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2007 Officeの文書フォーマット「OOXML」を正しく知る
XMLは、これまでのOffice利用にまつわる課題を解決しうるか
(2006年10月13日)
次期Officeの「2007 Microsoft Office system」(2007 Office)では、ファイル・フォーマットがXMLベースの「Office Open XML File Formats」(OOXML)になるという大きな変更がある。だが、多くのユーザーにとってWordやExcelのファイル・フォーマットは、通常は意識することのない「空気のような存在」だろう。いまさらファイル・フォーマットが変わることで、何かメリットがあるのだろうかと疑問に思う人もいるかもしれない。しかし、OOXMLは、これまでのOffice利用において生じていた問題を解決するために、生まれるべくして生まれたものであると言えるのだ。本稿では、このOOXMLを正しく知ってもらうために、ライバルと見なされている「Open Document Format for Office Applications」(ODF)との比較を交えながら解説する。
川俣 晶
ピーデー
次期Officeでの利用にとどまらない標準仕様
最初に、「Office Open XML File Formats」(以下、OOXML)の概略を説明しておきたい。OOXMLは、XML(Extensible Markup Language)をベースに開発された、オフィス・スイート向けのファイル・フォーマットであり、「2007 Microsoft Office System」(以下、2007 Office)においては「Word 2007」「Excel 2007」「PowerPoint 2007」の3つのアプリケーションで採用される。
これらを使って(現在は2007 Officeのベータ2を利用可能)ファイルを保存すれば、その拡張子が変更されていることがすぐにわかるだろう。われわれになじみが深い「.doc」「.xls」「.ppt」という拡張子が、それぞれ末尾に“x”が付いた「.docx」「.xlsx」「.pptx」となっているのだ。
拡張子に関しては、大きな変更点がもう1つある。Officeには、定型的な作業の手順をあらかじめ定義して自動実行させるマクロ機能がある。この機能は便利な反面、悪用されるおそれがある。この機能を悪用したのが、何者かがファイルの破壊活動や自己増殖を行うマクロをOfficeファイルに仕込む、いわゆるマクロ・ウイルスだ。OOXMLでは、マクロを実行可能なファイルと実行不可能なファイルが拡張子で区別される。前述の“x”が付いた拡張子はマクロを実行できないファイルのものであり、マクロを実行できるファイルの拡張子は、“x”の代わりに“m”が付き、「.docm」「.xlsm」「.pptm」となる。このように、OOXMLでは、拡張子だけでマクロ実行の可否を判断できるので、マクロ・ウイルスを誤って実行してしまうリスクを減らせるだろう。
| 画面1:「Ecma TC45 OOXML Standard - Draft 1.3」。このファイル自体にOOXMLフォーマットが用いられている(ほかにPDF版も提供) |
機能や見た目以外でOOXMLが従来のファイル・フォーマットと大きく異なる点は、マイクロソフト独自の仕様ではなく、ECMA(European Computer Manufacturer's Association:欧州電子計算機工業会)で標準化が進められているということだ。ECMAは、2006年5月18日に初のOOXMLドラフト仕様となるドラフト1.3を発表し、現在、この仕様書の「Ecma TC45 OOXML Standard - Draft 1.3」(画面1)を同団体のWebサイトで公開している。ちなみに「OOXML」という略称は、マイクロソフトがECMAに提案したときには用いられていなかったが、このドラフト仕様から使われるようになった。
ECMAという標準化団体は、ISOやJISに比べると、日本における認知度が低い。しかし、多くのWebブラウザにスクリプト言語として実装されているJavaScriptは、「ECMAScript(ECMA-262)」としてECMAが標準化したものであり、日常的にインターネットを利用しているわれわれとは、決して縁が浅いわけではないのである。コンピュータやインターネットの標準仕様を定める団体として、ISOやW3C、IETF、OASISと並ぶほどの影響力を持っていると言っても過言ではないだろう。
また、マイクロソフトは、OOXMLのライセンスに対して「不起訴契約」というアプローチを取ると表明している。これによって同社は、営利企業を含むだれもが、制限を課されることなく、このファイル・フォーマットを永続的に利用できると確約しているのだ。
このようにOOXMLは、単に2007 Officeで採用されるファイル・フォーマットというだけではなく、公共性のあるコミュニケーション・ツールとして、開発されたものなのである。
フォーマットの刷新に対する潜在的なニーズ
なぜ、次期Officeでファイル・フォーマットが変更される必要があるのだろうか。それを知るためには、従来のファイル・フォーマットにおいて生じていた問題に目を向けなければならない。OOXMLは、それらの問題を解決するために生まれてきたものだからだ。
まず、従来のファイル・フォーマットには、Officeのバージョンアップによって互換性が失われる可能性があるという問題が存在する。
また、何らかの情報を共有するために、WordやExcelのファイルをメールに添付することは少なくないだろうが、ワープロや表計算ソフトによる作業を行わない人であれば、Officeを持っていないのは珍しいことではない。もちろん、その場合は添付ファイルを見ることができない。このように専用アプリケーションでなければ利用できないファイル・フォーマットは、情報共有には適していないと言える。
バイナリ・ファイルという点が、問題になることもある。ファイル内のどこにどのような情報が記載されているのかがわかれば、そのファイルを活用するためのプログラムの開発が容易になる。しかし、バイナリ・ファイルでは、ファイル内容の抽出が行いにくいのだ。
なお、現在でも、Officeファイルを他のプログラムから操作できるようにするために、Officeを「COMオブジェクト」というプログラム部品と見なす「オートメーション」機能が用意されている。しかし、この機能にしてもOfficeがインストールされていないPCでは利用できない。
ほかにも、長年Officeを使い続けることで生じてくる問題がある。日々蓄積されるOfficeファイル群は、あとになって活用できれば有益な情報資産となりうるものだ。しかし、実際に活用できているのかというと、必ずしもそうではない。古いバージョンのOfficeで作成したファイルは、開けないことがあり、開けても内容を完全に再現できないことがある。また、バージョンが統一されていない膨大なファイル群は検索する際にも不便である。検索ツールがサポートしているソフトウェアのバージョンが限られていれば、検索可能なファイルとそうではないものが混在してしまうからだ。
そして、将来においても、そのファイルを開くことができるとは限らない。これは、決して机上の空論ではない。「ユーカラ」や「JET-8801」といった、今では話題になることもないPC用ワープロ黎明期のアプリケーションで作成したファイルの大多数は、おそらく現在では、開くことさえ簡単ではないだろう。しかし、開けないからといって、そのファイルが無価値だというわけではないのである。
以上のように従来のOfficeには、ファイル・フォーマットに起因するさまざまな問題がある。言いかえれば、これらを解決したいという潜在的なニーズが常に存在していたことになる。


