日本の法制度-3つの内部統制 その2(会社法、裁判例) |[連載]ITエキスパートのための法律入門|トピックス|Computerworld

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[連載]ITエキスパートのための法律入門

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【法律入門 第4回】

日本の法制度-3つの内部統制 その2(会社法、裁判例)

とことんわかりにくい法律を とことんわかりやすく解説!
(2008年05月26日)

 日本には3つの内部統制が存在する。つまり、「金融商品取引法」「新会社法」「判例(裁判所)」における内部統制は、それぞれ解釈が異なるのだ。今回は、「会社法の内部統制」と「判例における内部統制」について解説しよう。

3つの内部統制(2)
会社法の内部統制

 会社法の内部統制は、「株式会社の業務の適正を確保するための体制」を取締役会で決定し、事業報告に記載するというものである。事業報告の記載内容は、監査役監査の対象となる。決定の義務を負うのは、大会社と委員会設置会社である。決定すべき事項とその具体例は次のとおりだ。

(1)法令遵守体制
 例:コンプライアンス部署の設置。コンプライアンス研修制度
(2)損失危険管理体制
 例:リスクマネジメント方針の策定。危機管理方針の策定。リスクマネジメント部署の設置
(3)情報保存管理体制
 例:取締役会の議事録、稟議書、契約書などの文書の作成と保存・管理に関する事項
(4)効率性確保体制
 例:採算基準、経費削減方針、予算制度、事業部ごとの業績目標などの設定
(5)企業集団内部統制
 例:親会社の監査役と子会社の監査役の連携に関する事項。親会社から独立した子会社の取締役の選任に関する事項
(6)監査役監査の実効性確保体制
 例:監査役の職務を補助する補助使用人の人数や地位。補助使用人の人事異動についての監査役の同意の要否

 当然のことながら、何でも決定すればよいというわけではなく、費用対効果の観点も加味しつつ、自社に適したものを選択すべきである。決定した以上は、当然策定・構築しなければならない。決定事項は事業報告に記載され、監査役監査の対象となる。実務上、監査役が監査の形を取りつつ「あれもこれも」と積極的に提案することが見受けられるが、このようなやり方はまちがっている。監査役の権限は、社長の選択が善管注意義務違反にならないかどうかをチェックすることに限られている。それを超えて、社長の選択しない内部統制をインストールせよと迫る権限は与えられていないのだ。

3つの内部統制(3)
判例の内部統制

 最後に、判例の内部統制について述べよう。裁判所は、一貫して、内部統制を「会社が営む事業の規模、特性等に応じたリスク管理体制」と定義している。判例上の内部統制は、取締役の善管注意義務の一環として、取締役に対してリスク管理体制を社内に構築・運用することを求めるものである。古くは2000年の大和銀行事件、最近では2008年2月に最高裁判決が出たダスキン事件など、多くの株主代表訴訟で問題となった。

 従業員による不祥事が発覚した場合、最初に問題になるのは取締役の監督責任である。会社の規模が大きくなり、取締役が直接従業員を監督することが不可能な状態になると、「直接の監督は無理でも、リスク管理体制を整備することによってその不祥事を防ぐことはできなかったのか?」という問題が出てくる。ここで初めて内部統制構築義務を果たしたかどうかが問題となる。取締役が責任を完全に免れるためには、直接の監督義務違反がないことと内部統制構築義務違反がないことの両方が必要である(図1)。この点に着目して、「知らなかったでは済まされない」が内部統制のキャッチフレーズとなっている。


図1● たとえ違法行為が発生したとしても、直接の監督義務がなく、かつ適切に内部統制を構築していれば、取締役の責任は免れる

 判例の要求事項は内部統制の構築と運用であるが、判例は、大和銀行事件以来「内部統制の基本方針については、取締役会で決定すべきである」としており、決定義務については会社法の要求と重複している。適切なリスク管理体制を決定し、構築することは、2つの要求を同時に満たすものである。

 実のところ、裁判所が取締役の内部統制構築義務違反を認めた事例は、非常に少ない。裁判所の内部統制に関する考え方は、決して厳しいものではない。

 株主代表訴訟で取締役が高額の損害賠償責任を負わされる根拠は、不祥事を許したお粗末な内部統制にあるのではなく、もっぱら不祥事を知ってから以降の対応にある。

 例えば、未認可添加物入りの肉まんの販売が問題となったダスキン事件では、添加物の混入を防ぐための内部統制構築義務違反は認められず、取締役の責任の根拠とはならなかった。しかしながら、事実を知った取締役らがその事実を公表しないと決定したことについて、責任が認められたのである。

 不祥事を知って青ざめ、「そうだ、知らなかったでは済まされないんだ。…とても公表できない」と考えるのは最悪の選択だ。内部統制構築義務は、結果責任を問うものではない。たとえ結果が発生してしまったとしても、その防止に向けて正しく努力した痕跡があれば、取締役は責任を免れるのである。

 筆者が執筆した「実践内部統制のポイント」(発行/商事法務)では、本稿で紹介した内容をより詳しく解説している。もし興味があれば参照していただきたい。

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