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電子メール・アーカイブの構築を急ぐ米国企業

「訴訟対策」にとどまらない多大なメリットに期待

(2007年11月09日)

電子メールは、いまや単なるコミュニケーションの手段にとどまらず、企業にとって貴重なビジネス文書と化した感がある。それに伴い、それを保管し、検索するための技術が重要視されるようになってきた。そこで注目されるのが「動的アーカイブ」だ。本稿では、そんな新技術にもスポットを当てながら、電子メール・アーカイブの将来について考えてみたい。

バート・ラタモア
Computerworld 米国版

 最近、米国では、民事訴訟において電子情報が証拠として開示請求されるケースが珍しくなくなっており、こうした事態に対処するために、企業各社は、電子メールを検索することのできるアーカイブ・システムの構築を急いでいる。

 というのも、そうしたシステムがないと、巨額の代償を支払わされることにもなりかねないからだ。実際、米国モルガン・スタンレーは、米国サンビームに関連する訴訟の際に、裁判所が提出を求めた電子メールを提出できなかったために裁判官の不興を買い、結果的に14億4,000万ドルもの賠償金を科せられることになったのである。

 このように、電子メールはもはや、民事訴訟における情報開示の標準要素になりつつあるとも言える。原告側弁護人は、電子メール・アーカイブからいくらでも有利な証拠を掘り出すことができると信じているし、昨年はついに、(米国連邦裁判所が民事訴訟で使用する書類の提出形式を定めた)連邦民事訴訟規則(Federal Rules for Civil Procedures:FRCP)が改正され、第26条に、(電子メール、ワープロ文書、表計算、Webページなどの)非構造化データが情報開示対象として追加されることになった(関連記事)。

 これは、フォーブス誌の「グローバル2000」に選定されるような大企業だけではなく、あらゆる企業にとって脅威となる。どんな企業も民事訴訟に巻き込まれる可能性はあり、そしてどんな訴訟においても、関連性のある電子メールの開示請求がなされる可能性は否定できないからだ。自分の会社がこのトレンドを見過ごしていると感じるCIOは、その危険性を一刻も早くCEOに警告すべきである。

 現時点における電子メール・アーカイブの最大の課題は、「開示請求された電子メールをいかにすばやく見つけ出せるか」ということにある。アーカイブは本来、コンピュータがクラッシュした場合などに備えてバックアップを取っておくためのテープの集合体であり、日常的にはほとんど忘れられた存在になっていると言っても過言ではない。現実に、「数年前の」「ある特定のテープを」「即座に」見つけ出すことのできる企業がいったいどれだけ存在するだろうか。

 実際、サンビーム訴訟におけるモルガン・スタンレーの場合にも、裁判所から開示を命ぜられた情報を見つけ出すのに手間取り、全米各地のオフィスや倉庫の片隅から該当するものを見つけ出しては、そのたびに提出するという体たらくを演じたために、裁判所の怒りを買うことになってしまったのである。

 だが、あきらめるのは早すぎる。きっちりとしたアーカイブ・システムを構築すれば、過去の電子メールの検索はもちろんのこと、より有意義な活用も可能になるのだから。

電子メールに含まれる貴重なデータ

 企業のシステム導入を支援するコミュニティ「ウィキボン・ドット・オルグ(Wikibon.org)」の共同創設者、デビッド・フロイヤー氏は、先ごろウィキボンが開催したパブリック・ミーティング「Peer Incite」で、「大半の非構造化データにはそれ自身のメタデータはほとんど含まれていないが、電子メールだけは例外だ。電子メールのヘッダには、だれがだれと話しているのか、組織は具体的にどのように機能しているのか、といった有用な情報(メタデータ)が含まれている」との指摘を行った。

 さらに同氏は、「現在、セマンティック検索の実現に向けて、データを自動分類するニーズが非常に高まっているが、これは組織が自らを守るうえでも必要不可欠なものだ」とも指摘している。

 セマンティック検索が可能になれば、例えば、企業の人事部門は精神的ハラスメントやセクシュアル・ハラスメントに関連する証拠をすばやくアーカイブから探し出すことができるようになるだろうし、営業部門は契約違反の疑いを示すデータを、また購買部門は従業員による盗難の証拠を検索できるようになるだろう。これにより、経営幹部は、民事事件や刑事事件が立件される(裁判沙汰になる)前に、事態に介入することができるのだ。

 電子メール・アーカイブ・ソリューションを提供する米国ミモザ・システムズの事業開発担当マネジャーで、先のウィキボンのミーティングにも参加したマーティン・テュイップ氏は、(非構造化データのアーカイブを使った)データ分析は、法的問題の回避という所期の目的を超えて、組織が実際にどう機能しているか、だれがだれに対して影響力を持っているか、社員間にどのような私的コミュニケーション・ラインが形成されているかといったことを把握するうえでも役に立つとしている。

 また、同氏は、これらの分析情報を通じて、成功するプロジェクトとそうでないプロジェクトの違いを見抜くことなどが可能になるとも指摘する。「企業は今後、非構造化データの統一リポジトリを構築し、そこからビジネス・アプリケーションを介して必要な情報を引き出せるようになる」というのが、テュイップ氏が描く近未来像なのである。

 これに対し、「そのためには新しいタイプのアーカイブが必要になる」と主張するのは、コンサルタントでウィキボンの最高コンテンツ責任者(CCO)を務めるピーター・バリス氏だ。

 「これまでアーカイブは静的だった。しかし、われわれは将来に向けて動的なアーカイブ(アクティブ・アーカイブ)を提案していく。これは、具体的に言えば、アーカイブ上でさまざまなアプリケーションが稼働するようなシステムだ」(同氏)

 また、ウィキボンのフロイヤー氏は、「このようなアプリケーションは、(ニーズの変化に応じて)どんどん進化していくことになるだろう」と予測する。同氏が想定しているのは、2層構造のアーキテクチャだ。このうち、下層は従来のアーカイブ、関連ハードウェア、データ・キャプチャ/セマンティック分類ソフトウェアなどによって構成されており、上層では急速な進化に対応可能な柔軟性の高いビジネス・アプリケーションが走るという。

 一方、テュイップ氏は、こうした動きに伴って、アーカイブ管理者の職務もいずれ2つに分割されることになるだろうと予測する。バリス氏も、テュイップ氏と同様、データ管理業務がデータ管理者とデータベース管理者とに二分されたように、アーカイブ業務も分割されることになるのは必至だとみる。下層アーカイブはアーカイブ管理者が担当し、上層のビジネス・アプリケーション・レイヤについては、それを管理するための新たな職種が登場するというのである。

 ウィキボンの共同創設者、デビッド・ベランテ氏は、こうした職種を「記録管理(Rrecords Management)」と名づけ、IT関連の技術職というよりもビジネス寄りのポストになると見ている。

新たなビジネス・チャンスの到来

 フロイヤー氏が言うように、アーカイブ管理業務は、複雑で新しい作業を要する業務となるだろう。なぜなら、重要な法的要件や急速に変化するビジネス・ニーズに対処するだけでなく、いずれはワープロ文書、表計算、Webページなど電子メール以外の非構造化データを取り扱うことにもなるからだ。

 さまざまな非構造化データをアーカイブに取り込むようになれば、民事/刑事訴訟の厳しい証拠開示要求に備えるため、あるいはコーポレートWebサイトにおけるユーザー体験を文書化するために、文書データに付加するメタデータの数は爆発的に増えることになるのである。

 そうなれば、アウトソーシング・ベンダーは大きなビジネス・チャンスを得る。「多くの企業は、複雑な作業を社内で抱え込むのを嫌う。そこで彼らは、法的要件を満たし、ビジネス・ユーザーをサポートするメソッドを保有するサービス・プロバイダーを探し始めることになる」(フロイヤー氏)からである。

 その構築・運用をアウトソーシング・ベンダーに頼ろうと、自力でやり抜こうと、今や、アーカイブ・システムは企業にとってなくてはならない存在である。フロイヤー氏は言う。

 「電子メールは、今日の企業にとっていわば生命線だ。電子メールなどの非構造化データに含まれる組織情報のアーカイブ化は、(裁判所が定めた期日に書類を提出できないために科せられる)罰金を回避する以上の、多大な価値をもたらす。IT部門は、当面、アーカイブ・システム第1弾の構築に忙しいだろうが、動的アーカイブという最終目標を常に意識しながら作業に取り組むことをお勧めしたい」

(Computerworld.jp)




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