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【連載】
新時代のITキャリア【システム開発編】

第9回 「アーキテクト」

(2007年08月17日)

IT業界では常に新しい技術が誕生している。そしてそれに伴いさまざまな職種や役職が誕生している。本連載では、IT業界の職種を取り上げ、その仕事内容や必要とされる能力、労働条件や待遇といったものを紹介していくことにしたい。今回はシステム開発の“最高峰”とも言うべき「(IT)アーキテクト」を取り上げよう。

横山哲也
グローバル ナレッジ ネットワーク、マイクロソフトMVP

【職務概要】

 大規模なシステムを構築する場合、詳細な仕様は機能ごとに作成され、個別に実装される。ITアーキテクトは複数の実装方法から最適なものを選択し、整合性のとれたシステム全体の統一方針を打ち出す。

 個々の機能は、ITアーキテクトが示した「アーキテクチャ(構造)」に準拠して設計される。つまりITアーキテクトはシステム全体を大所から俯瞰(ふかん)した姿を示す、システムの総監督なのだ。

【存在意義】

 システム・エンジニア(SE)や上流プログラマーは、与えられた予算と期限の範囲で最適な設計を考える。しかし複雑なシステムでは、機能ごとの個別の最適解が、全体の最適解になるとはかぎらない。

 例えば映画の制作を考えてみよう。映画には予算とスケジュールを管理するプロデューサー、内容に責任を持つ監督、実際に作業を行う俳優やスタッフが不可欠である。システム開発の現場では、プロデューサーがプロジェクト・マネジャー、監督がSEである。もちろんスタッフはプログラマーたちだ。

 インデペント系のショート・フィルムを製作する場合には、監督は1人で全体の整合性を取ることができる。しかし、ハリウッド映画のような大規模映画では、音楽監督やコンピュータ・グラフィックス(CG)監督など、その分野ごとの監督が必要になる。そして各分野の監督は、総監督の方針を実現するために働く。

 ITアーキテクトの役割は、その総監督なのだ。小規模なシステムが1つしかなく、短期間しか使用しない場合、ITアーキテクトは不要である。しかし、規模が大きくなったり、複数のシステムを連携させたり、長期にわたって利用したりする場合には、ITアーキテクトは必要不可欠な存在となる。

 ITアーキテクトは現在、SEからのスキル・パスとしても注目されている。プロジェクト・マネジャーもSEの次のステップだが、プロジェクト・マネジャーの本質は管理職である。技術職としてステップ・アップを目指す場合、ITアーキテクトが最有力候補なのだ。

【必要な経験/スキル】

 ITアーキテクトは、利用可能な技術から最適なものを見極め、システム全体の統一方針を立てるのが仕事である。そのため、常に最新技術を修得する姿勢と、現実に役に立つものを見極める姿勢の両方が必要となる。目新しい技術にすぐに飛びつくのは、現実的ではない。だからといって、確立された技術だけに固執していては進歩がない。両方のバランス感覚が重要なのだ。

SEの経験

 SEとして“場数”を踏むことは、現実を知るために非常に重要である。顧客の要望を知らないITアーキテクトは、現実的なシステムの方針を示せない。

新しい技術を独学で学ぶ力

 新しい技術をいち早く学び、長所と短所を把握することも重要だ。いったん構築したシステムは、10年以上使われることも少なくない。日進月歩のIT業界で10年たっても陳腐化しないシステムを提案するには、最新技術の習得が不可欠である。

ビジョンを示すコミュニケーション能力

 ITアーキテクトの大きな役割に、システムのビジョン(構想)を示すことがある。ビジョンは現実的であり、かつプロジェクトに携わるメンバーを納得させられるものでなければならない。

 情報処理学会が2007年1月に開催した「ソフトウェアジャパン2007」で行われた「ITアーキテクト/CIOフォーラム」パネルディスカッションでは、パネリスト全員が「ITアーキテクトに求められる資質」として、「ビジョンを示すことができる能力」と回答したという。

【適した人材】

 ITアーキテクトには、芸術家と実務家の両面が求められる。理想を求めつつ現実に妥協する“柔軟性”も必要になる。

 新しい技術は常にバラ色のように語られる一方、必ず批判の対象になる。ITアーキテクトには、新しい技術では何ができて、何ができないかを冷静に見極めるスキルが求められる。

【雇用側が求めるべき能力】

 大規模システムや複数システムの連携システムを設計した経験があり、最新動向にもアンテナを張れる能力。

 SEから技術者として尊敬される技術力があり、常に現場の状況を把握している現実主義者。ITが経営の“道具”であることを正しく理解している人物。技術だけに走る「技術オタク」や、何でもいいから動けばいいという「場当たり主義者」は不要である。

【採用の決め手となる“究極の質問”】

質問1 「最新技術を学ぶのは好きですか」
質問2 「次のシステムでは最新技術を使いますか」

 前者がNOでは理想は語れない。後者をYES/NOで即答するようでは、場当たり主義者の要素が強い。後者の質問は「状況次第」というのが正解だ。ただし、これは「最も無難」な回答であり、これだけでアーキテクトの資質を判断することは難しい。ではこれでどうだろう。

 「来週は彼女(彼氏)との初めてのデートです。よさそうなレストランが見つかりました。いくつかのブログサイトを見たところ、レストランの評判も上々です。あなたはその店を利用しますか。それはなぜですか」

 「ブログの評判がよいので利用する」では思慮が浅い。ブロガーは店から報酬をもらっているかもしれない。「自分で行ったことがないので利用しない」は慎重すぎる。「まず自分で行ってみて感じがよければ利用する」は悪くない回答だが、1回だけで状況がわかるとはかぎらない。かといって何度も行くには時間も予算も足りない。「相手と相談する」というのも悪くないが、面白みに欠ける。あなたが男性なら、相手の女性から「つまらないヤツ」と思われるかもしれない。

 正解は「デートする相手の性格によって判断する」だ。まだ行ったことのない新しい店に行くことに魅力を感じるようであれば利用すればよい。新しい店にも行ってみたいけど、店の対応や雰囲気にうるさいタイプなら、一度下見しておくべきだろう。冒険を好まないタイプであれば事前に相談するのがよい。

 なお、この質問に対する回答が「利用する」「利用しない」という二者択一だと思い込んでしまう人は、ITアーキテクトはまだ早い。もっと“現場”を経験してから出直そう。

【年収】

 求められる技術レベルが高いことから、プロジェクト・マネジャーと同程度の収入が期待できる。技術職で年収1,000万円を超えるのも夢ではない。技術職では最高ランクと言ってよいだろう。

(Computerworld.jp)



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