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ビジネス・インテリジェンス

ユーザーの声から考える“情報共有/活用基盤2.0”

エンタープライズ検索/イントラ・ブログ/ソーシャル・ブックマークの企業での活用

(2007年10月29日)

今や、Web 2.0と称されるテクノロジーやツールは数多く登場し、その中ですぐれたものは広くユーザーに受け入れられている。では、エンタープライズの世界においてはどうか。これまでも企業は、情報共有/活用のためのさまざまな仕組みを取り込む試みを進めてきたが、この新たなテクノロジー/ツールは、どのような形で活用されることになるのか。本稿では、エンタープライズ検索/イントラ・ブログ/ソーシャル・ブックマークといったWeb 2.0系情報共有/活用ツールに対する企業ユーザーの声を元に、これらの導入/活用状況を探る。

吉川日出行
みずほ情報総研
コンサルティング部 シニアマネジャー
技術士(情報工学部門)/ITコーディネータ

エンタープライズ領域でWeb 2.0は生き残るか

 昨今、企業の情報システム担当者の間で「Enterprise 2.0」というキーワードが話題に上ることが増えている。この言葉は、米国ハーバード・ビジネス・スクールの准教授、アンドリュー・マカフィー氏が『Enterprise 2.0:The Dawn of Emergent Collaboration』という記事において、ブログやWikiに代表されるWeb 2.0のテクノロジーを企業内のナレッジ・マネジメント・ツールとして利用することをEnterprise 2.0と定義したことに由来する。

 おなじみのWeb 2.0だが、その定義をあらためて確認したい。これはもともと、米国オライリー・メディアの創業者でCEOのティム・オライリー氏が、従来のWebを1.0とし、それに対する新しい動きをWeb 2.0として定義したことに端を発する。同氏は、『What is Web 2.0』という論文の中で、Web 2.0を特徴づけるポイントを7つにまとめて示している(表1)。

表1:ティム・オライリー氏が示したWeb 2.0を特徴づける7つのポイント

 Web 2.0という新しいパラダイムが生まれ、インターネットには、これら7つのポイントのうちのいくつかを具現化したツールが雨後の竹の子のように登場した。そして、そのいくつかはユーザーに「面白いWebサービス」として受け入れられて生き残り、さらにそのうちのいくつかは成功者となった。

 確率論はともかくとして、この7つのポイントに代表される技術革新がユーザーの嗜好と社会的環境の変化に合致していた証拠だろう。少なくとも、多くのWeb利用者にとって、これらの要素は便利で魅力的なものであると言えるはずだ。

 さて、インターネット上での生存競争をくぐり抜けてきたWeb 2.0の代表的ツールは、はたしてエンタープライズ分野でも厳しい競争を勝ち残ることができるだろうか。本稿では、エンタープライズ検索、ブログ、ソーシャル・ブックマークといった代表的なWeb 2.0系ツールに対するユーザーの関心度や、その導入状況、活用状況を探ってみたい。

 なお、エンタープライズ検索とブログに関しては、本誌が実施している「Computerworld Technology Research(TR)」で検索エンジン/ブログをテーマにした回(No.42/月刊Computerworld 2007年6月号調査)の調査結果を参照し、ソーシャル・ブックマークについては、みずほ情報総研での活用事例を紹介する。

1. エンタープライズ検索

製品選定/評価のポイントはインターネット検索とは異なる

図1:現在の検索機能に対する満足度

 まず、検索エンジンに関する調査結果を見てみる。図1は、社内情報の検索機能に対する満足度や必要度を問うた結果であるが、驚くべきことに検索機能に満足しているユーザーは、いまだにわずかだ。検索機能は特に必要ないと考えているユーザーを差し引いても、ほぼ90%のユーザーが現状の検索機能に何らかの不満を持っている。

 情報化社会の進展と企業におけるデジタル化の推進の波は昨今、多くの企業において情報洪水を引き起こしている。こうしたなか、膨大な情報からその時々に必要な情報を探し出す検索機能への期待は大きい。

 現在注目されているエンタープライズ検索は、企業内のファイル・サーバ上の各種ドキュメントはもとより、イントラネット、グループウェア、各種データベースなど、企業内のさまざまなデータ・ソースに対して横断的に提供される検索サービスのことである。

 よりわかりやすく説明するために企業内に特化したYahoo!やGoogleと呼ばれることもあり、実際に2005年にはグーグルがアプライアンス製品を発表し、エンタープライズ検索の認知度向上に大きく貢献した。しかし、グーグルが得意とするインターネット検索とエンタープライズ検索では異なる点がいくつかある(表2)。

表2:インターネット検索とエンタープライズ検索の重要な相違点

 インターネット検索と大きく違うのは、やはり検索対象となるデータの性格とその保管場所である。エンタープライズ検索では、HTMLやPDF以外のさまざまな文書フォーマットも検索対象にする必要があるし、それらはWebサーバだけでなくファイル・サーバや専用の文書管理システム上に細かいアクセス制御を設定されたうえで保管されている。

 したがって、エンタープライズ検索製品の選定や評価は、インターネット検索とは別の視点で行うべきである。みずほ情報総研では、エンタープライズ検索製品の評価や事前に検討すべきポイントを、以下の6つにまとめている。

  • 対応する文書フォーマットの多さや新フォーマットへの対応の柔軟性
  • 文書が保管されている各種サーバへの接続性
  • ファイルへのアクセス制御の反映のさせ方
  • スケーラビリティ(文書数増大、トラフィック増大への対応方法)
  • (他システムへの連携のための)API、技術情報の公開度合い
  • カスタマイズ・ポイント(検索結果の表示順)の有無

 先ほどのアンケート結果からは、情報量が多すぎて必要な情報にたどりつけないという不満も見られる。昨今は、検索を行った際に何も見つからないことよりも、見つかる検索結果が多すぎることで、ユーザーの利便性を損なっているケースのほうが多い。このことから、必要な情報を見つけやすい検索結果の表示順が強く求められている。

図2:ユーザーがエンタープライズ・サーチ導入時に優先する機能/要件

 インターネット検索では、検索結果の表示順を定める手法として、グーグルが考案したPageRank(より多くのリンクを集めたページの評価を上げる検索結果の表示手法)が、今では最も支持を集めている。だが、エンタープライズ検索分野では、これだと言える決定的な表示順の評価手法はいまだに発明されておらず、各社が知恵を絞っている段階である。したがってみずほ情報総研では、今のところ検索結果の表示順を、前述の評価ポイントに加えずにいる。

導入第一段階のねらいはファイル・サーバ検索の効率化

 今回の調査では、ユーザーが検索対象として強く意識しているものについても尋ねている(図2)。この回答を、先ほどの質問と相関させて分析をしたものが表3である。ここから、興味深い傾向が見てとれる。

 検索機能に満足あるいは検索機能が必要ないと思っているユーザー、およびそもそも検索する対象が不足していると考えるユーザーは、検索対象としては部門内ファイル・サーバを重視している。これに対して、すでに実装済みの検索機能に何らかの不満を持つユーザーは、検索対象としてイントラネットや文書管理システムを意識する傾向が強い。

表3:検索機能に対する満足度と優先する機能/要件との相関分析結果

 このことから推測すると、エンタープライズ検索と言うと、まず、ファイル・サーバをターゲットにした導入というイメージがあると思われる。手近にある情報保管/共有の仕組みであるファイル・サーバに対する検索を効率化するためにエンタープライズ検索の検討と導入が始まり、その後の利用を通じて、検索対象をイントラネットなどの外部に広げていくという様子が想像できる。これは、筆者たちが常日頃提案している段階的な導入と同じ形態である。


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