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ビジネス・コミュニケーション進化論
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「エンタープライズ・ウィジェット」
その可能性と課題を探る
企業内で新たな活用領域を見いだすなか、セキュリティには手つかず
(2007年12月13日)
ウィジェットの社内利用に向けた試み
| 画面4:シトリックスの「Extentrix Citrix Published Application Widget」 |
現状では、広告/マーケティング・ツールとしての利用が多いウィジェットだが、社内システムへの影響はどうだろうか。ここでは、社内システムのウィジェット適用に対するベンダーの取り組みと、ユーザー企業の萌芽事例を紹介する。
アプリケーションのユーザー・インタフェース
エンタープライズ・アプリケーションのユーザー・インタフェース(UI)としてウィジェットを利用するためのツールが登場し始めている。
その1つが、シトリックスが配布している「Extentrix Citrix Published Application Widget」である(画面4)。これは、シトリックス・システムズのサーバ上で稼働しているOutlookやCitrix RSSフィード、あるいはWeb会議やリモート・アクセス・サービスを提供する「Citrix Online」にダイレクトにアクセスできるようにするウィジェットである。
同様にSAPも新しいUIとして、各種ウィジェットを公開している。画面5の「SAP BI Data Widget」では、地域ごとの営業組織の売上リポートをデスクトップ上に表示させておくことができる。
このようにUIとしてウィジェットが用いられるのは、高い表現力とリアルタイム性を兼ね備えているからであろう。
| 画面5:SAPの「SAP BI Data Widget」 |
外部情報/ツールとポータルのマッシュアップ
IBMは今年2月末に、ウィジェットに関してグーグルと提携し、Googleガジェットのランタイム・エンジンに相当する「IBM Portlet for Google Gadgets」というポートレットを開発した。これは、グーグルが公開している2万以上のウィジェットすべてを利用できる仕組みを、WebSphere Portalのユーザーに提供するというものだ(画面6)。
| 画面6:IBMの「WebSphere Portal」。画面右の「ポートレット・パレット」からドラッグ&ドロップでGoogleガジェットを追加する |
この仕組みが画期的であることは、従来の企業ポータルにおけるポートレットの仕組みと比較するとよくわかる。これまでのポートレットは、SAP R/3やLotus Notesなどのアプリケーションのデータを取り込むといった目的で、個々に開発されてきた。つまり、ポートレットとアプリケーションは1対1の関係だったのである。
これに対してIBM Portlet for Google Gadgetsでは、Googleガジェット用のポートレット1つだけで、グーグルが提供する2万以上ものウィジェットが利用可能となった。つまり、ポートレットとアプリケーションの関係が1:nになったのである。
もちろん、両者の用途は異なるため、単純な比較はできないが、日常的なちょっとした作業を効率化するツールが社内ポータル上で利用可能となるメリットは大きい。また、IBMがみずからウィジェットを開発しなくても、ユーザーが利用できるGoogleガジェットは増え続けているため、ベンダーにとっても非常にメリットの大きい仕組みだと言える。
既存アプリとの連携にも配慮したユーザー事例
パーソナライズド・ページは、Ajaxをフル活用したUIによって画面遷移を伴わないコンテンツの切り替えを実現するなど、直感的な操作を可能にしている。さらに、外部のディベロッパーによって開発された豊富なウィジェットを容易に利用できる。
こうしたすぐれた特徴を企業内でも生かそうと、最近では、パーソナライズド・ページと同様なコンセプトのポータルを構築する先進的な企業も現れている。例えば、三菱UFJフィナンシャル・グループで情報システムの企画・開発・保守を担当するUFJISでは、Ajaxを全面的に採用した社内ポータル・システムを独自に構築し、同社の社員400名が活用している。
このポータルを見て驚くのは、その洗練されたUIである(画面7)。Ajaxに加えて、RSSを採用し、「情報へのすばやいアクセス」「情報洪水からの脱却」を追求している。画面7では、右側のカレンダー、CPU利用率の表示、ToDoリストなどがウィジェット化されている。また、他のWebページをクリッピングして取り込む機能により、画面中央下のインターネット・バンキング・ログイン画面が表示されている。
| 画面7:Ajaxを全面的に採用したUFJISの社内ポータル・システムの画面 |
加えて、Lotus NotesやExchange ServerのデータもWebサービスとして呼び出せるようにするなど、既存アプリケーションの取り込みも可能としている。こうした点では、iGoogleなどのサービスを凌駕しており、今後の社内ポータルが目指すべき姿を示していると言えよう。
社内利用ウィジェットのメリットと課題
以上の萌芽事例から、ウィジェットを社内で活用する際のメリットと留意点が見えてくる。
社外情報を容易に活用できるのが大きなメリット
メリットとしては、まず、単なる「社内サイトのリンク集」に陥りがちであった従来のポータルとは異なり、社外の情報も活用できる点が挙げられる。
今や、インターネット上には膨大な量の情報が溢れている。毎日の出社後に、いくつかのニュース・サイトをチェックすることが日課となっているビジネスパーソンも多いことだろう。
最近では、こうしたニュース・サイトが更新情報をRSSフィードとして配信するケースが増えており、それが社内ポータルに一覧表示されれば、出社後すぐに、日々のニュースのナナメ読みが可能となる。
また、ウィジェットを活用すれば、地図サービスや乗換え案内など、外部の便利なサービスを取り込むことも容易だ。しかも、これらのサービスを利用する際には社内か社外かをユーザーが意識する必要がないという点もすぐれた特徴である。
企業内で利用できるアプリケーションが、基本的に情報システム部門の用意したものに限られていた従来と比べれば、その発展ぶりを理解できるだろう。
現時点では配慮されていないセキュリティが課題
留意すべき点としては、セキュリティ対策が挙げられる。前述のようにウィジェットの中身はWebコンテンツに非常に近いため、同種の脆弱性を抱えうると考えられる。
特に外部のフィードを利用するものは、信頼できるコンテンツであっても悪質なコードが便乗してくる可能性があるため、注意が必要だ。実際に、Live.comで利用可能なRSSリーダー・ウィジェットで、攻撃者からのデータ・フィードを通して悪質なコマンドを招き入れるという脆弱性がすでに発見されている。この欠陥を悪用すれば、ユーザー・アカウントから特権情報を入手してそのユーザーになりすまし、ブラウザを乗っ取ることができる。
前述のWebSphere PortalとGoogleガジェットの連携でも、現状ではポートレット側で特別なセキュリティ対策がなされているわけではない。これらに限らず、現在、ウィジェットを活用している企業の多くは、その利便性ばかりに目を向け、セキュリティ対策まで手が回っていない印象を受ける。
しかし、今後の普及に伴い、ウィジェットを通じた外部からの攻撃は増加すると予想できる。特に、Windowsサイドバー・ガジェットのようにランタイム・エンジンがOSと密に連携しているものが被る被害は、非常に大きなものになるだろう。
自社内でのウィジェットの利用を検討する際には、大きな被害を受けて手遅れになる前に、ぜひ、ウィジェットの利用に関するポリシーを策定し、セキュリティ対策を徹底してほしい。























