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事業継続マネジメント(BCM/DR)

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「仮想化時代」に到来する3つのテクノロジー・トレンド

グリーンIT/プロビジョニング/自律コンピューティング

(2008年01月17日)

企業の情報システムにおける仮想化技術の活用が着実に進むにしたがい、新しいテクノロジー・トレンドが出現している。本稿では、グリーンIT、プロビジョニング、そして、自律コンピューティングという、仮想化技術を前提とした3つのトレンドについて、これらがユーザー企業にどのような価値をもたらすのか考察してみたい。

栗原 潔
テックバイザージェイピー代表

仮想化──古くて新しいテクノロジー

 仮想化技術とは、物理的なハードウェア・リソースを抽象化した論理的(仮想的)なハードウェア・リソースをユーザーに対して提供することで、物理リソースと論理リソースを疎結合化し、システムの柔軟性・俊敏性、そして、ハードウェア・リソースの利用率を大幅に向上させるための技術の総称である(図1)。


図1:仮想化技術の概念

 仮想化の考え方自体は、企業の情報システムのあらゆる構成要素に関連するものだが、今日において仮想化技術と言った場合には、サーバ仮想化およびストレージ仮想化を指すことが多い。

 サーバ仮想化、ストレージ仮想化のどちらもその歴史は古い。特に、メインフレームの世界ではおよそ30年以上にわたり、これらの仮想化技術が活用されてきた。オープン系システムの世界においても、仮想化技術が製品化されてから10年以上の期間が経過している。近年になり、仮想化技術への注目度が急速に高まった理由としては、システムの処理能力上の問題と比較してシステムの柔軟性・俊敏性の重要性が相対的に高まってきたこと、および、PCサーバやデスクトップPCの世界でも安価な仮想化技術が利用可能になってきたことが挙げられるだろう。

 月刊Computerworldの2007年6月号の特集「仮想化技術の価値と活用指針」において、仮想化技術の基本について述べた。本稿では、前回の記事では触れられなかったトレンド、ないしは、それ以降に注目度が増してきているトレンドについて考察していきたい。そうした新しいトレンドとは、「グリーンIT」「プロビジョニング」「自律コンピューティング」の3つである。それでは以下、順に取り上げていくことにしよう。

仮想化とグリーンITの関係

グリーンITとは

 グリーンITとは、環境保護の観点からIT基盤を見直そうという活動の総称である。具体的には、データセンターにおける機器類の電力消費量と発熱量を低減するための取り組みにフォーカスが当てられることが多い(注1)。

 特に、非製造業企業においては、IT基盤に要する電力が、企業が消費する電力の中でもかなりの割合を占めており、環境保護の観点から見たグリーンITの重要性は高い。実際、欧米では多くのIT調査会社がグリーンITを今後、ユーザー企業が注目すべき重要な案件の1つとして位置づけている。また、経済産業省も「日本政府としてグリーンITに本腰を入れて取り組んでいく」との見解を示している(注2)。

 しかしながら、今までのところ、日本国内の一般的なユーザー企業のIT部門におけるグリーンITに対する関心は今ひとつのようである。その最大の理由は、電気料金や空調コストなどが必ずしもIT部門の予算管理の範囲内にないということであると思われる。だが、グリーンITの問題は単なる経費削減というレベルで語られるべき問題ではない。CSR(Corporate Social Responsibility: 企業の社会的責任)という観点から企業のグリーンITへの取り組みが社会的な要請となる可能性が高まっている。つまり、単なるコスト削減以上の問題になるということだ。

 この種の課題への対応は、往々にして、企業の経営層からトップダウン型で突然に現場に要請されることもある。一般企業のIT部門、そして、当然ながらIT基盤技術を提供するベンダーも、データセンターの電力消費量と発熱量の低減に対する注目度を今まで以上に高めておく必要があるだろう。また、企業によっては、データセンターの電力容量あるいは冷却容量の限界により、システムの拡張が困難になっている場合もある。この場合には、グリーンITはより差し迫った課題となろう。

注1:当然ながら、機器の製造段階におけるエネルギーの最小化、廃棄された機器の産廃処理なども、環境保護の観点からはきわめて重要であるが、本稿ではデータセンターにおける電力消費と発熱量の低減に的を絞った議論を行うこととする
注2:日本AMD主催「グリーンITシンポジウム2007」(2007年10月4日)で講演した経済産業省商務情報政策局参事官、星野岳穂氏の発言より

 
グリーンITの推進における仮想化技術の役割

 欧米のIT業界におけるグリーンITに向けた取り組みの1つに、グリーン・グリッド(注3)というコンソーシアムの結成がある(画面1)。グリーン・グリッド・コンソーシアムは、エネルギー効率性にすぐれたCPUやサーバ、ネットワークその他の技術の開発を推進し、データセンター運用のベスト・プラクティスを普及させることを目的とした組織として、2007年2月に発足した。現在、同コンソーシアムには多数のベンダー、SIer、データセンター施設関連企業が参加している(注4)。

画面1:グリーン・グリッド・コンソーシアムのWebサイト(http://www.thegreengrid.org/
http://www.thegreengrid.org/

 ここで注目したいのが、同コンソーシアムのボード・メンバーとして、CPUベンダーのAMD、インテルや、システム・ベンダーのヒューレット・パッカード(HP)、IBM、サン・マイクロシステムズ、デルなどという当然に想定されるベンダーに加えて、ヴイエムウェアが含まれている点だ。なぜ、仮想化技術の専業ベンダーである同社がグリーンITに強いコミットメントを行っているのか。それは、仮想化技術がデータセンターの電力消費量と発熱量を低減するうえで、きわめて有効なアプローチであることが理由であろう。

 大型サーバの電力消費量は、絶対値で見れば小型サーバと比較してはるかに大きく、電力効率が悪いように見える。しかし、仮想化技術を活用して大型サーバにワークロードの集約を行うことは、処理能力と相対的に見た電力消費と発熱量の最小化という点では最も有効な戦略の1つである。

 具体的な例で見てみよう。図2に示すように、利用率が低い小型サーバ群に対してサーバ仮想化技術を適切に活用して大型サーバ1台へのサーバ統合を行うことで、電力消費量の合計をおよそ5分の1に低減可能という試算が成り立つ(注5)。その際には、必然的に発熱量も同程度に低減できるだろう。


図2:仮想化技術によるサーバ統合時の電力消費量低減効果(試算)

 もちろん、データセンターの個別の機器において省電力型の製品を採用することは重要である。しかし、それだけでは、この試算にあるような5分の1という大幅なレベルの電力量カットを実現することはできない。CPU、ハードディスク、電源、冷却ファンなどの構成要素は休眠状態にあっても一定の電力を消費し、熱を発している。ゆえに、機器の利用率が低い状態でいることは、グリーンITという観点からは望ましくない。意外に感じられるかもしれないが、「大型サーバ+仮想化技術」は、“地球にやさしい”システム形態なのである。

 例えて言うなら、仮に低燃費/電力駆動対応のエコ・カーが普及したとしても、だれもが1台につき1人しか乗車しないような状態(つまり、リソース利用率が低い状態)ではエネルギー効率は高くない。最もエネルギー効率が高いのは、100%に近い乗車率の公共交通機関を利用することである。公共交通機関1台とエコ・カー1台を比較すれば、エコ・カーのほうが環境にやさしいかもしれないが、利用率が低いままでは十分な効果が上げられないということだ。

 一般に、仮想化技術の採用によるメリットとしてハードウェア・リソースの利用率向上が挙げられることが多い。そして、これに対する反論として、「ハードウェアは十分安価であり、これらからも価格低下が進行していくのであるから、利用率を上げる苦労などせず、どんどん購入してしまえばよい」という意見が聞かれることがある。これは、確かにハードウェアのコストだけを考えれば正論かもしれないが、上述したとおり、グリーンITという観点からは適切な考え方とは言えない。さらに、システム管理のための人件費や設置スペースも含めたTCOも考慮すれば、利用率の低いサーバやストレージが乱立する状況は決して望ましいとは言えない。解決策としてのサーバ統合と仮想化技術の採用を検討すべきだろう。

注3:グリーン・グリッド・コンソーシアムの「グリッド」は、グリッド・コンピューティングとは直接の関係はない
注4:残念ながら、2007年10月の時点では、日本のベンダーの参加はないようである
注5:この試算は、実在の製品のスペックの概算値を使用した理論値であり、実際の環境の測定値ではない点に注意していただきたい


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