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【連載】

関西圏における自治体広域連携

大阪の防犯運動と情報通信システム(2)
(2006年03月31日)

 現在、大阪府ではまちの安全を守るためにさまざまな取り組みが行われている。情報通信技術の活用も、その1つである。今回は、前回に引き続き、大阪府内における防犯広域連携事例を紹介する。



中野 潔
大阪市立大学 創造都市研究科 都市情報学専攻 教授 
大阪安全・安心まちづくり支援 ICT活用協議会 副会長

 前回は下表に示した「A:多メディア危機情報早期通報型」と「C:対策支援型」について紹介した。今回は、引き続き、「B:危機情報早期共有型」「D:危機発見支援・見守りアピール型」「E:出入り、移動制御型」に分類されている事例を説明していく。

総務大臣表彰を受けたANSINメールシステム

 Bの危機情報早期共有型は、パソコンによる電子メールや携帯電話メールを用いる点で、Aの多メディア危機情報早期通報型と似ている。しかしAには、危機となりうる事象を発見した住民から警察への一方通行の流れしかないのに対し、Bでは、そうして通報された情報が集約機関から住民にも知らされるという双方向の流れが存在する。

 (2)の池田市の「ANSINメールシステム」は、平成16年6月に始まったもので、平成17年1月には総務大臣の表彰を受けた。ANSINメールシステムでは、平成16年7月6日の第1回目となる配信で犯人逮捕の実績を残した。

 このシステムと(3)の和泉総合防犯センター「防犯キャッチャー」、(4)の門真市PTA協議会「セーフティネットワークシステム」、(5)の豊中市「地域安心安全情報共有システム」は、よく似ている。いずれも、住民や警察などから集まってくる不審者出現情報、危険個所情報などを、チェック機関で承認した後、住民に電子メール、携帯電話メールなどで流している。

 それぞれの特徴を見ると、(4)(5)には、Webによる情報蓄積、地理情報システム(GIS)の活用という特徴がある。また、(4)は、カメラで撮った画像も対象となっている。(5)の場合は、例えば犯罪種別の発生数、発生率を地図上で示すなどといった統計処理機能も備えている。

 (2)は、情報の一元的チェックを市役所の危機管理課、情報管理課が実行する行政主導タイプ。(3)は、企業、団体、個人の協賛金によって運営されるタイプである。

情報通信技術を使った安心確保システムの分類と関連要素技術

街頭の自動販売機を防犯ロボットとして活用

 Dの危機発見支援・見守りアピール型は、必要に応じて機械の力を借り、見守る、あるいは、危機的状況を検知することを主眼に置いたものが多い。

 (7)の大阪府警本部「ひったくり抑止パイロット地区事業」は、声掛け看板(標語を大書した据え置き看板)、スーパー防犯灯、防犯カメラを設置したり、夜間パトロールのボランティア団体などを組織したりすることで、街頭犯罪の抑止を目指している。

 (8)の「街頭防犯システム」(街角自販機ロボット)、(9)の「防犯カメラのネットワーク利用」、(12)の「防犯ロボット(番竜)」は、カメラを用いているのが特徴だ。

 (8)は、街頭の自動販売機に、防犯カメラ、マイク、防犯灯を着けようという試みである。近くで携帯防犯ベルが押されると自動販売機のカメラで現場を撮ったり、警報を鳴らしたりする。(9)は遠隔地の防犯カメラを検索して探したり、カメラの画像を遠隔地で受けたり、カメラの方向を遠隔地から制御したりなど、既にある仕組みの総称であり、特定のシステムを指したものではない。一方、(12)はテムザックが開発し、三洋電機などが販売している特定の製品である。

 (10)と(11)は、カメラを用いないシステムである。(10)の「子供の登下校見守り(ICタグの利用)」は、RFID(非接触IC)タグや非接触ICカードを子供に持たせ、家の玄関や校門、塾の出入り口などで子供の通過を確認することにより、一定の時間を過ぎても登下校を済ませない子供を早期に発見するものである。(11)の「通信一体型GPS端末」は、持ち主の居場所を連続的に自動的に計測するGPS(全地球測位)機能付きの携帯電話や専用端末を指している。

大阪府岬町の約600戸はまるごとセキュアに

 Eの出入り、移動制御型の多くは、物理的障壁と情報通信技術を組み合わせ、人の出入りを物理的に制御する。

 (13)のリフレ岬・望海坂「タウンセキュリティ」は、全国で先進的な事例が出てきたタウンセキュリティの1つである。大阪府岬町の約600戸という大規模な戸建団地では、24時間常駐の警備員による巡回、公園などに置かれた監視カメラをWeb経由で見る防犯システム、全戸に標準装備したホームセキュリティ・システムなどにより、街区全体のセキュリティ強化を図った。

 (15)(16)は一般的な概念である。(15)の「ITマンション」は、全国に登場してきた非接触ICカードを入出館管理やエレベーター制御に活用したマンションをまとめて呼んだものである。

 (16)の「ホームセキュリティ」は、インターホン、防犯センサー、防犯カメラ、センサー連動ライトの利用、錠の高度化、警備会社との契約などにより家屋への侵入を総合的に防ぐ。

 (13)(15)(16)が人の出入りを物理的に制御しようとしているのに対し、(14)の「e-CABかけつけ(GPSと連携したタクシー)」は、人の移動を支援する。平成16年10月時点で、全国のタクシー会社200社、車両1万5,000台をカバーしているサービスである。その仕組みは、GPS機能付き携帯電話を高齢者や子供に持たせることにより、その持ち主がボタンを操作をした場合に、持ち主の位置がタクシー会社に自動的に伝えられ、タクシーが迎えに行くというもの。また、家族が携帯電話の持ち主の位置を検索することも可能になっている。

 ここまで述べたように、大阪、あるいは関西では、不幸な事件が続いたことをバネに、全国に先駆けて情報通信技術を活用し、安全なまち、安心して暮らせるまちの実現に向けて邁進している。首都圏に比べて定住率が高く、喫茶店のようなコミュニティの「結節点」が多く残る関西は、安全・安心対策の先進地域へと、きっかけさえあれば「化ける」ポテンシャルを秘めていると思われる。

情報通信技術を使った安心確保システムの分類と関連要素技術

(月刊e・Gov 2005年6月号より)

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