新時代のITキャリア【システム運用管理編】
「テクニカル・サポート」IT業界では常に新しい技術が誕生している。そしてそれに伴いさまざまな職種や役職が誕生している。本連載では、IT業界の職種を取り上げ、その仕事内容や必要とされる能力、労働条件や待遇といったものを紹介していくことにしたい。今回はシステム運用のトラブルシューターである「テクニカル・サポート」を取り上げよう。
横山哲也
グローバル ナレッジ ネットワーク、マイクロソフトMVP
【職務概要】
ユーザーが直面する日常的なコンピュータ・トラブルは、前回紹介したヘルプデスクが対応する。しかし、ここで解決できない問題は、「テクニカル・サポート」へと送られる。
テクニカル・サポートは、ユーザーから報告を受けたトラブルを再現し、原因を特定し、対策を考える。すぐに対策ができない場合は、その時点で最善の回避策を提案する。
また、ソフトウェアやハードウェア・ベンダーに対してトラブルの原因究明を依頼し、解決策を要求するのも、テクニカル・サポートの職務だ。
【存在意義】
コンピュータ・システムの運用に、トラブルは付き物である。多くのトラブルはヘルプデスクで対応できるが、ソフトウェア製品自体の不具合が原因で発生するようなトラブルは、ヘルプデスクでは対応できない場合もある。こうした高度なトラブルに対応するのが、テクニカル・サポートの存在意義である。
最近のオープン化(*)により、コンピュータ・システムはマルチベンダー製品で構成されることがあたりまえになっている。
例えばヒューレット・パッカード(HP)やデルのハードウェアに、マイクロソフトのOSを搭載し、オラクルのデータベース製品を組み合わせて、独自の業務アプリケーションを稼働させる…といった具合だ。
このような環境でトラブルが発生した場合、まずはトラブルの原因がどこにあるのかを突き止める必要がある。各ベンダーの担当者は、自社製品のみが責任範囲である。すべてのベンダーに「トラブルが発生した。とにかく来てくれ」と連絡するようでは、テクニカル・サポート失格だ。
(*)ここでいう「オープン化」は、ハードウェア、OS、ミドルウェア、アプリケーションをそれぞれを異なるベンダーから調達できる状況を指している。
【必要な経験/スキル】
ヘルプデスクと違い、業務内容はすべてエンジニア間でのやり取りとなる。そのため、技術的なコミュニケーション能力が重要になる。もちろん、高度な技術力が必須なのは言うまでもない。
ちなみにテクニカル・サポートにも階層があり、わからないトラブルは上位組織にエスカレーションできる。しかし上位組織も、職種は同じテクニカル・サポートだ。職種的にはこれ以上の階層はない。
技術コミュニケーション能力
問題を特定し、ベンダーのサポート担当者に、その問題を正しく伝えられる能力。ほとんどの場合、ベンダーは特定企業のシステム固有の問題(機能強化/修正など)には対応しない。
それを理解したうえで、「これは一企業だけの問題ではない。御社の顧客全員に関係する問題なのだ」とアピールできる、技術コミュニケーション能力が求められる。そして、その問題をベンダーに対処させられるだけの折衝能力があれば言うことはない。
コンピュータの知識
サポートするレベルにもよるが、高度なコンピュータ・スキルが要求されることは多い。単に操作手順を知っているだけでは不十分だ。コンピュータの動作原理までを正しく理解しておく必要がある。
例えば、代表的なOSなら、メモリ管理やタスク管理などの詳細を把握しておこう。最近ではデータ・ベースやWebサーバの知識も必須だ。
ただし個別のアプリケーション操作に関する知識は、それほど必要とされない。実際多くのテクニカル・サポートは、内部構造を知っていても、操作手順には弱い。
ネットワークの知識
昨今、ネットワークに接続していないコンピュータは、ほとんど存在しなくなった。したがってネットワークに関する知識は不可欠である。特にTCP/IPの基礎、IPルーティング、DNSなどについては、深く理解しておく必要がある。
アプリケーションの知識
アプリケーションの操作手順に関する知識は必要とされないと書いたが、アプリケーション自体のトラブルは、テクニカル・サポートの管轄である。
社内開発したシステムであれば、担当システム・エンジニア(SE)からシステム構成を聞いておくか、同システムの仕様書を読み、内容を把握しておく必要がある。
以前は社内システムを開発した担当SEが、その会社に常駐することは多かった。この場合、SEがテクニカル・サポートを兼ねていた。しかし、ソフトウェアの単価が下がるとともに、人月単価が上昇し、SEの常駐も減っている。その“しわ寄せ”がテクニカル・サポートにきている。
【適した人材】
何よりも探求心が旺盛である人。トラブルシューティングをする場合でも、単に問題を解決するだけでは不十分だ。真の原因を探り、再発防止まで考えなければならない。
例えば問題が発生したとき、原因を追及する前に再起動をするような人、エラー・メッセージの文章をよく読まない人でマニュアルに首っ引きになるような人は、テクニカル・サポートには向かない。
一方で、現実的な対応ができる柔軟性も求められる。午前5時に発生したトラブルを、午前8時までに復旧しなければならないのであれば、“応急処置”としての再起動も必要だろう。
【雇用側が求める能力】
ずばり、トラブルシューターとしての役割だ。
ヘルプデスクで対応できない問題を特定し、解決する。そのためには、高度な技術力に加え、ベンダーとの折衝力も要求される。実際には、ベンダーのサポートとの交渉の余地はあまりないが、雇用側からは「そんなもん、ベンダーにやらせろ」と要求される。雇用者とベンダーの双方を説得しつつ、技術的問題も解決しなければならない。
やりがいのある仕事ではあるが、困難も伴う。心してほしい。
【採用の決め手となる“究極の質問”】
「あるある大事典」、あるいは類似の番組を見たことがありますか。見てどう思いましたか。それはなぜですか。
ある現象の原因に興味を持つことは、テクニカル・サポートとして重要な資質となる。そして、提示された因果関係について、論理的思考に基づいて適切な判断ができるかどうかは、もっと重要である。
「××でやせる」「●●が血圧を下げる」と聞いて、「どれ、ほんとうかどうか見てみよう」と興味を持てるような人は、テクニカル・サポートに向いている。
一方、まったく興味を持てない人、無条件に番組の結果を信じる人、絶対信じない人は、テクニカル・サポートには向いていない。単に楽しんで見ている人や、番組が出す結論に対して、漠然と疑いの目を持っているだけでも十分ではない。番組が行う実験の条件に対する不備や、結論を導くまでの論理的不整合を指摘できる必要がある。
「興味を持って一度見たが、あまりにばかばかしいので、それ以来見ていない」という人も、テクニカル・サポートの資質がある。ただし、なぜ“ばかばかしい”という結論に達したかを、第三者に的確に伝えられなければならない。
【年収】
高い技術スキルが求められるため、年収もそれなりに上がる。ざっと500万円〜700万円程度が一般的だろう。技術スキルによっては、1,000万円を超えるのも夢ではない。
ただし、名称は「テクニカル・サポート」でも、実態は単なるヘルプデスクの場合があるので、注意が必要だ。この場合、高い年収は期待できない。そもそも、ヘルプデスクとテクニカル・サポートでは必要なスキルも違う。転職の際には、納得がいくまで調査しよう。
























