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【解説】
ビジネス・インテリジェンス導入に潜む「5つの落とし穴」
事例に学ぶ――「BIの導入はこうして“失敗”する」
(2008年03月11日)
落とし穴 その4
BIデータを活用するための継続的な教育が行われていない
| 写真1:米国アーカンソー州にある地域医療センターJefferson Regional Medical Centerの内部。同センターでは、BIシステムのデータをきちんと活用するために、データで使われる言葉の定義づけについて、継続的な教育を行っている |
米国アーカンソー州パインブラフにある地域医療センターJefferson Regional Medical Center(写真1)のように、BIの導入で組織内データが共有/活用されるようになったとしたら、ひとまずは成功と言えるだろう。同センターでは、管理スタッフと医療スタッフ向けに、患者の状況やスタッフの勤務状況などを迅速に検索できるWebポータル(BIシステム)を運営している。このポータルを介して、スタッフはセンター内の物資管理局から薬局に至る全部門の運営データにアクセスすることができるという。
「ただし問題は、同じデータでも、見る人によってとらえ方が異なる可能性があることだ」と語るのは、同センターの情報管理/意思決定支援担当アシスタント・バイスプレジデント、モリー・メユー(Morie Mehyou)氏だ。
アーカンソー州で4大病院の1つに数えられるJeffersonがBIシステムの導入に着手したのは6年前。当時、同センターは「患者」などの言葉を検索キーワードとして使えるようにするため、それらの定義づけを行ったという。しかし、これらの定義は時間の経過とともにあいまいになり、ユーザーによって違う解釈がなされていることが判明したのだ。
「センター内の経理担当者、看護管理者、供給管理者などは皆同じデータを見ているにもかかわらず、それぞれ別の解釈をしていた」とMehyou氏は振り返る。例えば、管理部門がある日の「患者」の数を見て、その看護にあたる医療部門の人員の数を決定したとしよう。これに対し医療スタッフは、同じ「患者」でも10人のうち9人が重症であることを理由に、より多くの人員を要求するかもしれない。また、同じ「スタッフ」でも、特定の病気の「患者」に対応できることが定義づけされていなければ、観測された日にたまたま対応可能なスタッフが不在であることを管理部門が見落とす可能性もある。
「定義づけについて継続的な教育が行われるべきだ。また、その意図と目的を明らかにすることも不可欠である。そして注意条項があれば、それも明確にする必要がある。われわれのグループは、どこかの部門のマネジャーが新しく代わるたびに、データに一貫性を持たせるよう彼らと時間をかけて話し合う。まずは直接話し合うことが重要なのだ」(同氏)
絶え間なく変わる政府/医療/金融規制も、こうした定義づけに影響を及ぼす。「新たな課題が浮上するたびに、われわれはデータを別の側面からスライスする方法を考えなければならないし、データの説明にも手を加えなければならない」とMehyou氏は話している。
落とし穴 その5
長期的視野に立ったプランニングをしない
BIに関心を示す組織の多くは、すぐ目の前に横たわる課題の解決を目指しているものだ。米国コロンビア特別区の公安および犯罪者監視を担うCourt Services and Offender Supervision Agency(CSOSA)もその1つだった。かつてCSOSAでは、部門間の実績を比較し、同区内の8つの区画にまたがる公安リソースを再編成するべく、基幹業務データを集中管理する必要に迫られていた。
CSOSAの調査/審査室担当ディレクター、カルバン・ジョンソン(Calvin Johnson)氏は、改善前の状況について、「さまざまな形式の書類があちらこちらに出回っていた」と振り返る。
「財務、調査、運営、それぞれの部門から提出されるリポートはすべて異なる形式だった。われわれは公安という仕事柄、この状況は早急に改善しなければならなかった」(同氏)
Johnson氏が率いるチームは、形式をまとめるべく行った最初の要件収集の作業で、複数のユーザー・グループから切迫した3つのニーズを挙げてもらった。「当時、いま最も困っている3つの事項をユーザーに聞いた」と同氏。その結果、約45の緊急項目が集まったが、多くは内容が重複していたため、Johnson氏のチームは最終的に5〜7項目に集約した。
「(これを基に)われわれは、ユーザーがポータル(BIシステム)を介して常時アクセスできる、迅速かつ正確なリポート・システムを開発した。リポートは毎日更新されている。(プロジェクトは)低コストで済んだが大きなROIをもたらした」(Johnson氏)
ベスト・プラクティスは採用されなかったものの、このシステムによって、CSOSAが直面していた問題のほとんどは解決されたという。「ユーザーが直ちに使えるものを提供しなければ意味がない」とJohnson氏。「彼らは見栄えのよさはあまり気にしない。最小限のものでも何かしら作ってユーザーに使ってもらうことが重要だ」(同氏)
それでも、特にITインフラのBIサポートについては、長期的視野に立ってプランニングをすることも忘れてはいけない、とJohnson氏は釘を刺す。大半のBIシステムは「導入時に想定していなかった機能を求められるはめになる」(同氏)からだ。
CSOSAのBIシステムには、すでに地理情報システム(GIS)の機能が盛り込まれているという。「われわれが扱うデータの多くは地理──すなわち、人々が住み、犯罪が起きる場所──に関連するからだ」(Johnson氏)
現在、殺人事件が発生した場合に事件担当者は、その半径約500メートル以内に居住する前科者のリストを即座に引き出すことができる。また、スタッフが特定の地域に赴くケースでは、その地域に住む前科者の氏名、住所を引き出して、任意の家庭訪問を行っているという。
「今ではなく、5年後を見据えたITアーキテクチャを開発すべきだ」とJohnson氏は結論づけている。


