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CSR/環境経営の推進にあたってITが果たす役割

環境保護効果を可視化する製品など、この分野への取り組みを強めるITベンダー

(2006年05月19日)

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“環境のモノサシ”の標準化へ向けたアプローチ

 以上、富士通を例に、ITベンダーの環境にかかわる取り組みを見てきた。当然、ユーザー企業としても、今後、ITを活用した環境保護の施策を自社における環境経営への取り組みにリンクさせることを、CSRの一環として考えていく必要がある。

 例えば、先に紹介したオフィス・スペースやヒトの移動量のセーブは確かに効果を生むが、それは局所的なものである。現実問題として、作業量の効率化による工数削減がオフィス・スペースの削減に換算できるからといって、直ちにオフィスの一部を解約することにつながるとは限らない。ヒトの移動量の削減も同様の話であり、ある企業がITの導入によって大幅に出張を減らしたところで、航空機や新幹線などの交通機関が運休するわけではない。

 つまり、企業ごとの局所的な取り組みを、全社的な組織体制やビジネス・プロセスの最適化、企業間の有機的な連携、ひいては社会のインフラ全体の効率化に結び付けていかないと、本当の意味での環境保護の成果は得られないのである。

 とはいえ、まずは、ITの導入効果を環境保護の効果に置き換えて測るための“モノサシ”の標準化を進め、あらゆる企業の共通認識として醸成していくことが必要なのではないだろうか。

 「環境保護における標準化の取り組みの一環として、現在、日本環境効率フォーラムにおいて国内の主要なITベンダーや通信キャリアがワーキング・グループを構成し、情報通信技術の環境効率評価ガイドラインのとりまとめを行っています。昨年11月には中間報告が発表されており、今年中に最終報告がまとめられる計画です。各社の考え方を完全にすり合わせたガイドラインを打ち出すことは難しいと思いますが、標準化や共通化に向けた取り組みは着実に進んでます」(串間氏)

 環境保護においてITが果たす役割は非常に大きい。それだけに、ベンダー間の利害を超えた連携とユーザー企業から理解を得て、導くことのできるリーダーシップが望まれるところである。

新POSシステム導入が環境負荷低減にも貢献
年間1,306.7トンもの二酸化炭素排出量の削減を達成した三越

 ITを活用して業務を最適化することによって、環境負荷を低減させることに成功した“先達”を紹介しよう。三越は、富士通のPOSシステム(三越での通称「04POS」)を導入して、紙使用量の削減、倉庫スペースの縮小、モノやヒトの移動量の削減を実現した結果、1,306.7トンの二酸化炭素排出量の削減を達成している。以下が、同社の環境負荷低減への取り組みの詳細である。

顧客満足度の向上のための施策の“副次的効果”

三越業務部システム統括担当主任、山田義之氏

 百貨店大手の三越が環境活動を本格化させたのは2003年のことだ。同社は、環境マネジメント・システムの国際規格であるISO14001を基に、組織体制を整え、従業員に対する教育を実施するなど、環境に対する共通認識を高めてきた。また、2004年より、二酸化炭素の排出量を削減するために、納品車の集約化を目的とした調達物流改革を首都圏店舗からスタートさせており、全国へ拡大しているところである。

 一方で、同社は2004年に顧客の利便性を高めるための店舗改革として、富士通のPOSシステム(通称「04POS」)を新たに導入した。当初、顧客満足度の向上を目指していたこの取り組みが、結果として、環境にも好影響をもたらしているという。

 そもそも、この04POSを導入したねらいは、各売り場における売り上げ伝票をゼロにすることであった。通常、スーパーやコンビニエンス・ストアなどでは、買い物をした顧客に領収書としてレシートを渡している。それに対し、三越では、レシートだけではなく手書きの売り上げ伝票を渡していたのだ。同社業務部システム統括担当主任の山田義之氏は、売り上げ伝票の取り扱いについて次のように語る。

 「百貨店には昔からの伝統を重んじる傾向があり、お客様の入金を記録するために、長年にわたって手書きの複写式伝票が使われてきました。ただ、そうしたやり方では、販売員が伝票を記入している間にお客様を待たせることになります。特に、セールや年末年始などの混雑時には、大変なご迷惑をかけることになってしまいます」

写真1:三越の新型一般POS端末(左)とモバイルPOS端末(右)

 しかし、今日では、手書きの伝票にこだわる顧客はほとんどいないということで、新しいPOSシステムでは、思い切って完全に伝票からレシートに変更することに踏み切り、顧客を待たせる時間を短縮することを目指したという。

 こうして三越は、顧客満足度の向上と業務効率の改善を図るとともに、紙資源の大幅な節約を実現したのだ。全国の各店舗に展開する約3,600台のPOSレジスターを段階的に小型POS端末やモバイルPOS端末に置き換えたことによって、1年間で約180万枚もの伝票が削減されたという(写真1)。

紙のジャーナルを廃止してさらなる環境効果を上げる

 紙資源の節約という点では、ジャーナル(取り引き記録)の管理方法を改善したことも大きい。旧来のPOSレジスターではジャーナルを紙のロールに記録して保管していたのだが、新POSシステムによってこれを完全に電子化したのである。

 実のところ、こちらも本来の目的は、「お客様から問い合わせがあったり、何らかの問題が発生したりしたときに、売り場の担当者自身がPOS端末やPCを用いて過去の販売記録を確認できるようにする」(山田氏)という業務改革にあった。だが、結果として、1年間で約140万ロールの紙の削減を達成。また、ジャーナルは経理上、帳簿と同じ扱いを受けるため、7年間保存しておく必要があるのだが、電子化を果たしたことでロールを保管する倉庫スペースを縮小でき、さらに、ロールを各店舗から倉庫まで運搬するための車両やヒトの移動量も削減された。

図A:富士通の環境影響評価手法を用いて測った04POSの導入効果

 加えて、POS端末自体も節電機能など省エネ設計が施された環境対応機器(富士通認定グリーン製品)が採用されている。その素材は再生可能なプラスチックであり、廃棄後も87%という高い割合で再資源化が可能だという。

 そして、富士通が開発した「ソフト・サービス環境影響評価手法」を基に、04POSの導入効果を試算してみたところ、04POS導入前の54.7%減に当たる1,306.7トンの二酸化炭素排出量が削減されたことが判明した(図A)。「1,306.7トンの二酸化炭素」といきなり言われてもピンとこないかもしれないが、これは960世帯1年分の消費電力に相当する。

 さらに効果を上げるべく、三越は他分野でも帳票類の電子化を推し進めている。中元や歳暮の注文内容を処理するギフト・システムのバージョンアップもその一環だ。ギフト・システムは昨年に首都圏の各店舗でバージョンアップが行われ、多様なギフトの注文から配送までのリードタイムを短縮するとともに、紙資源の削減に寄与しているという。

三越業務部システム統括担当ゼネラルマネジャー、林哲男氏

 今後のIT導入の取り組みについて、同社業務部システム統括担当ゼネラルマネジャーの林哲男氏は、次のように語る。

 「ITの活用が環境にもよい効果をもたらすとわかったことにより、これからは環境に対する負荷を常に念頭に置きながら、さまざまなシステムを計画していきたいと思っています。環境を重視することが、結果として業務改善につながっていくという逆の発想というわけです。業務改革と環境という両輪の取り組みを通じて、お客様からより信頼される三越となるべくチャレンジしていきます」

 地道ながらも、できることから着実に取り組んで発展させていく。こうした積み重ねが時代の変化に対応した業務革新を実現すると同時に、環境負荷の軽減にも結び付いていくことを、三越の環境経営に対する姿勢から学び取ることができよう。


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