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【連載】
新時代のITキャリア【システム開発編】

第8回 「プロジェクト・マネジャー」

(2007年06月29日)

IT業界では常に新しい技術が誕生している。そしてそれに伴いさまざまな職種や役職が誕生している。本連載では、IT業界の職種を取り上げ、その仕事内容や必要とされる能力、労働条件や待遇といったものを紹介していくことにしたい。今回はITシステムの要である「プロジェクト・マネジャー」を取り上げる。

横山哲也
グローバル ナレッジ ネットワーク、マイクロソフトMVP

【職務概要】

 ソフトウェア開発は、「プロジェクト」の形態を取る。この場合のプロジェクトとは、与えられた予算で、一定の期限内に、要求された機能を実現するための活動全般を指す。プロジェクト・マネジャーは、プロジェクトが円滑に進行するように管理する職種である。

 プロジェクトは、決定した時点で予算/納期/機能が決まっている(ことが多い)。その場合でも、プロジェクト・マネジャーは、要求された機能を実現するための作業量を見積もり、費用と納期を算出する。事前に与えられた予算と納期との差が大きい場合は、発注者(スポンサー)と協議して、予算を増やすか、納期を遅らせるか、あるいは機能を削減するかを決定する。

 プロジェクトがスタートしたら、限られた予算と限られた期間で、必要な機能を満たすソフトウェア(システム)が完成するように采配を振るう。

【存在意義】

 ソフトウェア開発は、いくつかのサブシステムに分割して実行されることが多い。これによって同時並行作業が可能になり、結果として納期を短縮できるからだ。

 しかし、分割したサブシステムは、最終的に結合されなければならない。特定のサブシステムの完成が遅れると、全体の完成が遅れる場合がある(下図)

ソフトウェアの開発を構成するモジュールの関係。あたりまえだが納期は余裕を持って(サバを読んで)見積もるのが鉄則だ

 例えば図のモジュールAが完成したのに、モジュールBが完成していなかったとしよう。モジュールBができないと次の工程には進めない。この場合には、モジュールAの開発要員をモジュールBの開発に割り当て、納期に間に合うように、モジュールDに進まなければならない。

 大規模なプロジェクトの場合、多くのプログラマーは自分の担当分野しか把握していない。プロジェクト・マネジャーは、全体を把握し、プロジェクト・メンバーのモチベーションが下がってしまったら励まし、プロジェクト進行の阻害要因があればそれを排除する。

 残念なことに、最近ではプロジェクト・マネジャーになりたがらない若手が増加しているらしい。確かにプロジェクト・マネジャーはハードな仕事である。うつ病などのメンタル疾患になる確率も高いと言われる(あくまでもうわさレベルだが…)。プロジェクトが遅れても、納期も機能も譲歩してもらえず、予算も増えない。結果として、サービス残業ばかりが増えてしまい、プロジェクト・メンバーからも恨まれる。こういう“負”の側面だけを見れば、プロジェクト・マネジャーのなり手が少ないのも無理はない。

 しかし、プロジェクト・マネジャーはやりがいのある仕事である。プロジェクトが始まらないことには、ITシステムは作成されない。プロジェクト・マネジャーこそがITシステム構築の要なのだ。

【必要な経験/スキル】

 プロジェクト・マネジャーの本質は管理職である。しかし、プロジェクトの進行上の問題を正しく理解し、適切な対策を講じるには、技術的な知識も不可欠だ。そのため、一般にはシステム・エンジニア(SE)の次のステップが、プロジェクト・マネジャーとされる。筆者が考える必要な経験とスキルは、以下のとおりだ。

プログラマーの経験

 プログラムの工数を見積もるためには、プログラマーの経験があったほうがよい。最低でも、プログラマーの仕事については十分に理解しておきたい。

SEの経験

 仕様書から工数を算出するには、SEの経験があったほうがよい。実際の仕様書はプロジェクト内のSEが記述するだろう。しかし、その検証は、プロジェクト・マネジャーの仕事である。

リーダーシップとコミュニケーション力

 リーダーシップを発揮することと強引に物事を進めることは違う。プロジェクト・メンバーに仕事を無理強いをしても生産性は上がらない。また、プロジェクトの進行中に起きるトラブルは、人間関係に由来することが多い。現場の“空気”を読み、メンバーが仕事に集中できる環境を構築する工夫も必要だ。

 ただし1つ注意してほしい。SEが純粋な専門職であるのに対し、プロジェクト・マネジャーは管理職である。単純なステップ・アップではない。もしあなたがSEで、「プロジェクト・マネジャーにならないか」と上司から打診されたら、慎重に検討しよう。

【適した人材】

 技術スキルやビジネス・スキルは適切な補佐係がいれば補える。補えないのはリーダーシップ力とコミュニケーション力である。

 飲み会の幹事、友人の結婚披露パーティの幹事、リクリエーションの企画責任者などを積極的に引き受ける人は、プロジェクト・マネジャーに向いている。

【雇用側が求めるべき能力】

 プロジェクト・マネジャーの理想像は技術に強く、ビジネス・スキルがあり、リーダーシップが取れて、コミュニケーション能力が高いことだ。しかし現実に、そんな「スーパーエンジニア兼管理職」は見つからない(いたとしても引く手あまたで競争倍率は高い)。雇用側はすべての能力を求めず、どこかで妥協する必要があるだろう。

【採用の決め手となる“究極の質問”】

 「合コンの幹事は得意ですか」

 あらゆるイベントはプロジェクトの要素を持つが、合コンは特にその要素が強い。失敗した場合に強く非難されるからだ。

 よく知らない相手が参加するので、一度決まった日程を変更するのは難しい。予算が超過した場合は、だれが負担するかでモメることもある。参加メンバーの容姿や性格が、お互いの要求に合わないかもしれない。また、料理は参加者の好みに合うか、2次会の場所は確保したか、終電の時刻に間に合わせる(あるいは間に合わせない)ために、どうプロジェクト(合コン)を進行させるか――。こうしたさまざまなリスク分析は、現実のプロジェクトでも非常に役立つ。

 ただし、中には合コンではきわめて優れたプロジェクト・マネジメント能力を発揮するのに、仕事ではまったく発揮できない人もいる。その点は注意したい。

【年収】

 責任が重く年齢層も高いことから、SEよりも年収はよい。プロジェクトの規模にもよるが、平均すると700万円程度になるようだ。ただし、小規模なプロジェクトを担当する場合はもっと低いこともある。逆に、責任範囲によっては1,200万円程度の収入を得ている人もいる。



新時代のITキャリア【システム開発編】
第1回 「オフショア・プロジェクト・マネジャー」
第2回 「ベンダー・マネジャー」
第3回 「BIアナリスト」
第4回 「IT財務責任者」
第5回 「下流プログラマー」
第6回 「上流プログラマー」
第7回 「システム・エンジニア」
第8回 「プロジェクト・マネジャー」
第9回 「アーキテクト」
第10回 「ヘルプデスク」
第11回 「テクニカル・サポート」
第12回 「システム管理者」
第13回 「ネットワーク管理者」
第14回 「一般ユーザー・トレーナー」
第15回 「ITプロ/開発者向けトレーナー」
第16回 「ITコンサルタント」
第17回 「CIO(Chief Information Officer)」
第18回 「CSA(Chief Software Architect)」

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