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ITプロジェクトは「スピード最優先」の時代に
競争優位に立つために、2007年は投資の早期回収を目指せ
(2007年02月14日)
大企業が24カ月で完了させた
「ERPプロジェクト」
オハイオ州コロンバスのネイションワイド生命保険で、大規模な財務システム移行プロジェクトの第1フェーズが始まったのは2006年春のことだった。新しいシステムは、10数種類の一般会計システム群を単一のプラットフォームに統合するというものだ。このプロジェクトは、ビジョンから配備までに24カ月を要したが、法定資産1,570億ドルの保険会社という企業規模を考えれば、非常に短期間のターンアラウンドだったと言える。
同プロジェクトを手がけたデロイト・コンサルティングのペンコスキー氏によれば、プロジェクトが成功した最大の要因は、統一ビジョンをエグゼクティブ・レベルで明確に定義したことにあったという。「2004年に財務のビジョンとロードマップの定義を開始した。何を、どういった順番で移行し、どのような技術とプラットフォームを採用するかについて議論したわけだ」と同氏。
ネイションワイドでは、財務機能のビジョンを策定した後、単一の汎用元帳会計配分システムを実装し、200以上のソース・システムの情報を統合するテラデータ・ベースのデータ・ウェアハウスを組み込むとともに、データの視認性を高めるアプリケーションも導入した。
成果
プロジェクトの成果はバランス・スコアカードによって測定し、ビジョンの要素ごとにエグゼクティブたちの達成状況をチェックした。「財務プロジェクトの場合、具体的なメリットはむしろ他部門において明確に表れる」とペンコスキー氏。
さらに同氏は、「このプロジェクトは、短期間で大きく変貌できることを証明するための試金石だった。プロジェクトが終わってから、エグゼクティブたちはタイムフレームに関して以前よりずっとアグレッシブになったというが、そうした自信の背景に財務プロジェクトの成功体験があることは間違いない」とも指摘する。
ペンコスキー氏のアドバイス
プロジェクトを迅速に進めるためには、上級エグゼクティブたちの協力が欠かせない。「組織的な障害物を取り除いて、短期間に大規模な変更を行うためには、エグゼクティブたちの力が必要だ」(ペンコスキー氏)というわけだ。
一方、組織(の構成員たるエグゼクティブたち)は、プロジェクトがサポートしようとしているビジョンを理解しておかなければならない。もし、会社に大きなインパクトや高いROI(投資利益率)をもたらすものであるなら、「それは決して小規模な変更では収まらない」(ペンコスキー氏)はずであるから、「実現したときに、個々の機能がどのようなものになるかといったことまで、明確にビジョンを共有しておかなければならない」(同氏)のである。もちろん、技術投資にも積極的である必要がある。
販売機会の損失を回避した
「データ・ウェアハウス・プロジェクト」
ベアリングおよび合金鋼の製造・販売をなりわいとするザ・ティムケン・カンパニーのCIO、ジョン・エルゼッサー氏は、決して速成栽培的なITプロジェクトが好きなわけではない。しかしながら、同社が売上高52億ドル(2005年度)の国際メーカーに成長すると、事業展開にもスピードが求められるようになり、場合によっては促成栽培的なプロジェクトにも取り組まなければならなくなったのである。
同氏がその必要性に最初に気づいたのは、2004年のことであった。当時、同社では、生産能力が限界に近づいていたため、受注と生産に関する情報を、世界規模で正確に把握する必要が生じた。だが、同社は「グローバルなシステムを持っていなかった」(エルゼッサー氏)ため、急場をしのぐべく、世界10数カ所のトランザクション・システムから受注情報を収集することのできるデータ・ウェアハウス・システムを構築することにしたのだ。
それがやっつけ仕事であることは、エルゼッサー氏自身も自覚していた。しかしながら、そのプロジェクトによって得られる利益が、コストを上回ったこともまた事実なのである。なにせ、データ・ウェアハウス・システムの構築により、工場をより効率的に稼働させることが可能になったばかりか、顧客サービスを改善し、販売機会の損失を回避することもできたのである。
ここで、プロジェクトの推進状況を振り返ってみると、エルゼッサー氏のチームはまず、迅速にデータを収集する必要がある市場を、4つに絞り込んだ。それは、米国および欧州の「自動車」「製造」「航空宇宙」そして「リプレース」の市場だった(ちなみに、この4市場で、同社の売上げの80パーセントを占めていた)。
チームは次に、数年前に購入済みだったデータ・ウェアハウス・ソフトウェアを使って、受注トランザクション・データ・ウェアハウスの構築に取りかかった。「当初、私はこのソフトウェアの導入に、それほど積極的ではなかった。あまりエレガントなソリューションではなかったからだ。それに、ERPプロジェクトを展開するうえでそれが障害になることも目に見えていた。しかしながら、顧客サービスの向上とオペレーションの効率化のどちらを優先させるべきかということを経営の視点から考えた場合、私のほうに譲歩が必要だった」と、エルゼッサー氏は“促成栽培”を是認するに至った経緯を語る。
こうして、ティムケンのデータ・ウェアハウス・スタッフにとって、受注トランザクション・データ・ウェアハウス・プロジェクトが最優先課題となった。エルゼッサー氏によると、システムはわずか10人のスタッフによって、4カ月のうちに構築されたという。
その結果、米国と欧州の10数カ所に点在する受注トランザクション・システムを通して、約1万8,000社(顧客)からの注文がデータ・ウェアハウス・システムに集約されることになった。急ごしらえのシステムには違いなかったが、これによって、当初の目的どおり「生産能力の限界を超える前に、あとどれだけオーダーを受けられるかを、世界規模で知ることが可能になった」(エルゼッサー氏)のである。
なお、同社は現在、世界27カ国の受注、生産拠点のすべてを対象に、SAPの実装を進めている。もちろん、今回のこのグローバル・プロジェクトは、“促成栽培”ではない。
成果
エルゼッサー氏は、データ・ウェアハウス機能を包含したグローバルSAPシステムが完成する2008年までは、現行のデータ・ウェアハウスを利用し続ける考えだ。なお、このシステムに集積されたデータの多くは、SAPの「Advanced Planning and Optimization」ツールに移行することになる。
エルゼッサー氏のアドバイス
CIOはプライオリティの変更やソフトダラー・ベネフィット(数値化できない利益)を得るチャンスに積極的でなければならない。「もし十分な収益が見込めるのであれば、通常は絶対にしないようなことでも、するようにしなければならない」とエルゼッサー氏。



















