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【解説】
失敗しないSaaS運用の極意――カギを握るのは「SLA」

新時代アプリケーションの運用管理を学ぶ

(2008年07月17日)

大規模企業の本格参入がSLAレベルを引き上げる

 SaaSにおけるSLAの課題は、多くの大規模企業がSaaSを積極的に導入することで、徐々に解消される可能性がある。

 米国のForrester Researchでアナリストを務めるリズ・ハーバート(Liz Herbert)氏によると、これまでSaaSの導入を小規模な事業部門や部署ごとに限定してきた大規模企業が、最近その範囲を広げ、全社的に導入する傾向にあるという。その結果、ソフトウェア購入の経験がほとんどないビジネス・マネジャーがSaaSプロバイダーとの交渉を行うようになり、現在ではIT部門や資材調達部門も巻き込んで、ユーザー企業にとって好条件の保証をSaaSプロバイダーから勝ち取っているというのだ。

 ホステッド・アプリケーションを導入する大規模企業向けのコンサルティングを行っている米国Bluewolfの共同創設者であるエリック・ベリッジ(Eric Berridge)氏は、「SaaSプロバイダーが本腰を入れてエンタープライズ市場に参入しようとすれば、『説得力のないSLAは通用しない』というユーザー企業の声を無視できなくなる」と指摘し、次のような見解を示す。

 「Google Appsが大規模な企業ユーザーを獲得するためには、SLAのカバー範囲をGmail以外にも広げる必要がある。Google Appsは大規模企業を対象にするサービスとしては、12カ月〜24カ月遅れている」

 ちなみに、BluewolfもGoogle Appsを導入しているGoogleのパートナー・ベンダーである。
 すでにSaaSの利用が始まっているのは、オフィス・アプリケーション、メール、CRM、プロジェクト管理、人事業務といった分野のアプリケーションである。一方、株式取引システムやPOSシステムなど、ダウンタイムが命取りになるようなバックエンドの基幹アプリケーションには、あまり利用されていない。将来的にSaaSがこうした基幹アプリケーション分野で利用されるようになれば、SLAも充実するはずだ。Berridge氏は、「SaaSが基幹アプリケーション分野に本格的に進出すれば、まったく新しいタイプのSLAが登場するだろう」と述べている。

 Kaplan氏も、「SaaSプロバイダーにとって高い収益率を期待できるユーザー企業からの要望や、SaaSプロバイダーどうしの競争、そして機能やサービスの追加が容易であるというホステッド・アプリケーションの特性が、SaaS市場を進化させるだろう」と語る。

Side Story
大企業の7割がSaaSを選択――フォーチュン500企業の幹部100名への調査で判明

C.G. Lynch/CIO米国版

 企業の間でSaaS(Software as a Service)が急速に普及している実態が、米国の調査会社Kelton Researchの調査により明らかになった。同調査によると、大企業の約73%がすでにSaaSを導入しているか、もしくは18カ月以内に導入する予定だという。

 同調査は、フォーチュン500企業の幹部約100名を対象に行われた。回答者はIT関連のバックグラウンドを持つ人が大半であったが、中には一般的なビジネス部門出身者も含まれていたと、同調査を主導したKelton Researchのエグゼクティブ・ディレクター、ネイサン・リヒター(Nathan Richter)氏は説明した。

 IT部門出身と非IT部門出身の幹部の間に回答の違いがさほど見られなかったことから、SaaSが企業におけるIT利用のあり方を大きく変化させていると、Richter氏は指摘している。すなわち、SaaSに詳しいIT部門に限らず、あらゆる部門が何らかのアプリケーションやテクノロジーを採用する際に、自主的にSaaSでの導入を選択しつつあるのだという。

 米国のコンサルティング会社Acumen SolutionsのCMO(最高マーケティング責任者)、ドニタ・プラカシュ(Donita Prakash)氏は、「2年前、SaaSはまだ世に出たばかりだったが、今では業務ソフトウェアを自前で運用する代わりに、SaaSを採用する企業が増えている」と語った。

 Prakash氏によると、SaaSで導入されるソフトウェアの大半がCRM製品であるという。米国Salesforce.comのオンデマンドCRM「Salesforce」は、その代表的な製品だ。一方、最近Salesforceとの連携強化を図った「Google Apps」に代表される生産性ソフトウェア(アプリケーション・スイート)に関しては、比較的ゆっくりと導入が進んでいるという。

 企業は従来、時間とともに減価償却される一度限りのコストを支払ってソフトウェアを購入してきた。しかし、SaaSは基本的に1カ月もしくは1年分のソフトウェア使用料金を支払う「サブスクリプション方式」を採っている。調査結果によると、ソフトウェアのサブスクリプション購入に抵抗があるとした回答者は21%ほどで、企業のほとんどがサブスクリプション・モデルに不安を感じていないことが明らかになった。

 また調査結果は、SaaSの爆発的な普及を促した主要因として、ベンダーが製品を市場投入するまでの時間を短縮できる点と、投入した製品のメンテナンスが簡単である点を挙げている。SaaSであれば、ソフトウェアを提供するベンダーは、アップデートを滞りなく行うことができる。IT部門やユーザー自身が手作業でアップグレードをしなければならない「インストール方式」のソフトウェアとは、この点が大きく異なる。

 さらに、価格の安さもSaaSの普及に大きく貢献したと、Keltonは分析する。同社によると、サブスクリプション方式を採るSaaS製品の大部分は、インストール方式の製品より安価だという。SaaSにおいては、社員がソフトウェアを使った分だけ料金を支払えばよいうえに、社員がソフトウェアを使わなくなった場合、管理者はいつでもサブスクリプション(および支払い)を止めることができるのだ。

 とは言え、SaaS導入にあたって企業が不安と考える点もあるようだ。調査結果によると、すでにインストールして使用している業務用アプリケーションと、SaaSで導入した製品がきちんと統合されるかどうかを懸念する回答者が、およそ半数(56%)に上った。また、SaaSを利用する場合、SaaSプロバイダー側で顧客のデータをホスティングするのが一般的であるため、自社のファイアウォールに守られていないデータの安全性を心配する声も多かった(62%)。


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