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【解説】
実態調査に見るITエンジニアの“現実”と“仕事観”――3人に1人が転職願望
人材育成のカギは労働環境の改善と社外交流の推進にあり
(2008年06月10日)
IT人材育成と産業創造のために
IT人材の育成はいまや国家的課題となっている。経済産業省は、ソフトウェア技術者のスキルを客観的に評価しキャリア・パスのモデルを示した「ITスキル標準」の普及に努めている。総務省でも日本の情報通信産業の国際競争力を高める必要があるという観点から、人材育成の重要性を強調している。
経団連は2006年6月に「産学官連携による高度な情報通信人材の育成強化に向けて」と題する提言を発表し、トップ・レベルの「高度ICT(情報通信技術)人材」の新卒者の輩出が急務であると提案した。そして、情報処理学会や情報システム学会においても、技術者の人材育成に関しては活発な議論が展開されている。
国、経済界、学界が一斉にこの課題への取り組みを強化している背景には、ITエンジニアの不足や技術力の低下が進めば、第1にIT産業はもとより日本の産業全般の競争力に影響を及ぼす、第2に社会や産業のインフラとなっている情報システムの信頼性を確保できなくなる、という大きく分けて2つの危機感があるためと考えられる。
われわれの調査結果から問題解決を探ると、まずはIT企業が労働時間・給与・職場環境などの諸条件を改善する経営努力を行う、そしてオープンソース・コミュニティへの自由な参加や企業の枠を越えた交流を活発化させるなどの制度改革を企業内・業界内で進める、ということになる。
すでに、大手IT企業の中では、勤務時間中は会社の業務で開発に携わり、夜自宅に帰ってからオープンソース・コミュニティで活躍するITエンジニアが数多く誕生するようになっている。個人として社外で実力を認められたITエンジニアを、会社はどのように処遇していくか。それが大手IT企業の人事部門の大きな課題になっている。
むろん、人事部門が社員のこのような社外活動をマイナスに評価するようでは、優秀な人材を失ってしまうことにもなりかねない。
また、天才プログラマーたちが起業のための仲間づくりをしやすい環境の整備も大切である。成功した海外IT企業の創業社長のキャリアを調べてみると、ほとんどが共同創業者といっしょに会社を興したことがわかる。会社が成長するにつれてどちらか一方が去っていくケースが多いが、IT分野では仲間といっしょに起業するメリットが予想以上に大きいことを歴史は証明している。
独立志向の強い優秀なITエンジニアにとっては、現在の日本は資金集めよりも仲間集めに苦労する状況にある。おそらく、日本ではベンチャー・キャピタルの充実だけでなく、むしろそれ以上に大企業の制度改革、例えば、個人の創業を人的にも支援する、創業間もないベンチャー企業への社員の出向を認める、といった取り組みがこの問題解決にとって有効だと思われる。
日本のソフトウェア産業は、ITエンジニアを企業内に囲い込んで集団で品質の高いカスタムメイド・プログラムを開発してきた歴史がある。また、IT産業に限らず、伝統的に組み込みソフトウェアを得意としてきた。ただ、今後は得意分野だけに固執するのではなく、個人の能力を生かすような新ソフトウェア産業の創造を目指すべきだろう。
というのは、オフショアリングによって国内のITエンジニアの雇用が減少し、囲い込んだはずの得意技術がしだいに空洞化していくおそれがあるからだ。そのためには、プログラミング言語などアーキテクチャ領域の技術、パッケージ・ソフト、Web上の新サービスなど、多様な技術開発を促進させることが重要である。
大手IT企業を頂点とする垂直的かつ硬直的な企業間取引にとらわれず、天才プログラマーと大企業との連携など、多様で柔軟な人材交流を通じた水平連携の仕組みを作ることを通じて、新しいITビジネスを創造していくことが課題となるだろう。
インターネット・アンケートの調査結果から明らかなように、若い世代のITエンジニアたちは、転職願望にしても、オープンソース・コミュニティへの参加欲求にしても、会社の枠にしばられずに働くことを望んでいる。
以下、インターネット・アンケート調査および天才プログラマーへのインタビュー調査の結果を紹介する。
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