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【解説】
米国国税局の「高速/大規模データ・ウェアハウス」がもたらした効果

もうだれも確定申告はごまかせない?――総容量150TBものデータを管理分析

(2008年03月28日)

ご存じのように、米国では、個人も事業主もそれぞれ確定申告を済ませなくてはならない。ゆえに、米国国税庁(IRS)が扱うデータは膨大かつ多岐にわたっており、同庁のIT部門では、10年前から先進的なデータ・ウェアハウス(DWH)システムの構築が取り組まれてきた。本稿では、同庁の高速/大規模DWHの特徴や、同システムがもたらす、税金詐欺摘発をはじめとする導入効果について見ていく。

Eric Lai
Computerworld米国版

 
不正申告の摘発件数を大幅に向上させたIRS

 米国は今、確定申告シーズンのまっただ中にある(締め切りは4月15日)。自身の申告を(ありていに言ってしまえば)“うまいことやって”、少しでも多くの還付金をもらえるようにと、必死に数字と闘っている人は多いはずだ。

 だが、そんなことにはあまり熱心にならないほうがよい。米国国税庁(IRS:Internal Revenue Service)はここ数年、税金詐欺の摘発件数を著しく伸ばしており、今年、取り締まりの強化にこれまでになく力を入れてきているからだ。

米国国税庁(IRS)のWebサイト

 米国New York Times紙は先ごろ、IRSの税務調査による追徴課税額は過去7年間、増加傾向にあると報じた。2006年度は140万件から592億ドルが徴収され、2000年度のときと比べ75%増となった。ターゲットとされたのは、中所得者層(年間所得2万5,000ドル〜10万ドル)と超高所得者層(年間所得100万ドル以上)だ。

 また、2006年度は、中層階級世帯および個人に対して、2000年度の3倍にあたる43万6,000件の税務調査が行われた。これと比例して、同所得層に属する世帯あるいは個人がIRSから税務調査を受ける確率は2000年度の377分の1から2006年度には140分の1にまで上昇した。一方、超高所得者層が税務調査を受ける確率は、2000年度の20分の1から、2006年度は11分の1に上がっている。また、同庁によれば、不正のない申告者に対する税務調査の実施件数も着実に減っているという。

世界有数規模のデータ・ウェアハウス

 これら一連の改善効果をもたらす立役者となったのは、IRSが構築した税務調査データ・ウェアハウス(DWH)「Compliance Data Warehouse (CDW) 」である。このDWHプロジェクトを統括したのは、同庁調査データベース担当ディレクターのジェフ・バトラー(Jeff Butler)氏だ。

 運輸省に5年、IRSに15年間勤務のキャリアを持つベテラン官僚であるButler氏は、控えめな口調で、次のように説明した。「(CDWは)最先端のテクノロジーと言ってよいだろう。大手クレジットカード会社や大手銀行のDWHに匹敵するレベルを目指したものだ」

 IRSで構築・運用されているCDWは実際のところ、Butler氏の説明よりもはるかに高度に洗練されていると言える。CDWは、150TBにも及ぶ過去10年分の確定申告データおよび関連情報の統合管理を担う、超大規模なDWHだ。この150TBという数字は、YouTubeやAT&T、CIA(中央情報局)などが稼働する世界最大級のデータベースに匹敵する規模だ。

 驚くべきは、その規模だけでなく、圧倒的な処理能力に対しても、である。「CDWを使うことで、IRSの調査官らは、一度に数億単位、時には数十億単位の記録を検索/分析することが可能になった。これにより、さまざまな質問に答え、傾向を見極め、シミュレーションと最適化モデリングを実践できるのだ」とButler氏。同氏によると、今まで数週間から数カ月かかっていた分析作業が、数時間から数日で完了するようになったという。

 CDWを利用するようになったことで、IRSは、勤労所得税額控除(Income Tax Credit:EITC)や小規模企業の税金逃れ対策など、脱税の温床となっている箇所を特定できるようになった。さらに、税金滞納者の特定にもCDWは一役買っている。同庁によれば、授業料のローン返済が残っている、卒業したての若者は特に要注意だという。

 ただし、税務調査の実務プロセスには貢献できない、あるいは、特定の申告に関して質問のある個人/企業に情報を提供することができないなど、当然ながら、このすぐれたDWHにも限界はある。この点についてButler氏は、「このDWHは一般には公開していないし、取引ベースのデータ保管も管理していない。あくまで裏方的存在として価値がある」と説明する。


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