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【解説】
SOA導入の「阻害要因」とそれを踏まえた「現実解」
課題を解決しうる「設計図の参照」や「ミドルアウト型アプローチ」
(2008年04月28日)
現実解となるミドルアウト型アプローチ
変化の激しいビジネスを支えるために、今日のITシステムには、変化への適応力が求められている。現在、市場に出荷されているSOA関連製品/サービスは、現実のユーザー企業のシステムの革新を支援するのには不十分な面があるかもしれない。とはいえ、本稿の前半でSOAの本質として説明した「サービスというソフトウェア部品の組み合わせによりソフトウェアを構築する」手法は、今、ITに要求されている課題に対しての有効な解決策であることは間違いない。
ものづくりにおいて、日本は現在でも世界をリードしうる高度な技術力を有している。国内の主要な工業製品である自動車は数万点の部品の集合体であり、シャーシ、サスペンション、ボディ、エンジン、トランスミッション、電子制御システム、内装と異なるモジュールが組み合わされて1つのシステムを構成している。現代の自動車製造においては、組み立て効率の向上による品質の平準化や、コスト削減のために部品の共通化、モジュール化が図られている。日本車はこのモジュール化によって達成した高い収益性と品質によって、世界市場で高い競争力を持ち、大きなシェアを確保している。このような製造業におけるモジュール化の発想と実現のためのプロセス改善は、ITによるシステム構築においても大いに参考になるはずであり、利用しない手はないと思われる。
ITにかかわらず、組織の意思決定プロセスは大きくトップダウン型とボトムアップ型に分けられる。ボトムアップ型は現場の声を反映させるという面では適切であるが、部分最適による弊害が発生するリスクがある。今日のITシステムの多くは、業務単位のタテ割りのシステムで構築されており、システム間での相互運用が困難な状況に陥りやすく、国内企業の多くのシステムはこのような状況にあると思われる。そのため、トップダウン型のアプローチによって、全社で共通のアーキテクチャを導入し、全社レベルでの最適化を図るというのは間違った考え方ではない。
| 図4:SOA導入のステップ |
しかし、上述したように、トップダウン型アプローチだけでは理想論ばかりが語られ、現実の構築や運用に適さないケースが多く見受けられる。
例えば、トヨタ自動車がグローバル市場で確固たるポジションを築き上げた要因の1つに、有名なボトムアップ型アプローチであるカイゼンと、米国・欧州の競合に先駆けてハイブリッド車を開発したようなトップダウン型の研究開発戦略が融合したミドルアウト型のアプローチが挙げられる。このミドルアウト型は、SOAベースのシステム構築においても、現実的かつ有効なアプローチと考えてよいだろう(図4)。
SOAの導入は決して1つのアプローチ、1つの技術、1社のベンダーによるものではなく、各企業が自社の現状と将来を考え、複数のアプローチや技術を組み合わせて導入を行うことが現実的であると考える。また、SOAは導入すれば問題が解決するという特効薬ではなく、継続的なカイゼンと管理が必要なものである。IT部門はビジネスの成長や変革を支えるために、どのようにSOAを活用するかを考え、SOAに関するさまざまな情報収集とテストを継続し、より迅速で低コストなアプリケーション開発と運用管理の実現とITの戦略的活用の拡大に取り組むことを推奨したい。
SOA Topics
企業のSOAへの支出は増加も、普及拡大の勢いにかげり──AMR調査より
「ユーザー側の導入目的が明確にならなければ、今の投資機運は続かないかもしれない」と担当アナリスト
Galen Gruman/InfoWorld米国版
米国のIT市場調査会社AMR Researchは今年2月、米国、ドイツ、中国のユーザー企業405社を対象に実施したSOAのユーザー動向調査の結果を発表した。それによると、2007年の1年間でSOAに投資した企業の数は3国とも大幅に増加し、平均年間支出額は約140万米国ドルに上ったという。
同調査によると、現在、SOAはさまざまな業界で導入が進んでおり、ITプロジェクトにおいてSOAを採用したことが少なくとも1回はあると答えた企業の割合は、小売業界が59%、流通業界が58%、電気通信業界が54%、金融サービス業界が42%であった。なお、SOAに対する支出額が最も多いのは金融サービス業界で、100万ドル以上を支出している企業の割合が63%を占めた。次いで多かったのは小売業界の30%だ。
しかしながら、AMRの担当アナリスト、イアン・フィンドレー(Ian Findley)氏は、「2008年も巨額の資金がSOAに投入されると思うが、その大半はむだに終わってしまうだろう」とコメントしている。調査の結果からは、ほとんどの企業がSOA投資のメリットをつかみかねているという実態が浮き彫りになっており、今後も長期にわたってSOAへの投資が継続されるかどうかは予測できないというのだ。ベンダー各社はSOAのさまざまなメリットを挙げて喧伝するが、ユーザー側の導入目的がはっきりしない以上、現在の投資機運が持続するかどうかはわからない、というのが同氏の見方だ。
SOAに投資する動機としては、「重要な新技術の分野でITの技能を確保するため(16%)」「個々のプロジェクトの要求条件に対応できる最良の技術だから(18%)」「再利用によるITコストの削減(17%)」「コストとリスクを抑えつつシステムを迅速に変更できる(22%)」「システム・アーキテクチャを近代化できる(14%)」などが挙げられた。
Findley氏は、SOAの利点が論理的かつ一貫性のある形で明確化されないかぎり、いち早くSOAを導入したユーザー(金融サービス、電気通信、政府機関など、アーキテクチャの価値を重視する傾向が強く、利点を定量化できなくてもSOAを導入する意思がある企業や団体)以外には普及が拡大しないのではないかと懸念している。
また、Findley氏は、ベンダー各社がSOAの利点として強調している、コードの再利用性にも疑問を投げかけている。同氏は、「(SOAで構築したのにもかかわらず)、Aというプロジェクトのために開発されたコードが、Bという別のプロジェクトで使えないケースが少なくない」と指摘した。そのうえで、「再利用性という点にばかり目を奪われていると、SOAの本質を見逃しかねない」と注意を促している。
早期導入企業の多くがSOAの実質的な利点として、俊敏性向上を挙げているという。この文脈での俊敏性とは、ITへの基本的なアプローチとしてSOAを導入したことで新たなプロジェクトを迅速に進めることができるようになり、ITプロジェクトの効果がすぐに表れるようになるということを意味している。「コードの再利用が可能になったことでプロジェクトがたまたま迅速化されたことではなく、SOAの導入によってもたらされたITの開発と管理全般に対する発想の転換こそが本当のメリットなのだ」(Findley氏)
加えて同氏は、SOA導入の動機に関係なく、多くのユーザーが俊敏性の向上を認めているとしたうえで、「SOAの価値を認めないユーザーは、今やきわめて少ない」と語った。


