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【解説】
クラウド・コンピューティングのインパクト[前編:定義と関連技術]

ユーザー/IT部門はどうとらえ、備えるべきか

(2008年08月29日)

すべてのITリソースはインターネットの雲(cloud)の向こう側から提供され、ユーザーはその際、リソースの構造や格納場所などをまったく意識することがない――クラウド・コンピューティングというコンピューティング・モデルはおおむねこのような説明がなされる。クラウドは別段新しいものではなく、企業コンピューティングの世界においては、SaaSやグリッド、ユーティリティ・コンピューティングなどクラウドの考え方に沿った、ないしは類似したモデルがすでに登場済みである。今回お届けする[前編]で、これら既存のモデルとの比較によってクラウド・コンピューティングを定義し、後編では、ユーザー企業やIT業界の各層に与える影響の分析を行い、このパラダイムの本質に迫りたい。

栗原 潔
テックバイザージェイピー 代表/金沢工業大学 客員教授

クラウド・コンピューティングとは

 クラウド・コンピューティング(注1)という言葉に注目が集まっている。端的に言うと、インターネット上に存在するサーバ上でほとんどの処理が行われ、利用者はそれらのサーバ群を直接意識することなく、提供されるサービスを享受できるというコンピューティング・モデルである。利用者には「cloud:雲」の中身はわからない(知る必要もない)が、そこから有益なサービスが降ってくるというイメージだ(図1)。


図1:クラウド・コンピューティングの概念

 このクラウド・コンピューティングは、米国GoogleのCEO、エリック・シュミット(Eric Schmidt)氏が2006年8月に行った講演で使い始めた言葉だと言われている。ただし、古くからインターネットを図示するときによく雲の絵が用いられてきたので、2006年の夏以前から、この言い回しが使われていた可能性は高い。

クラウド・コンピューティングとその関連用語

 登場したばかりのあらゆるバズワードと同様、現在、クラウド・コンピューティングという言葉の定義には混乱が見られる。インターネット上のサーバ中心型のシステム形態を表すという点については議論の余地はないが、人によりそのニュアンスはさまざまだ。また、このようなネットワーク中心型コンピューティングの概念を表す言葉は、クラウド・コンピューティングが初めてというわけではない。そこで、いくつかの関連用語とクラウド・コンピューティングとの相違を検討することで、その定義を明確にしてみたい。

クラウド・コンピューティングとSaaS

 あらためて説明するまでもないが、SaaS(Software as a Service)とは、アプリケーション・ソフトウェアの機能をネットワーク経由でユーザーに提供するコンピューティング・モデル(あるいは、ビジネス・モデル)のことである。ユーザーがソフトウェアを自社の施設内のコンピュータに導入したのち利用するオンプレミス(on-premise)型と対照をなすモデルと言える。

 SaaSはクラウド・コンピューティングの主要な応用例の1つだ。SaaSとクラウド・コンピューティングを同義とする見方もあるようだが、これは正確ではないだろう。クラウド・コンピューティングには、SaaSのようにアプリケーション階層まで含めた全階層をホスティングで提供する場合だけではなく、ユーザーの独自アプリケーションの開発・実行プラットフォームを提供する形態(PaaS:Platform as a Serviceと呼ばれる。関連記事)や、ストレージなどのハードウェア・リソースだけを提供する形態(リソース・オンデマンドと呼ばれることもある)もあるからだ。

注1:「クラウドソーシング」という言葉も注目を集めているが、こちらのクラウドは「crowd:群衆」であり、カタカナ表記では区別がつかなくなってしまうので注意が必要だ


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