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【連載】
未来的テクノロジー・ベスト10

第7回 あらゆる物にはり付けられ無線でデータ発信できる超小型メモリ「Memory Spot」

(2008年01月28日)

「Computerworld Horizon Awards」は、米国の研究機関やITベンダーのR&D部門などが、近い将来の実用化・製品化を目指して開発した最先端テクノロジーを読者に紹介すべく、2005年に創設されたものだ。本連載では、2007年度の“受賞作品”を一挙に紹介する。開発者たちのコメントから、イノベーション創出の最前線、そして企業コンピューティングの明日を感じ取っていただきたい。今回紹介するのは、あらゆる物にはり付けられ無線でデータを発信できる超小型のメモリ、米国HP Labsの「Memory Spot」だ。

Gary Anthes
Computerworld米国版

あらゆる物にはり付けられ無線でデータを発信できる超小型のメモリ
Memory Spot
米国HP Labs http://www.hpl.hp.com/

 「Memory Spot」は、無線でデータを発信できる超小型のメモリである(写真1)。サイズは2ミリ×4ミリ角と小さいため、あらゆる物に張り付けたり埋め込んだりすることができ、無線ICタグ(RFID)の強化版のように機能する。

写真1:2ミリ×4ミリ角の超小型の無線データ・チップ「Memory Spot」(各鉛筆の中心にあるのが実物)

 このメモリの発端となるアイデアは、1990年代後半に米国Hewlett-Packard(HP)研究部門「HP Labs」で生まれた。同ラボの研究員が1インチ角の回路基板を写真の裏にはり付け、画像に関係のある音を録音/再生できることを示したのである。しかし、「オーディオ写真」と形容されたこのコンセプトは、名案ではあったが実際には成功しなかった。

 問題の1つは、回路基板の接点が壊れやいことだった。米国カリフォルニア州パロアルトにあるHP Labsでアソシエイト・ディレクターを務めるハワード・タウブ(Howard Taub)氏は、「実装のしかたがまずかった」と振り返る。

 しかし、オーディオ写真が切り開いた道によって、HPは昨年、Memory Spotにたどり着いた。

 Memory Spotを発明したのは英国ブリストルにあるHP Labsのシニア・リサーチャー、ジョン・ウォーターズ(John Waters)氏。同氏の設計目標は、非常に小型であまり電力を必要とせず、比較的高度なプロセッサを備えたデバイスを作ることだったという。

 「難題はこれらすべてを統合することだった。昔は“高速化、改良、低価格化――この3つのうち2つは実現できる”と言われていた。だが今日の世の中では、そのすべてが求められる」(Taub氏)

 現行のMemory Spotチップは0.5MBのデータを格納でき、内蔵アンテナを介して10Mbpsで読み書きができる。また、デジタル・マイクロプロセッサと無線信号用のアナログ回路も備える。さらに、電磁場を介してエネルギーを転送できる「誘導結合」と呼ばれる作用で給電されるため、バッテリは不要だ。

 Taub氏によると、現在、米国陸軍をはじめさまざまな関係者がMemory Spotを評価中だ。用途は動画付き絵はがきから超セキュアなパスポートやIDカード、医療記録が添付された入院患者のリストバンドなど、多岐にわたるという(写真2)。


写真2:音や動画を記録できる写真や絵はがき、入院患者の医療データを記録できるリストバンドなど、Memory Spotの応用の幅は広い

 HPは、NFC(Near Field Communication)技術の導入と標準化を推進する非営利組織「NFCフォーラム」と連携して、Memory Spotリーダーを携帯電話に組み込めるか検討中だ。「例えば、Memory Spotが埋め込まれた映画のポスターから、映画の予告編を携帯電話に転送することもできるようになる」(Taub氏)

 米国カリフォルニア州サンノゼに本拠を置くCreative Strategiesの社長、ティム・バジャリン(Tim Bajarin)氏は、Memory Spotについて、「在庫などのRFIDタイプの用途だけでなく、あらゆる種類のものに利用できる」と絶賛する。

 Memory Spotは市場投入の準備がほぼ整っている段階にある、とTaub氏。実は「商品化にかかわるビジネス上の問題はテクノロジー上の問題よりも難しい」(Taub氏)のだという。



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