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コンプライアンス

日本版SOX法の最新事情/対応のポイントを知る

金融商品取引法の要点と内部統制評価の進め方を指南

(2006年11月24日)

日本版SOX法への対応スケジュール

 次に、日本版SOX法の運用に関するスケジュールを整理しておきたい(図3)。同法は2008年4月以降に始まる事業年度から適用されるため、対象企業はその時点までに、同法で求められるレベルの内部統制を確立しておく必要がある。


図3:日本版SOX法のスケジュール

 このスケジュールを踏まえ、企業は財務報告に係る内部統制の評価と監査の達成に向けて、次のような作業を順に行っていくことになる。

  • プロジェクトや方針の策定
  • 文書化やリスクの可視化などシステムの構築
  • 内部統制の評価と改善
  • 内部統制の定着活動

 以下、上記の一連の取り組みを行ううえでのスタンスやポイントを、日本版SOX法/内部統制対応の基本スタンス、内部統制プロジェクトの始動時、推進時、運用というフェーズに分けて説明していくことにする。いずれも、筆者がプロジェクトを進めていくなかで気づいた点が中心となるため、網羅的なものではないことをご了解いただきたい。加えて、意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておく。

内部統制/日本版SOX法対応の基本スタンス

(1)経営層が主導する

 金融商品取引法の制定によって、財務報告に係る内部統制の評価・監査は、経営者の義務となった。つまり、内部統制の評価報告書は、企業がCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)として作成する環境報告書などとは重みが異なり、虚偽記載があれば経営者は罰せられる。したがって、内部統制の推進には経営者/経営層が主体的に関与することが重要であり、他のプロジェクトに優先して内部統制プロジェクトに経営資源を割り当てる必要がある。

(2)全社/グループ企業全体で取り組む

 財務報告という言葉からは、経理部門だけが携わればよいと思われがちだが、商取引には当然、現場の営業/販売担当者やその責任者が関係しているため、内部統制には営業/販売部門など、その商取引にかかわりを持つすべての部門がかかわることになる。また、給与の計算・支給を担当する人事部門も内部統制にかかわることになる。つまり、内部統制には、全社の幅広い部門がかかわるわけである。

 財務報告に係る内部統制の評価・監査は連結ベースで行うため、親会社だけでなく、連結グループ全体で取り組むことになるが、連結グループ内のすべての業務が対象となるわけではない。業務の重要性に応じて、評価対象業務が決定される。米国では、金額的・質的観点から重要な勘定項目、事業拠点、業務プロセスの関係を整理し、評価対象業務を決定する。

 連結グループに海外拠点があり、そこで行われている業務に重要性があれば、内部統制の評価・監査の対象となる。その場合には、海外拠点の展開に関する方針を早期に決める必要がある、海外拠点は物理的に離れているうえ、言語の壁、社会制度や文化の違いから、日本では当然できることがすんなりできるとは限らないからだ。

 具体的には、国内本社で計画を立て、アジア、北米、中南米、欧州といった地域ごとに設けられたプロジェクト・チームに指示を与えていくことになる。その際には、作業ステップが増える、言葉が十分に通じない、細かい意識レベルのすり合わせが困難であるなどの問題が生じるおそれがあることを認識しておく必要がある。

(3)内部監査部門を強化する

 今回の制度で求めているのは、内部統制システムの整備や運用ではなく、内部統制を評価することである。上述したように、内部統制の評価は監査人による監査の対象となる。したがって、企業の制度として適切な評価が行えていなければならず、多くの企業にとって新たな課題となるだろう。

 一般的には、内部統制の評価は、経営者とともに内部監査部門が行うことになる。しかし、内部監査部門がこの制度に対処しきれるだけの人的資源を抱えているとは言えないのが、多くの企業の実情である。そこで、内部監査部門を強化する必要が出てくる。財務報告に係る内部統制の評価ができる監査人の育成には時間がかかるので、早急に取り組むべきである。また、場合によっては、新たな人材を雇用したり、外部の専門家の支援を受けたりといった対策も講じる必要がある。

(4)経営層が「法令順守」と「利潤追求」のバランスをとる

 一般に、上場企業であれば、財務報告に係る内部統制はすでに整備されているはずだが、なかには、今回の制度が求める内部統制のレベルをクリアしていない企業も当然あるだろう。というのも、これまでに内部統制よりも業務の効率性が優先された結果、整備されていない部分が存在する企業は少なくないと思われるからだ。

 具体例を挙げよう。営業部門であれば営業利益を上げるために、また、間接部門であればコストを削減するために、省略されてしまっている内部統制がある。利益の減少やコストの増加を伴うことが想定される内部統制を実施するかどうかを判断するのは経営者であって、現場はそれに従うのみである。よって、繰り返しになるが、経営者が主体的に決断を下すことが重要となる。

(5)経営変革の機会ととらえる

 コンプライアンスは、「法律だからしかたがない」という義務感で行いがちである。しかし、法は社会の要請にこたえ、社会に貢献するものであるため、コンプライアンスの推進は企業の信頼性向上につながる。逆に、こうした機会を利用して、企業の革新に取り組むこともできる。したがって、内部統制についても、消極的に対応するのではなく、これを機会に組織を改善していくのだという積極的な姿勢で、経営者が臨むことが何よりも重要である。


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