【 ここから本文 】

キャリアアップ

ソーシャルブックマークに登録 : Yahoo!ブックマークに登録 はてなブックマークに登録 del.icio.usに登録 newsing it!に登録 Buzzurlにブックマーク livedoorクリップに登録 Slashdotにタレコむ イザ!ブックマークに登録 Twitterでつぶやく
print 印刷用ページの表示


【解説】
実態調査に見るITエンジニアの“現実”と“仕事観”――3人に1人が転職願望

人材育成のカギは労働環境の改善と社外交流の推進にあり

(2008年06月10日)

前のページへ < 12345678910| 

天才プログラマーの仕事観

 2007年1月から2月にかけて、情報処理推進機構(IPA)の未踏ソフトウェア創造事業で「天才プログラマー」と認定された技術者5人、認定は受けていないがそれにふさわしい実力を備えた技術者1人の計6人に、ひとり当たり90分から120分の聞き取り調査を行った。

 内訳は、ベンチャー企業経営者が3人、ベンチャー企業社員が2人、博士課程学生が1人となっている。生まれは1982年が3人、1976年が1人、1975年が1人、1965年が1人である。年齢は17歳の開きがあるが、仕事に関する考え方や価値観に共通点が多いのが注目される。

 次の10項目は、天才プログラマー6人全員に共通する特徴である。

【1】 小学校や中学校のころからゲームやコンピュータに強い興味を持っていた

 最年長者でもコンピュータとの出会いは小学校の6年生のときであり、父親が購入してきたボード・コンピュータに触れたという。コンピュータの技術進歩によって小・中学校時代に接触したコンピュータ技術には大きな違いがあるが、幼いころからコンピュータやゲームに興味を抱いていた点が6人に共通している。

【2】 プログラミングを始めるきっかけとして、親や兄弟からの直接的な影響はあまり見られない。ただし、コンピュータやコンピュータ雑誌を購入してもらうなど、プログラミングへの関心を伸ばしてくれる家庭環境に育った

 父親が情報処理の研究者であるという人が1人いたほか、家族がコンピュータの専門家である人はいなかった。むしろ親がコンピュータに興味がなくても、子供にコンピュータやIT雑誌を買い与えて子供の興味を伸ばそうとした家庭が多い点が注目される。

【3】 大学に入るまでは、学校の先生や友人の影響はそれほど大きくない。むしろコンピュータ雑誌や本を通じて独学で技術を身につけた

 最年長者が典型的で、書物で知識を身につけている。

【4】 大学は情報系の学部を選択している。しかし、大学時代に教員や友人から受けた影響はそれぞれに異なっている

 5人は高校までにコンピュータへの興味が深まり、大学では情報系を選択している。情報系へ進学しなかった1人を含めて6人全員が、大学は自分の関心をさらに深めるための勉強をする場所と見なしている。一方、就職のための学部選びや勉強には関心がなく、就職活動やキャリア・プランへの意識はむしろ低い。

【5】 6人とも大企業に就職するという考えを持ったことは一度もない

 職業について大学時代に周囲から受けた影響は異なるものの、インタビュー協力者は全員大企業への就職活動を行っていない。むしろ、好きなプログラミングを続けられる環境であることを仕事の選択でも重視している。

【6】 プログラム開発は「会社のため」ではなく、「自分のため」「社会のため」という意識が強い

 「自分のため」とは、「こういうことができたら便利だ」という自らの必要性がプログラム開発の出発点となっていることを意味している。それを他の人が使って喜んでもらうことに、開発者としての喜びを見出している。

 プログラムを開発する理由としては、「こういうプログラムがあると便利だと感じたので自分のために開発した」、「開発したプログラムをオープンソースとして公開し、他者から『便利だ』『いい仕事をしてくれた』という反応が返ってくることにやりがいと充実感を感じている」というものがあった。こうした外部からの反応を「社会のため」に役立っているという手ごたえと受け止めているようだ。

 このような感覚は、会社に所属しているかいないかに関わらず6人に共通している。会社満足度よりも仕事満足度を重視しているのが特徴である。

【7】 オープンソース・コミュニティで評価されることに喜びを感じ、インターネットでのコミュニティを通じて国内外の技術者との横の交流を大切にしている

 一般的に互いの顔が見えないインターネットでのコミュニケーションには警戒や不安を抱く人が多い。しかし、インタビュー協力者に共通しているのはネット・コミュニケーションの負の側面も十分に経験し承知しているが、それでもネット・コミュニケーションの可能性に期待をかけ、実際にコミュニケーションに努力している点にある。

 その結果、レベルの高い議論がネット・コミュニティで展開され、機能の改善やプログラム環境の発展に結び付いている。開発者同士、開発者と利用者との深いコミュニケーションを可能にする場としインターネットの可能性を重視している。

【8】 仕事の環境として一番重視するのは、時間を自由に使えるかどうかという点にある。働く時間と場所がフレキシブルでないと、創造的な仕事はできないと考える

 柔軟な時間の使い方は6人全員が特に強調した点である。逆に言えば、この点へのこだわりがとても強いことが大企業への就職に魅力を感じない理由となっているように思われる。

【9】 日本でもベンチャー企業が資金調達を行う環境は整ってきたが、一方で人材確保が難しいという問題は解決していないと感じている

 ベンチャー企業の経営者は、資金調達より人材確保が最大の問題という意識が強い。その原因として、日本では大企業が優秀な人材を囲い込んでいるという意見があった。

【10】 未踏ソフトウェア創造事業の継続を希望している。ソフトウェア開発への資金的な助成はもちろんありがたいが、むしろここで得られた人脈がとても貴重な財産になっていると感じている

 優秀な開発者同士がインターネットでコミュニケーションを深めていたとしても、それが実際に会って交流を深めるまでには発展していない。6人は決して社交性に乏しいわけではなく、インタビューにも誠実に回答してくれる礼儀正しい好青年ばかりだった。しかし、プログラミングに集中する時間をとるためには「静かな環境」が必要と考えており、人と会うことが仕事や生活の中心となっている人々とはライフスタイルが異なる。未踏ソフトウェア創造事業はそのようなタイプの若者を互いに結び付ける場となったようだ。

                        *  *  *

 インタビューに協力してくれた天才プログラマーたちは、パッケージ・ソフトやプログラミング言語の開発に情熱を注ぎ、独力で自らの仕事を発展させようとしている。受託開発のITエンジニアが圧倒的多数を占める日本において、また優秀な若者の多くがグーグルをはじめとする外資系企業をめざす傾向が強くなってきたなかで、彼らはまったく新しいタイプのプログラマー像を見せてくれると言える。

 なお、6人の天才プログラマーの中で最年長者は、Rubyを開発したまつもとゆきひろ氏である。同氏へのインタビュー記事(http://www.glocom.ac.jp/j/chijo/110/index.html)をあわせて参照いただければ幸いである。

(Computerworld.jp)


前のページへ < 12345678910| 



関連記事

▲ページの先頭へ戻る


キャッチアップ

不況時こそ優秀な「エンタープライズ・アーキテクト」の存在が不可欠――フォレスターが主張

「IT投資ではアーキテクトが経営陣をリードすべき」と提言

“使いにくい”就職支援サイトの実態――フォレスターの調査で浮き彫りに

「求職者、求人企業の双方にとって悪影響をもたらす」

米国の大手ITベンダーCEO、報酬はどのぐらい?

業績好調で報酬がアップしたCEO、業績好調なのに報酬がダウンしたCEO

今後求められるのは、「ワイヤレス関連スキル」を持つ技術者

すべての地域および業界で最重要のITスキルに

熟練したITワーカーの不足に悩む米国IT業界

防衛業界と並び、深刻な人材難が続く

2008年のオープンソース動向を読む

M&Aが活発化するなか、人材不足はさらに深刻に

熟練したITワーカーの不足に悩む米国IT業界

防衛業界と並び、深刻な人材難が続く

「国際化と技術革新によって仕事の意味が変わりつつある」――マイクロソフト幹部が提言

加速的に増加する「新たな仕事環境」への対応の重要性を強調

【CIOコネクト調査】スキル不足が企業ITの進化を妨げている

求められる新時代のプロジェクト・リーダーとは

オープンソースが「開発系」で強い理由

開発者とOSSの良好な関係を生むエコ・システム

最先端ITの“夢”と“現実”――企業ITのあり方を変える?!

超伝導/自律/DC電源/相変化/量子/TIA ……

【ガートナー調査】日本のCIO、最優先課題は「人材育成」と「セキュリティ技術」

悩みは経営者の期待と現場の課題とのギャップ

COBOLは死せず

COBOLプログラマーを育成・確保する秘訣

【ガートナー調査】IT部門に必要なのはビジネス・センス

1,400人のCIO調査で明らかに

2010年の企業ITリーダーに求められるスキルとは

“バーサタイリスト”が企業ITを牽引する時代に

「優秀なIT部門」を維持するために

激しい雇用競争の中ですぐれた人材を探し、確保する方法

「全社横断型の戦略部門」への転換がIT部門の未来を切り開く

企業の“DNA”に沿った事業戦略をITで具現化するという「大役」を果たすために

適切な要求仕様を仕上げるための8つの秘訣

“曖昧さ”がコストを肥大化させる

ITスタッフが取得すべきセキュリティ認定資格はこれだ!

情報セキュリティに関する各種認定資格をセキュリティ専任スタッフの育成に活用する

ITワーカー受難の時代。サバイバル・レースを勝ち抜くには

IT/IS部門に求められる「新しい役割」を探る

ニッポンのITの将来を担うか? IPAの「未踏ソフトウェア創造事業」

「天才プログラマー」の発掘・育成計画の実態と成果に迫る

キーパーソン

「イノベーション」で生存競争を勝ち抜け!

『ライフサイクルイノベーション』の著者、ジェフリー・ムーア氏が語る「イノベーション戦略」

グーグル幹部、R&Dセンターの国際展開構想を語る

「グーグルは、R&Dもグローバルに考える」

ユーザビリティの第一人者が語るWebデザインのベスト・プラクティス

「まずはユーザー評価の実践を!」

「ベンダー・ロックインを回避し、公平な競争社会を」

IPA OSSセンター長の田代氏が強調

マイクロソフトのバルマー氏が明言、「SaaSの普及はIT関連の雇用喪失にはつながらない!」

ITプロは新たなスキルを習得する必要があるとの“ゲキ”も

「FLOSSのインパクトに今から備えよ」

LinuxWorldでグーグルのスタイン氏が熱弁

【VIDEOインタビュー】
Linuxの“生みの親”リーナス・トーバルス氏が語る

Linuxの魅力、Vistaのネック

「OSSコミュニティの仕事はソフトだけでは終わらない」

“コモンズ”のレッシグ氏がLinuxイベントで強調

連載

Weekly Ranking

集計期間:11/25〜12/01



Computerworld Global
米国
英国
中国
ドイツ
オーストラリア
シンガポール
その他の国