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[世界]
IT業界を揺るがした2006年の10大ニュース

(2006年12月13日)

 今年は、大規模な提携が次々と発表されたが、いずれもIT業界の再編が近いことをうかがわせるものばかりであり、インターネットのマルチメディア化の進展を予感させるものが多かった。

 なかでも、マイクロソフトの新世代デスクトップOS、Vistaには注目が集まった。同製品は当初のスケジュールから提供が大幅に遅れ、ようやくデビューを果たしたものの、大量の製品を一斉に出荷するという従来の方法で市場に投入される最後のデスクトップOSになるとの見方も出ている。

 また、大手ソフトウェア・ベンダー各社が相次いでLinuxのサポートを発表したほか、PCメーカーが特定のチップに固執しない姿勢を示したことで、オープンソースとチップ業界は大きく揺れ動いた。

 2006年は、IT業界が大きく変化する過渡期とも言える年であり、巨大IT企業が、ポストPC時代を模索しながら地球規模の新たな競争に勝ち残る態勢を整えた年でもあった。なお、ここで取り上げるニュースの順序は、そのニュースの重要性を反映しているわけではない。

HPのスパイ・スキャンダル──広がる波紋とその影響

 今年9月、ヒューレット・パッカード(HP)の役員会での確執が新聞紙面をにぎわせ、パトリシア・ダン会長は、ついに辞任に追い込まれた。情報(前CEO、カーリー・フィオリーナ氏の追放に関する論争も含まれる)をマスコミに漏洩した役員会メンバーを突きとめるために、同氏が行った調査手法を巡って役員会は紛糾した。

 同社は、この調査で「プリテキスティング」(他人になりすまして情報を取得する)手法を使用した。この行為により、ダン氏と法律顧問のケビン・ハンサカー氏、および外部の探偵が刑事責任を問われることになった。

 しかし、ユーザーはそれほど動揺していない。HPのCEOで、新たに会長を兼任することになったマーク・ハード氏の下、HPはトップPCメーカーのデルを追い抜き、売上高でも最大のIT企業であるIBMを上回ったからだ。

 とはいえ、スキャンダルの影響は広がっている。米国議会はプリテキスティングを連邦犯罪とする法律の整備に動き始めており、コーポレート・ガバナンスの監査強化も叫ばれている。

マイクロソフトがノベルと提携──取り込むか? 食い尽くすか?

 今年11月、マイクロソフトは、Linuxディストリビューターであるノベルとの提携を発表し、オープンソースの世界に動揺が広がった。マイクロソフトは、ノベルのSuse Linuxの販売とサポートを担当し、相互運用性を確保することに努めるほか、今後Suseユーザーとディベロッパーを著作権侵害で訴えないと約束した。

 業界関係者は、訴訟による報復から一部のユーザーだけを保護することで、マイクロソフトがオープンソース・コミュニティにくさびを打ち込もうとしていると指摘する。オープンソースの世界では、10月にオラクルがRed Hat Linuxへの完全なサポートを提供すると発表したことで、すでにかなりの動揺が生まれていた。レッドハットのビジネス・モデルが悪影響を受けるのではないかという懸念が業界関係者の間に広がったのだ。

 しかし、マイクロソフトがLinuxを取り込む姿勢に転じたのは、だれもオープンソースを無視することができなくなったということを示すあかしでもある。同社のCEO、スティーブ・バルマー氏は、ノベルとの提携を促したのはユーザーの要望だったと述べている。これは使い古された言い訳だが、オープンソースが実際に成熟期を迎えたのは間違いなさそうだ。

アルカテル・ルーセント──急増するM&A

 今年4月に、アルカテルSAとルーセント・テクノロジーズが合併計画を発表した。これによって、年商240億ドルの巨大ネットワーク企業が誕生し、国際的な合併や買収の流れが強まっていることがあらためて印象づけられた。

 中国メーカーがローエンド製品市場で欧米メーカーに対する圧力を強める中で、この合併は、成熟し切ったエンタープライズ市場の成長分野(VoIPなど)で競争に打ち勝つためにどうしても必要だったと見られる。

 投資会社イノベーション・アドバイザーズによると、今年のM&Aは、過去最高の3,945件に上る見通しだ(昨年は3,455件)。ネットワーキング、インターネット、チップ、エンタープライズ・ソフトウェア分野での合併や買収を促している要因は、グローバル化と需要の変化である。

 今年注目を集めたM&Aとしては、AMDとATIテクノロジーズ、シスコシステムズとサイエンティフィック・アトランタ、レッドハットとジェイボス、EMCとRSAセキュリティなどが挙げられる。

グーグルとユーチューブ──インターネットとビデオの結合

 グーグルは今年10月、16億5,000万ドルでユーチューブを買収すると発表し、インターネット業界の稼ぎ頭である同社の力を強く印象づけた。またこの合併は、Web 2.0(ユーザーが作成したコンテンツとマルチメディア・アプリケーションの結合)におけるビデオの重要性を再認識させるものとなった。

 グーグルとユーチューブの合併後、AOL LLCの会長を退任したジョナサン・ミラー氏は、「ユーチューブに関心を示さない人は、眠っているか、嘘をついているかのどちらかだ」と断言する。

 ライバル各社も対応を急いでいる。リコスは、ソーシャル・ネットワーキングとオンライン・ビデオの要素を組み合わせた映像ストリーミング・サービスを立ち上げ、映画スタジオやTVネットワークも、オンラインで映像を提供するための取り組みを進めている。

 インターネット・サイトとコンテンツ制作者の間に横たわる法律上の問題を解決しなければならないという課題は残されているものの、ビデオとインターネットの結合が今年大きな注目を集めたことは確かである。

AOLの検索データ提供──プライバシー保護を巡り賛否両論

 今年7月、AOLが65万8,000人の加入者に関する検索ログ・データを調査目的で提供したことが明らかになり、プライバシー権に関する大きな議論を巻き起こした。企業のデータ漏洩事件やフィッシング詐欺が問題になっているさなかに明るみに出たこの問題は、データの安全性が低いという事実をあらためて思い知らせる結果となった。

 AOLの記録には、社会保障番号などの機密情報が含まれており、9月には、3人のユーザーが同社を提訴した。弁護士によると、これは全国的な集団訴訟としての認定を求める最初の動きだという。原告は、ユーザーのWeb検索記録を保存しないようAOLに命じることを求めている。しかし、この訴えが認められる可能性は低い。

 法執行機関は、捜査に役立てるために、ユーザーのログを保存しておくようサービス・プロバイダーに求めており、データ保存のための新たなルールを提案する構えも見せているからだ。

 日々増え続ける膨大な量のデータを保存できる技術が次々に誕生しており、この問題を巡る議論は今後も続いていくはずだ。また米国と欧州諸国では、プライバシーの基準が異なっているため、裁判所の管轄権にかかわる問題も出ている。

バッテリの不具合──リコール騒動

 IT業界と家電業界で歴史上最大規模のリコール事件が発生した。デルは今年8月、リチウムイオン・バッテリがショートして発火するおそれがあるという報道を受け、400万個を超えるラップトップPC用バッテリをリコールした。

 その後まもなく、アップルコンピュータ、富士通、日立、レノボ・グループ、東芝など世界各国のメーカーがデルに追随した。結局、800万個を超えるバッテリがリコールの対象となり、問題のバッテリを製造したソニーにとっては、泣きっ面に蜂という事態となった。今年ソニーは、バッテリのリコール、PlayStation 3の開発の遅れ、PlayStation Portableの不振などの要因が重なって赤字に転落した。

インテル・ベースのMac──チップ業界の再編

 アップルがインテルのチップをベースにした初のMacを今年1月に出荷したのも、歴史的な事件だった。数十年間にわたってアップルが固執し続けてきた独自路線は、同社にとって強みであると同時に弱みでもあった。同社は、少なくともiPodが登場するまでは、市場シェアを犠牲にしてでも、シームレスに設計された製品を出荷するという路線を貫いていた。

 しかし、インテル・チップは、Macの製品ラインに新たな息吹を吹き込んだ。アップルの第4四半期決算では、Macの売上げが30%伸び、5億4,600万ドルの利益を出して、アナリストの予想を覆した。アップルの利益率はきわめて高い。最新の四半期決算を見ても、デルの売上高はアップルのそれを300%以上も上回っているにもかかわらず、利益に関しては24%上回っているにすぎない。

 インテルについても、今年は大きな打撃となる出来事があった。デルが、年内に投入するマルチプロセッサ・サーバ用のチップとして、インテルの有力なライバルであるAMDの製品を初めて採用するという発表を5月に行ったのだ。

特許を巡る訴訟が激化

 今年1月、米国最高裁判所は、リサーチ・イン・モーション(RIM)がNTPを相手取って起こした特許侵害訴訟でRIM側の上告を棄却した。業界専門家たちは、これでRIMのBlackBerryは命脈を断たれたと見ていた。ところが両社は、3月に6億1,250万ドルで和解し、RIMは、NTPによる特許訴訟の懸念を払拭した。

 この裁判は、特許訴訟に起因する混乱を象徴している。この種の訴訟では、特許侵害に関する最終的な判断が示される前であっても、特許を侵害したとされる製品の販売を差し止めるための仮処分がほとんど自動的に下される場合が多い。

 しかし、業界関係者の多くは、米国最高裁判所が5月に下した1つの判断にある変化を見いだした。最高裁が、仮処分をすぐに認めるのではなく、複数の要因を検討する必要があると判断したのだ。この特許侵害訴訟は、オンライン・オークション会社のメルクエクスチェンジLLCがイーベイを相手取って起こしていたもので、最高裁はイーベイ側に有利な判断を下した。とは言え、11月にNTPがパームを訴えるなど、今も多くの特許訴訟が続いている。

Vistaの開発の遅れと出荷

 今年11月、マイクロソフトは、開発が大幅に遅れていたVistaを、Office 2007、Exchange 2007とともに出荷した。マイクロソフトのCEO、スティーブ・バルマー氏は、「当社にとって、歴史上最大規模の製品出荷」と強調しているが、実感は乏しい。少なくとも、VistaとOfficeの消費者向けバージョンは、年明けまで出荷されないため、年末商戦には間に合わない。

 しかし、この製品は重要だ。とりわけ、かつてないほどのレベルで相互運用性が確保されているという点には大きな意味がある。またVistaは、もう1つの理由で歴史に名を残すかもしれない。従来型の大規模な製品出荷は、これで最後になる可能性があるからだ。

 多くの人々がホステッド・アプリケーションを利用するようになるなか、グーグルは、インターネット・ベースのビジネス・アプリケーションを試験的に提供しており、ユーザーは、Webを通じて随時製品のアップデートを受けることができる。大量の製品を一斉に販売するというやり方は、いずれ過去のものになるかもしれない。

ゲイツ氏が第一線から引退

 今年6月、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏は、2008年7月で同社の日常業務から退くことを明らかにした。同氏は、その後も会長職にとどまるものの、活動の重点は慈善活動に移すという。

 マイクロソフトがアップルのような先駆的役割を果たすことはほとんどなかった。しかし、ゲイツ氏は技術に対する洞察力とビジネスの優れた才能を結びつけ、人々が抱いている非常にたわいのない夢を商品化することができるという米国人起業家の典型的な才能を体現する存在だった。

 同氏は、1981年、IBM PC対応のOSを提供するという契約を締結し、PC革命を加速させた。その後25年間にわたってマイクロソフトを率いてきたゲイツ氏は、グラフィカル・インタフェースを広く普及させ、デスクトップ市場の支配を確立し、インターネット時代という危険な浅瀬に入り込みながらも巧みに同社の舵を取ってきた。

 インターネット時代に突入したマイクロソフトの行く手には、グーグルや、今後出現するであろうさまざまな企業との新たな戦いが待っている。一方、ビル&メリンダ・ゲイツ財団には、およそ300億ドルの資産がある。ゲイツ氏がコンピュータの世界を活性化させたように、慈善活動の世界にも新風を巻き起こすことができるかどうか、世界中が注目している。

(マーク・フェランティ/IDG News Service ニューヨーク支局)




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