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【連載】
情報漏洩100%対策──あらゆるリスク、ケースを徹底検証
第7回 営業秘密の漏洩をいかにして防ぐか ―不正競争防止法と企業の管理体制―
(2006年04月14日)
営業秘密として保護される3つの条件
不正競争防止法は一見、営業秘密を持ち出された側の企業にとって有用に見える法律だが、適用要件は厳格である。今回、「企業の情報資産、知的財産権をいかにして守っていくか」ということを検討する際の材料として、筆者がこの不正競争防止法を例に挙げたのは、この厳格性について考えていただきたかったからにほかならない。
企業は、情報を持ち出されるというリスクを抱えているが、実のところ、持ち込まれる際のリスクも抱えている。つまり、企業は加害者にも被害者にもなりうるというわけだ。また、営業秘密は従業員を介してやり取りされるため、従業員に対してその定義や重要性を周知するなど、漏洩を防止する措置を講じておかなければならない。
こうした状況の下で、企業の営業秘密が不正競争防止法によって保護されるためには、同法の第2条で定める3つの要件がすべてそろっていなければならない。
その3つの要件とは、(1)秘密として管理されていること(秘密管理性)、(2)事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること(有用性)、(3)公然と知られていないこと(非公知性)である。図2に、それぞれの要件に相当する情報の例を示した。
| 図2:不正競争防止法で定める「営業秘密」の要件 |
後日、営業秘密の漏洩を巡って当事者どうしで争いになった場合、漏洩した情報を営業秘密として保護してもらう認定を得るためには、これらの要件が満たされている必要がある。
なお、経済産業省は2003年1月に「営業秘密管理指針」というガイドラインを出している。このガイドラインは、判例上の最低基準を満たすためのミニマム・スタンダードとして策定されたものなので、企業で営業秘密を管理する際にも有用となろう(ただし、行政が示したものとはいえ、法的拘束力はなく、これに従えば100%間違いないというものではない)。またおもしろいのは、役所が数年間の判例動向を分析してガイドラインとしたと明示している点で、線引きが容易ではないと正直に表明しているのは良心的と言えるかもしれない。
この営業秘密管理指針は、上記の営業秘密に関する3つの要件についても言及しているが、本来、行政府が解釈/運用するものではないとして、過去の裁判から読み取ることのできる参考例の紹介にとどまっている。というのも、営業秘密に対する裁判所の判断は事案によって異なり、それを参考に各企業が自社に即した対策を講じるのが正しい対応策と言えるからだ。そこで、以下、判例を交えながら、上記の3つの要件について説明していく。
(1)秘密管理性
秘密管理性は、過去の判例の多くがこの点について厳密に検討して判決を下しており、3つの要件の中でも中核となる要件だと言える。
この要件において重要な点は、情報の保有者が「主観的に」秘密として管理しているだけでは不十分で、「客観的」に秘密として管理していると認識できる状態になければならないことである。言いかえれば、営業秘密として有効に管理しているという客観性を有すると裁判所に認定してもらえる状態を作り出せばよいことになる。
秘密管理性を認めた判決を表1に、認められなかった判決を表2にまとめた。これらの判決から読み取れることをいくつか挙げてみたい。
| 表1:秘密管理性が認められた2つの判決 |
| 表2:秘密管理性が認められなかった2つの判決 |
まず、秘密管理性が認定された男性かつら販売会社の場合、対象情報である顧客情報の管理状況が非常に単純であり、秘密管理性が認められなかった人材派遣会社や会計事務所の管理状況と比べても甘いと感じるかもしれない。しかし、裁判所は、顧客名簿自体が顧客の私生活にかかわるセンシティブな情報であること(かつらを買う顧客の情報という性質上、秘密性が高いことは明らか)、従業員が少ないことなどを考慮して、同社の顧客情報が秘密情報であるという認識が客観的に存在したと見なされたと、筆者は推察する。
それに比べて、会計事務所や人材派遣会社の情報は、常識的に見れば確かに秘密情報ともとれそうだが(原告自身もそういう認識を持っているに違いない)、客観的に秘密情報として管理されているとは言えないと厳格に判示されている。
これらの判例を客観的に並べてみてわかることは、秘密管理性を認めるにあたっては、当該情報にアクセスする者が制限されているか、同情報にアクセスした者がそれを秘密情報であると認識できているか、情報の種類、会社の規模および業態、相手方との関係などに応じて適切に管理されているか、といった点を総合的に見て判断される傾向にあるということである。
(2)有用性
営業秘密管理指針によれば、有用性も秘密管理性と同様に、保有者の主観によって決められるものではなく、客観的に有用でなければならないとされる。同ガイドラインでは、客観的に有用だと判断するための要件として、次の5点を挙げている。
(1)競争優位性
保有することで収益を上げることが可能な情
報、経済活動の中で有利な地位を占めること
ができる情報
(2)事業への活用性
生産、販売、研究開発、費用の節約、経営効
率の改善などに役立つ情報
(3)顕在的、潜在的な価値性
ビジネスに活用されていることが顕在化してい
る情報、もしくは活用されていなくても潜在的
に価値がある情報
(4)現在的、将来的な価値性
現在の事業に活用できる情報、もしくは現在は
活用できなくても将来的に活用できる情報
(5)相対性
試験段階か、製造段階かで有用性が決まる。
完全に試作品で、商品化が具体的に想定さ
れていない情報は有用性を認められない可能
性がある
(3)非公知性
非公知性を有する情報とは、保有者の管理下以外では一般に入手できない情報を意味する。営業秘密管理指針では、刊行物に記載された情報は非公知情報でないとされている。つまり、書物、学会発表などから容易に引き出せる情報は非公知とは言えないのである。
- 情報漏洩100%対策──あらゆるリスク、ケースを徹底検証
- 第1回 情報漏洩対策の根本を考える
-
第2回 ネットワーク運用からのアプローチ(1)
「内部から外部への通信」におけるリスクと対策 -
第3回 ネットワーク運用からのアプローチ(2)
「内部ネットワーク内の通信」におけるリスクと対策
- 第4回 情報が保存されるPC/記録媒体からのアプローチ
- 第5回 情報を利用する「人」からのアプローチ
- 第6回 インターネット掲示板を舞台とする情報漏洩、誹謗中傷への対処法
- 第7回 営業秘密の漏洩をいかにして防ぐか ―不正競争防止法と企業の管理体制―















