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【解説】
進化する「シン・クライアント」――ブーム再来の背景と今後の展望
低価格化やサービスの多様化で、普及へ向けて“3度目の正直”となるか
(2008年08月14日)
企業の情報システムを担う次世代クライアント技術として「シン・クライアント」が注目を集めて久しい。これまで何度かブームを巻き起こしてきたが、そのたびに導入コストの高さなどがネックとなり、大規模な普及には至らなかった。だが、ここにきて端末価格の低価格化や仮想化技術の応用により、これまでの課題が克服されつつある。さらにシン・クライアントのホスティング・サービスが登場するなど、サービス形態も多様化してきた。そこで本稿では、今回のブームの背景とともに、進化するシン・クライアントの最新事情を解説する。
藤吉栄二
野村総合研究所 情報技術本部 技術調査部 主任研究員
シン・クライアントに到来した3度目のブーム
シン・クライアントは、これまでも何度か話題に上ってきたテクノロジーだ。古くは1990年代後半、当時はまだ高額であったPCに代わる企業向けコンピュータとして、米国Oracleがシン・クライアント構想に基づく「ネットワーク・コンピュータ(NC)」戦略を発表した。米国Sun MicrosystemsもNCを実現する機器として「JavaStation」を提供していた。
NCは、「IPベースのネットワーク」、「Javaベースのプログラミング環境」、「アーキテクチャ上の中立性」、「維持・導入コストが安価」、「高いセキュリティ性」など、当時としては先進的なコンセプトを有していた。しかし、PCの低価格化が進んだことに加えて、ネットワーク環境の整備が不十分であったり、NCの普及を目指すアライアンス・メンバーに米国Microsoftが不参加であったりと複数の要因が絡み合い、結局、普及には至らなかった。
2000年代に入るとシン・クライアントに再びブームが訪れる。Microsoftがターミナル・サービスを標準で備えたWindows 2000 Serverをリリースし、米国Citrix Systemsはこのターミナル・サービスを強化するアドオンとして「MetaFrame」の提供を開始した。
その後、CitrixのMetaFrameを用いたSIソリューションの充実や、Sunのシン・クライアント・システム「Sun Ray」の登場により、シン・クライアント、あるいはアプリケーション処理をサーバ側で行う「サーバ・ベースド・コンピューティング」が情報システム部門を中心として広く認知されるようになった。しかし、システムの導入にはクライアント端末だけでなく、新規にサーバの導入も必要であるため、システム全体として導入コストが高くなる点などが影響し、シン・クライアントは期待されたほど普及しなかった。
そして現在、シン・クライアントに3度目のブームが到来している。個人情報保護法への対応や情報漏洩対策に代表されるセキュリティ強化のほか、ビジネス・コンティニュイティ(BC)のような事業継続性に対する意識の高まりなど、法令順守や企業が負う社会的責任への1つの“解”として、シン・クライアントの有効性が実証されてきたことが、その火付け役となっている(図1)。
| 図1:シン・クライアント・ブームの変遷 |
また、2004年ごろからシン・クライアントの企業導入を支える基盤技術が多数登場している。このことも、今回のブームを支える理由の1つであると言えよう。
調査会社のIDC Japanによると、2007年度におけるハードディスク未搭載のシン・クライアント端末の出荷台数は12万台(汎用PCのシン・クライアント利用を含めると19万台)であり、今後は年率40%前後の成長が見込めるという。同社は、2012年にはシン・クライアント端末の出荷台数が110万台に達すると予測している。3000万台以上と言われる国内の企業向けPC市場からすると、まだごくわずかであるが、シン・クライアントは着実に浸透していくはずである。
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