ氏と他のLinux開発者たちは現在、Linuxカーネル(Linux OSの中核部)を構成している約1万7千のファイルにすばやく変更を適用できるソフトウェアの開発に取り組んでいる。
トーバルズ氏は電子メールでの取材に対し、「gitは、ある程度までは、毎日行なうような各作業が1秒かからないようにするという原則に基づいて設計されている」と語った。人気のバージョン管理システム「CVS (Concurrent Version Software)」をはじめ、すでに多数のオープンソースのコード管理ソフトウェアが存在しているが、Linuxカーネルほどの規模のプロジェクトを扱うとなると、そうした製品では処理が遅い傾向があるという。「ソース・ベースが大きいというだけで、1つのパッチを適用するのに数十秒もかかるようでは許容できない」と、同氏は電子メールで述べている。
ビットムーバー社は、BitKeeperソフトウェアのフリー・バージョンをLinux開発者が使用することを許していたが、オープンソース版のBitKeeperクライアントを開発しようとするアンドリュー・トリッジェル氏の取り組みは、その意に反するものだった。オープンソースのファイル/プリント・サーバ・ソフトウェア「Samba」の開発者として知られているトリッジェル氏は、2月に、BitKeeper内に格納されているソースコードにアクセスできるツールを作成した。そして数カ月の交渉の後で、ビットムーバーは、Linux開発者が現行のBitKeeperを無償で使用する権利を剥奪することを決めた。
トリッジェル氏のクライアントはBitKeeper内のデータにアクセスするために使用できるだけであり、BitKeeperの全システムを置き換えるものではないため、新しいソースコード管理システムが必要になった、とトーバルズ氏は述べている。
トーバルズ氏もトリッジェル氏も籍を置いている非営利のLinux推進団体Open Source Development Labs (OSDL)の広報担当者によると、OSDL運営幹部はこの件に「深く関与」したというが、この状況をうまく調停して妥協を成立させることはできなかったようだ。
フリー・ソフトウェア提唱者たちは、トリッジェル氏のコードは単に、BitKeeperのプロプライエタリなソフトウェア・ライセンスを受け入れずにLinuxカーネルに貢献できる方法を提供しただけだ、と主張している。
もっとも著名なフリー・ソフトウェア提唱者であるリチャード・ストールマン氏は、以前から、BitKeeperの使用はカーネル開発者に「フリーでない」ソフトウェアの利用を許容できる行為と思わせるのに役立っているとして、カーネル開発者たちにBitKeeperの使用をやめるよう提唱していた。その目標は、トリッジェル氏とビットムーバー社の対立によって事実上達成されることになった。
Linuxカーネルは一連のサブシステム・メンテナンス担当者によって管理されており、各担当者がそれぞれ異なるLinuxコード部分に対するバグ修正と新コードの提出を受け付け、その後、適用した修正内容をトーバルズ氏(次世代カーネルを担当している)またはアンドリュー・モートン氏(大半の商用Linux製品のベースになっている、より安定したバージョンのカーネルを担当している)に転送している。カーネル開発者すべてがBitKeeperを使用していたわけではないが、トーバルズ氏が同ソフトウェアを使用していることが他の開発者もそれを使用すべきだという圧力になったと批判者は指摘していた。
トーバルズ氏は明らかに、BitKeeperを使用できない状況に追いやられたことを喜んでおらず、トリッジェル氏のプロジェクトで作成されたソフトウェアはLinux開発者にもビットムーバー社にもトリッジェル氏自身にも利益をもたらしていないと述べている。
先週トーバルズ氏は、トリッジェル氏の取り組みを表立って批判したことで非難を浴びた。批判者たちは、トリッジェル氏によるBitKeeperのリバースエンジニアリングは、トーバルズ氏自身がUNIXをベースにしているLinuxで行なった作業に等しいと主張している。
電子メールでの取材に対し、トリッジェル氏自身はこの件についてのコメントを避けており、自分がBitKeeperと連携するツールを作成した事実を認め、「倫理上でも法律上でも完全に問題のない形で同ツールを開発した」と主張するだけに留めている。
トーバルズ氏はすでに1週間、カーネル開発の作業を保留してgidに取り組んでいるが、まだgidは「使える段階」には達していないと述べている。また同氏は、この新しいソースコード管理システムがカーネル開発者にもたらす混乱の規模はまだわからないとしている。gidはBitKeeperよりも使いにくく、BitKeeperで利用できた多くの機能を欠くので、Linuxカーネルにかかわっている多数のメンテナンス担当者の作業がどれだけ遅くなるかを見ないと実際の損失コストは測れない。だが、それらは非常に頭の良い人々だ、と同氏は語っている。
なお、新しいソースコード管理システムを英国の俗語で「いやなやつ、鼻つまみ者」を意味する"git"と呼んでいることについて、トーバルズ氏は「私は自己中心的なので、プロジェクト名は自分にちなんで付けている。最初はLinux、今回はgitだ」と説明している。
(Originally reported by Robert McMillan, IDG News Service 04/19/2005)
(IDG News Service)



























