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ビジネス・インテリジェンス
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【解説】
「分析は力なり」みずからの創意工夫で競争優位に立つ
構造化/非構造化を問わず、あらゆるデータからトレンドを得る
(2008年03月04日)
名著に学ぶ──「分析力」で競合に勝つ方法
| 写真1:分析力の良書である『Competing on Analytics:The New Science of Winning』(刊行:Harvard Business School Publishing)の表紙 |
2007年3月に、米国Harvard Business School Publishingから刊行された『Competing on Analytics:The New Science of Winning(勝敗を決めるのは分析:勝利の新たな方程式)』(写真1)は、BIの活用方法を学ぶ者にとって、実に示唆に富む良書である。
著者のThomas H.DavenportとJeanne G.Harrisの両氏は同書で、競争上の優位はBIと予測分析を高度に活用することで達成できるという論理を展開している。この書籍においては、NetflixやAmazon.com、Harrah's Entertainment、Capital One Financialなどの企業が、このメソッドで成功に至るまでのプロセスが詳しく紹介されている。以下、同書における重要なポイントを引用しつつ紹介していこう。
BI利用の現状と目指すべき方向
今日、BIツールやテキスト分析/マイニング・ツールは、すでにほとんどの大企業に導入されている。だが、H.DavenportとG.Harrisの両氏によれば、実際のところ、これらのツールがどの企業でもビジネスの成功に貢献しているとは言い難く、大半は事業部門レベルで運用されているにすぎないのが実情だという。
「保険会社の場合は保険料を算定する数理部に分析ツールを導入し、製造業者は品質管理にそうしたツールを使い、またマーケティング会社は顧客の生涯価値分析に採用しているかもしれない。だが、こうした活動はどんなに有意義であっても、会社の上層部や顧客、株主の目には見えず、その会社の競争力向上に貢献していると明言することもできない」(『Competing on Analytics』より引用)
そうしたなか、この書籍では、データ管理、量的分析、事実に基づく意思決定を大幅に改善した企業に焦点を当てている。同書が取り上げた企業の分析活動は、管理部門よりむしろ年次報告書に表れている。
「競争力のある企業になるには、同業他社よりすぐれている特徴、他社とは明確な差別化を図れる“機能”が不可欠だ。あなたの企業が、競合他社より収益性の高い固定客を捕まえて利益を増やし、それらの顧客に最適な価格で販売することを目標にしているとしよう。その場合、最も効率的なやり方は分析を利用することだ。また、日用品を販売していて、顧客のために棚のストックを切らさないようにしながらも最低限の在庫に抑えたいと考えているなら、サプライチェーンの最適化に分析が重要なカギとなる」(同書より引用)
著者は、分析で市場競争力を高めた企業は、戦略の基盤として1つ以上の“得意能力”を選び、それら能力をサポートするため広範な数量分析と事実に基づく意思決定を適用したところだと説く。そして、能力が何であれ、分析ツールを使うことでよりいっそう高い次元に押し上げることができるというのだ。
同書で紹介されている金融サービス会社のCapital One Financialは、こうしたアプローチを「情報ベースの戦略」と呼んでいる。また、エンターテインメント会社Harrah'sの得意能力は、カスタマー・ロイヤリティとカスタマー・サービスであり、同社は分析を用いてこれらをマーケティング手法として最適化したという。
分析における差別化
筆者は、分析・洞察の能力は結局、他社も真似できることから、それら自体では競争上の優位を持続できないという懸念を認めている。
「事実、1つ1つの洞察は、ビジネスに一時的なメリットをもたらすにすぎない。例えば、米国の航空業界での事例で注目された利益拡大のための手法、イールド・マネジメントは、当初こそAmerican Airlinesの業績を大幅に改善したが、このプロセスは今や航空業界にとって、ビジネスに不可欠なコストでしかない」(同書より引用)
そして、データを使って競争上の優位を得るための方法として、次のような例を紹介している。
「既存客と見込み客について、時間をかけながら独自のデータを収集して他社と一線を画すやり方もあれば、他社にも入手可能なデータを独自の手法で系統化、標準化して操作するやり方もある。また、プロプライエタリなアルゴリズムを開発し、意思決定の土台となる細かな分析につなげるのも1つの手だ。さらに、分析をみずからの組織独自のビジネス・プロセスに埋め込むことで競合との差別化を図っている企業もある」(同書より引用)
| DATA1:企業の分析力を5段階で判定する(Thomas H.Davenport/Jeanne G.Harris)
*資料:『Competing on Analytics:The New Science of Winning』(刊行:Harvard Business School Publishing)より引用 |
分析で成功した企業の共通点
同書では、分析力を強化しようとしている企業にとって指標になるようなポイントを多く掲載している。その1つとして同書では、分析で成功している企業の共通点を5つ挙げており、大変参考になる。以下はそれらを要約したものだ。
1. 真似されにくい
他社が使っているアプリケーションなどを真似するのは簡単だが、プロセスや企業文化を真似するのは困難である。
2. ユニークである
ゲーム/エンターテインメント業界では、Harrah'sが分析を活用し、顧客に全米各地にある同社の施設に来てもらえるようなマーケティングを行っている。だが、これはHarrah'sだからうまくいくわけで、他社、例えば、コネチカット州のFoxwoods Resort Casinoのように、施設を1カ所しか持たないような企業がこの戦略で臨むのは無理である。
3. 多くの状況に適応可能である
例えば、携帯電話事業者のSprint Nextelは、カスタマー・マーケティングにおける分析力を、従業員の獲得や保持といった人材プロセスに容易に適応させた。
4. 競合他社より優秀である
単に、情報の活用方法が他社よりもすぐれているだけで成功することがある。Capital Oneが好例だ。消費者信用情報はどの金融サービス会社でも入手できるが、同社は分析力を駆使して、潜在的に危険度の高い顧客について的確な判断を下し、業界平均を上回る業績を達成した。
5. 継続性がある
競争優位を維持するには、常に改善し再投資することで目的の変化に対応していく必要がある。例えば、保険会社のProgressiveは、同社が中高年のオートバイ運転者など新たなセグメントに参入したことを他の保険会社に気づかれるころには、すでにその市場を独占し、次の新たな市場に移行していた。
| DATA2:分析による競争力を支える4つの柱(Thomas H.Davenport/Jeanne G.Harris)
*資料:『Competing on Analytics:The New Science of Winning』(刊行:Harvard Business School Publishing)より引用 |
分析におけるCIOの役割
同書によれば、企業文化と従業員の分析行動を変革するのは、主にCEO(最高経営責任者)の責任であるが、この点についてはCIO(最高情報責任者)も力を貸すことができるという。
筆者は、米国の特殊化学製品メーカー、Quaker Chemicalの前CIO、アービン・タイラー(Irving Tyler)氏(同氏は現在、IMS HealthのCIOに就いている)が試みた、従業員にデータの分析結果と報告をメール・アラートとして送るという行為を紹介している。これは、従業員に与える情報が多いほど、彼らの問題解決能力が高まり、直感でなく客観的な情報に基づいて決断できるようになると考えたからだという。
また、CIOは、分析の専門家を1つのチームにまとめ、情報伝達の流れを整理することもできるという。同書で紹介されているのは、Procter&Gambleの例だ。同社は複数の分析チームを1つのチームに統合し、CIOの直属とした。そして、IT部門の名称も「Information & Decision Solutions(情報/意思決定ソリューション)」に変更されたという。
「言うまでもなく、分析に対するCIOの最も伝統的なアプローチは、テクノロジーを使うことである。だが、テクノロジーを使うことは必要条件であって、それだけでは十分でない。CIOがさらに重要な分析の役割を果たすには、CIOの“I”の部分、つまり情報に重点を置かなくてはならない。アナリティクスによる競争とは、情報をめぐる競争でもある。適切な情報を持っているか、その情報は本当に自社の業績を反映しているか、従業員に情報に基づいて意思決定させるにはどうすればいいのか、といった視点で見ることが大切だ」(同書より引用)
これらの問題について筆者は、単に最適なツールを購入して管理するより難しいことだが、分析で競争に勝とうというのであれば、そのやり方をマスターすることが絶対条件になると説く。
「情報指向であることは、分析の成功と密接に関係していると言っても過言ではない」(同書より引用)
| DATA3:「BIエキスパート」と認められるための11の条件(Thomas H.Davenport/Jeanne G.Harris)
*資料:『Competing on Analytics:The New Science of Winning』(刊行:Harvard Business School Publishing)より引用 |












