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[米国]
GPLv3は企業ユーザーへの「招待状」――FSF代表ストールマン氏が強調

「プロプライエタリ製品はビジネスの革新を妨げる!」

(2007年07月09日)

 フリー・ソフトウェア・ファウンデーション(FSF)は6月29日、フリー・ソフトウェア・ライセンス規約「GPL(GNU General Public License)」の新バージョン「GPLv3」を正式にリリースした。FSFの代表、リチャード・ストールマン氏は、GPLv3のリリースを記念して米国マサチューセッツ州ボストンにあるFSF本部で開催されたイベントで、企業が非プロプライエタリ技術を使わないのは「愚かなことだ」と言い切った。ベンダーが販売するプロプライエタリ製品を使い続けることは、企業にとってビジネスの革新を妨げると同時にセキュリティを弱体化させる行為である──というのが、GPLの16年ぶりの改訂で意気あがるストールマン氏の主張なのである。

プロプライエタリのくびきから逃れよ!

 16年前(GPLv2がリリースされた1991年6月)と今回との最大の違い、それはフリー・ソフトウェア(あるいはストールマン氏)が、「企業」をターゲットに据えたことだ。今回のイベントで、ストールマン氏は、大勢のGPLマニアを前に、「規模の大小にかかわらず、あらゆる企業はフリー・ソフトウェア・プログラムを導入すべきだ」と力説したのである。

 例えば、マイクロソフトのWindowsに代表されるプロプライエタリ・システムの代わりに、同氏が推進するGNU OSを導入すれば、ユーザー企業は骨の折れるアプリケーション開発やセキュリティ上の問題解決を、ベンダーに依存しなくても済むようになる、というのがその理由だ。その裏には、企業がフリー・ソフトウェアの採用にもう少し前向きになってくれれば、Windowsのようなプロプライエタリ製品が市場にかけている“縛り”を解き放つことができるはずだという、ストールマン氏の思いがある。その思いが、同氏に、次のような言葉をはかせるのだ。

 「企業ユーザーといえども、自分たちが使うソフトウェアに関しては、すべてのユーザーと同様、自由の権利を持つべきだ。企業が、自分でコントロールできないプロプライエタリ・ソフトウェアを使うのは、愚かとしか言いようがない」

 「世の中には、『フリー・ソフトウェアは利便性の点でプロプライエタリよりはるかに劣る。したがって、プロプライエタリからフリー・ソフトウェアへの移行は不可能だ』と主張する企業が、まだ少なくない。だが実際には、企業のさまざまなニーズにこたえることのできるフリー・ソフトウェアがすでにたくさん提供されているのだ」

プロプライエタリの象徴「Vista」

 プロプライエタリ・ソフトウェアの中でも、ストールマン氏にとって最も大きな存在、それはもちろん「Vista」(そして、ベンダーとしてのマイクロソフト)である。当然、今回のイベントでもマイクロソフト“口撃”、Vista“口撃”の舌鋒がさえ渡った。

 曰く。

 「旧バージョンのコンピューティング・デバイスやアプリケーションのサポートを打ち切ってしまうマイクロソフトの慣行は、“強制アップグレード”という終わりのないサイクルに企業を封じ込めてしまうものだ。よって、こうしたシステムは違法とみなすべきである」

 また、曰く。

 「リモート・ソフトウェア・アップグレードなどのようなVista搭載機能には、マイクロソフトの意のままにエンドユーザーのコンピュータをコントロールし、操作する環境を作り上げてしまおうという“危険”が潜んでいる」

 さらに、同氏は、マイクロソフトやアップル製品に組み込まれているDRM(Digital Rights Management:デジタル権限管理)技術に対しても反対姿勢を貫き通している。

 だが、業界標準ともなっているマイクロソフト製品と決別するとなると、企業は(たとえ一時的にではあるにせよ)多大な不便を強いられることになる。それに耐えてまでフリー・ソフトウェアに移行したところで、企業にはいったいどういったメリットが得られるというのだろうか。

 ストールマン氏は、それこそが「自力でコントロールできる環境、自由の権利」であるという。「フリー・ソフトウェアは単なる『プロプライエタリ・ソフトウェアの代替選択肢』ではない。ユーザーの権利を倫理的に守る唯一の手段なのだ」というのが、同氏が口を極めて主張するところなのである。

GPLv3の主な変更点

 GPLv3のリリースで示された(GPLv2からの)最も重要な変更点は、1)フリー・ソフトウェア・ライセンシングと互換性に関する新たな意味づけ、2)プログラマティック・ソースコードに付加された新たな定義、3)フリー・ソフトウェア・プログラムの、いわゆる「TiVo化」(TiVozation)を回避するための条件──の3点である。ちなみに、TiVo化という表現は、GNU OSを採用するTiVoのデジタル・ビデオ・レコーダに由来するもので、デバイス・メーカーがハードウェア機能を使って自社製品上で改変ソフトウェアが動作しないようにブロックする行為を指す。

 GPLv3で改訂されたソフトウェア・ライセンス条件は、昨年11月にマイクロソフトとノベルが交わした特許提携(関連記事)を多分に意識しており、こうしたたぐいの取引を阻止することを目的にしているのは明白だ。実際、FSFはかつて両社の提携を、「GPLが網羅するプログラム・ディストリビューターの中の特定1社の顧客のみを提訴しないという、特許所有者による限定的かつ差別的な約束」であるとして非難したことがある。

 ストールマン氏は、「このような特許契約によって、好きなソフトウェアを利用したいというユーザーとディベロッパーの自由が脅かされている。こうした行為を撲滅すると同時に、ユーザーが特許所有者から提訴されないようにするために、われわれがしなければならないことをすべて(GPLv3に)盛り込んだつもりだ」とGPLv3の意義を強調する。

フリー・ソフトウェア(GPLv3)が企業に受け入れられる日は来るか

 ストールマン氏の意気込みの強さもかかわらず、現時点では、GNUなどのフリー・ソフトウェアが企業の間に広く普及するようになるまでには、まだかなりの時間がかかるとの見方が支配的だ。しかしながら、その一方で、「フリー・ツールならすぐにでも導入できるはずだ」と主張する専門家もいる。

 例えば、「フリー・プログラムを使ってカスタマイズEDI(Electronic Data Interchange)システムを構築する機能はすでに提供されている」と証言するのは、米国AgogmeのCEO、トーマス・ダクレス氏だ。ちなみに、同社は図書館の蔵書のカタログ化と検索を支援している。

 「EDIのようなシステムのサポートに必要なフリー・ソフトウェアは確かに存在する。実際に、フリー・ソフトウェアを使ってシステムを構築している図書館もある」(同氏)

 また、マサチューセッツ工科大学の教育イニシアチブ担当アソシエート・ディレクターで、電気エンジニアリングについて教えているサンジョイ・マハジャン氏は、プロプライエタリと違って、テクノロジーの基盤が隠されていないフリー・ソフトウェアの場合、セキュリティの潜在的な欠陥を見つけたり、既存プログラムに新しい機能を付加したりといった作業がずっと簡単になる、と期待する。

 「例えば、Office 2007については、企業から『自分たちのシステムとあまりにも互換性がないため、Office 2007の添付ファイルをアプリケーションで受け取ることができない』との苦情をよく聞く。こうした状況は(すぐに改善されることはなく、そのため)ビジネスに支障を来すことがある。だが、フリー・ソフトウェアの世界では、何かしらが改善されたときに、新しいライセンスを購入するまで待つ必要がない。すべてが、すべてのユーザーと共有され、すべてのユーザーに恩恵があるということだ。今こそ、企業はフリー・ソフトウェアにもっと積極的に取り組むべきだ。失うものより得るもののほうが大きいのだから」(マハジャン氏)

 このアドバイスをどれだけの企業が聞き入れるかは分からない。しかしながら、少なくともベンダー・サポートの分野においては、GPLv3は一部の主要ベンダーに早くも好印象を与えているようだ。

 事実、サン・マイクロシステムズの最高オープンソース責任者、サイモン・フィップス氏は、InfoWorld米国版に宛てた電子メールの中で、ライセンス内容がさらに明確になったとしてGPLv3を賞賛するとともに、(サンは)今後も多くの異なるディストリビューション・モデルを追求し続けていくと述べている。また、同氏はこうも語っている。

 「GPLv3がフリー・ソフトウェア運動の発展における重要なステップであることは確かだろう。特に、GPLv2では不明瞭だった文言が明確になり、また15年以上も前に作成されたGPLv2には記されていなかった多くの問題にも取り組んでいる。当社では、当社のすべてのソフトウェアをフリー・ソフトウェア化してオープンソース・コミュニティに提供する戦略を立てており、またそれぞれのテクノロジーには特定のライセンスをケース・バイ・ケースで選ぶことにしている」

(マット・ハインズ/InfoWorld オンライン米国版)




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