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【連載】
新時代のITキャリア【システム運用管理編】
第10回 「ヘルプデスク」
(2007年09月05日)
IT業界では常に新しい技術が誕生している。そしてそれに伴いさまざまな職種や役職が誕生している。本連載では、IT業界の職種を取り上げ、その仕事内容や必要とされる能力、労働条件や待遇といったものを紹介していくことにしたい。今回からはシステム運用管理分野に焦点を当てる。最初はシステム運用の最前線ともいうべき「ヘルプデスク」を取り上げよう。
横山哲也
グローバル ナレッジ ネットワーク、マイクロソフトMVP
【職務概要】
ビジネスでコンピュータを使うことは手段であって目的ではない。コンピュータの操作がわからない場合、本来の業務を中断し、自分で調べるのは時間のむだである。
中規模以上の企業では、従業員のコンピュータ操作のサポートを行う専用窓口が用意されていることが多い。これが「ヘルプデスク」である。ユーザー(従業員)が直面する疑問やトラブルに対応し、適切に対処するのが主な職務だ。
【存在意義】
ヘルプデスクは、単に操作方法を教えたり、トラブルに対処したりする“便利屋”ではない。ヘルプデスクに特定の機能に関する質問が集中したら、それはシステム改善のサインである。ヘルプデスクは、業務システムを改善する最前線にいるのだ。
業務システムの仕様は、業務を熟知した人とシステム・エンジニア(SE)との間で決まる。そして、そこにはエンドユーザーの視点は入りにくい。もちろん、設計段階でエンドユーザーの意見は取り入れられるが、その意見は操作スキルの高い代表者のものであり、初心者の視点は反映されにくい。
システムの操作をまちがえるのは、ユーザーが悪いからではない。まちがいやすいインタフェースを持ったシステムが悪いのだ。設計時には気づかなかった問題を記録し、次回のバージョンアップ時に反映させるのは、ヘルプデスクの重大な役目である。
最初は使いやすかったのに、業務内容の変化に伴って使いにくくなるシステムは多い。システム設計時には例外処理として手作業で行っていた処理が、例外とは言えないくらい頻発することはよくある。こうした変化を発見することも、ヘルプデスクの仕事だ。
【必要な経験/スキル】
ヘルプデスクの基本は、ユーザーの視点で物事を考えることである。
一般消費者相手のサポートは、想像を絶する質問が多い。しかも、対応が悪いとヘルプデスクの人間性まで非難される。ヘルプデスクが「感情労働」と呼ばれるゆえんである。社内システムのヘルプデスクは、そこまでひどくないが、まれにおかしなことが起きる。筆者が聞いた例では、以下のようなことがあった。
「ノートPCの電源が入らないので、なんとかしてくれ」と言われ、見に行ったらドッキング・ステーションはあるものの、肝心のノートPC本体がない。確かにドッキング・ステーションにも電源スイッチが付いているが、ノートPC本体がないのだから、起動するわけがない。「本体はどうしました?」と聞くと、「前から家に置きっぱなしだが、昨日まではこの状態で使っていた」という。
「昨日まで使っていた」はあり得ない話である。さすがにこんな体験は、一生に1回あるかないか(普通はない)だと思うが、覚悟はしておくべきだろう。
コンピュータの経験
あまり高度なコンピュータ・スキルは要求されない。操作マニュアルを読んで理解するスキルがあれば十分である。ほとんどの質問は、操作に関する問題か、ケーブルやコネクタなど、接続に関する問題である。
前線のヘルプデスクで解決できない問題は、大抵の場合、上位チームが対処する。これを「エスカレーション」と呼ぶ。エスカレーションの仕組みがない職場のヘルプデスクは、職場環境として危険だ。
コミュニケーション能力
ヘルプデスクに連絡があった時点で、相手はかなりイライラしているはずである。冷静にトラブルの状況を聞き出すだけのコミュニケーション能力は必須だ。企業によってはヘルプデスクを対象に、コミュニケーション能力の教育コースを受講させている。
【適した人材】
ヘルプデスクで重要なのは忍耐力と言われるが、それ以上に重要なのは想像力である。「シイタケのマークが出ている」と言われたら、エラーアイコンだと気づかなければならない。忍耐力だけでは、問題解決の糸口は見つからない。想像力も重要なスキルである。
| ←シイタケのマーク。人によっては「ヘソマーク」とも言う…らしい |
【雇用側が求める能力】
企業がヘルプデスクに求めるのは、単なる操作のサポートではなく、トラブル・シューターとしての役割だ。
SF作家で古くからコンピュータに関するコラムを執筆しているジェリー・パーネル氏は、「パーネルの法則」の1つとして、「コンピュータの問題の90%は、ケーブルが原因である」と書いている。さらに筆者は「横山の補則」として、「ただし、そのことに気づく確率は10%未満である」と主張している。
【採用の決め手となる“究極の質問”】
ちょっと気になる女の子(PC初心者)から、「デスクトップPCを買ったのだけど、インターネットがうまく使えない。どうしたらいいか教えてほしい」とお願いされました。ただし「家に来てはダメ」だそうです。あなたは彼女がインターネットを利用できるようになるまで、サポートする自信はありますか?
ヘルプデスクの仕事の大半は、電話によるサポートである。リモート管理用のソフトウェアもあるが、まだ一般的ではない。「相手の画面を見ないでサポートできる」と自信を持って回答できれば、ヘルプデスクとしては合格だろう。
ちなみに、この質問に「過去に何度も“実績”があります」と回答できる人は、かなり懐の深い人だ。とてもではないが、筆者にはマネできない。
【年収】
高い技術スキルが求められるわけではないため、年収はあまり高くない。400万円から500万円程度が平均のようだ。ヘルプデスクからのキャリアパスとしては、エスカレーション先となる技術サポートや運用管理者などがある。
- 新時代のITキャリア【システム運用管理編】
- 第1回 「オフショア・プロジェクト・マネジャー」
- 第2回 「ベンダー・マネジャー」
- 第3回 「BIアナリスト」
- 第4回 「IT財務責任者」
- 第5回 「下流プログラマー」
- 第6回 「上流プログラマー」
- 第7回 「システム・エンジニア」
- 第8回 「プロジェクト・マネジャー」
- 第9回 「アーキテクト」
- 第10回 「ヘルプデスク」
- 第11回 「テクニカル・サポート」
- 第12回 「システム管理者」
- 第13回 「ネットワーク管理者」
- 第14回 「一般ユーザー・トレーナー」
- 第15回 「ITプロ/開発者向けトレーナー」
- 第16回 「ITコンサルタント」
- 第17回 「CIO(Chief Information Officer)」
- 第18回 「CSA(Chief Software Architect)」



















