本の特盛り――横山哲也の読書のススメ 第2回
「インサイドMicrosoft Windows 第4版(上・下)」「…‥絶句(上・下)」知的咀嚼力を高めるため、“主食”となる本を紹介する本連載。第2回目はMicrosoft公式解説書と、新井素子氏の前期作品の集大成ともいうべき一冊(上下二冊だが)を紹介しよう。
■インサイドMicrosoft Windows 第4版(上・下)
David Solomon/Mark Russinovich著,豊田孝訳
日経BPソフトプレス6,090円(上)/5,250円(下)(税込)
OSの内部構造を知ることが、直接何かの役に立つことは少ない。しかし、ドキュメント化されていない振る舞いを予測したり、予期していなかったエラーの原因を類推したりするには内部構造の知識が不可欠だ。「インサイドMicrosoft Windows」は、Windows OSの内部構造を記した数少ない書籍である。
1993年、マイクロソフトはまったく新しいOSとしてWindows NTを発表した。そして、OS発表とほぼ同時に発売されたのが「インサイドWindows NT」だった。同書は、テクニカルライターのヘレン・カスター(Helen K. Custer)氏がWindows NT開発チームから情報を入手して執筆されたものだ。ライターによって書かれたため、非常にわかりやすい内容だったが、深いところまで踏み込んではいなかったのが残念だった。
1997年「インサイドWindows NT」をWindows NT 4.0に対応させるため、Windowsのコンサルティングと技術セミナーの講師をしているデビッド・ソロモン(David Solomon)氏が著者に加わって完成したのが、「インサイドWindows NT第2版」だ。執筆にあたってソロモン氏はWindowsのソースコードを参照する権利が与えられた。もちろん技術レベルも相当上がってしまったので、読みにくくなってしまったのは仕方ない。
しかし、これを「仕方がない」と考えなかったのが、Windowsのトラブルシューティング・ツールである「Sysinternals」を開発・販売していたマーク・ルシノビッチ(Mark Russinovich)氏だ。彼の会社は後にMicrosoftに買収され、製品の多くはMicrosoftから無償公開されている。ルシノビッチ氏は現在Microsoft社員として以前と変わらずツールの開発を継続しているようだ。
ルシノビッチ氏はWindows 2000対応の第3版「インサイドWindows 2000」(2000年)執筆に加わり、自作のSysinternalsツールを駆使して「Experiment(実験)」というコラムを大量に追加した。読者は「実験」を自分で行なうことで、Windowsの内部構造を体験することができる。「ツールを使った体験」は面白いアイデアだったので、筆者らが執筆した「Windows Server 2003完全技術解説」でも取り入れた。
その後「Windows Internals」と名前を変え、Windows XP/2003に対応した第4版(2004年)、Windows Vista/2008に対応した第5版(2009年)がソロモン氏とルシノビッチ氏のペアで執筆されている。2012年4月には待望のWindows 7/2008R2対応の「Windows Internals第6版」が登場するはずである。
残念ながら日本語訳は「インサイドMicrosoft Windows 第4版(上・下)」を最後に登場していない。Windows Vistaからカーネルが大きく変わっただけに残念である。その代わり、というわけではないが英語版には電子書籍版が存在する。Amazon.comからはKindle版しか購入できないが「O’Reilly eBook Store」からは1部購入するだけで、ePubやPDFなど複数のフォーマットのすべてを入手できる。しかも内容のアップデートサービス付きである。
技術書の場合は、一度読んでしまえばあとは必要な箇所を拾い読みすることが多い。「コマンドリファレンス」のように、そもそも通読を前提としない場合もある。電子書籍を使うことで、検索性が格段に向上する。Windowsのトラブルシューティングの力を付けたい方には、ぜひ英語版を電子書籍として購入することをお勧めする。興味のあるキーワードを検索し、拾い読みし、「実験」を試すだけでも十分有益なはずだ。
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