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【連載】
新時代のITキャリア【ITトレーナー編】
第14回 「一般ユーザー・トレーナー」
(2007年12月27日)
IT業界では常に新しい技術が誕生している。そしてそれに伴いさまざまな職種や役職が誕生している。本連載では、IT業界の職種を取り上げ、その仕事内容や必要とされる能力、労働条件や待遇といったものを紹介していくことにしたい。今回からは「ITの教育」に焦点を当て、いくつかのITトレーナー職について見ていくことにしよう。まず、本稿ではPC初心者にコンピュータの操作を教える「一般ユーザー(エンドユーザー)トレーナー」を取り上げる。
横山哲也
グローバル ナレッジ ネットワーク、マイクロソフトMVP
【職務概要】
ITに精通していない一般利用者に対し、コンピュータ操作を教える。ちなみに、IT教育機関では「エンドユーザー・トレーナー」と呼ぶのが一般的だ。この場合のエンドユーザーは、「コンピュータの端末を操作する人」という意味ではなく、「コンピュータを利用する人のうち、ITを専門としていないすべての人」を指す。ほとんどの場合、教室や講習会などで複数の生徒を対象に教えることになる。また上級トレーナーになると、講習会で利用するテキストの作成や、エンドユーザー・トレーナーの育成も職務範囲となる。
PC初心者に対する具体的な教育内容として、PCの電源の入れ方に始まり、キーボードとマウスの操作方法、OSとアプリケーションの基本的な使い方がメインとなる。また最近では、ネットワークへの接続方法なども教えることがあるようだ。もちろん、エンドユーザー・トレーナーが高度なトラブル・シューティングやネットワークの“設計”を教える必要はない。
【存在意義】
エンドユーザー・トレーナーは、単に「コンピュータの使い方」を教えるのではなく、「コンピュータで何ができるのか」も教えなければならない。
多くのPC初心者は、「コンピュータで何ができるのか」がわかっていない。場合によっては「何がしたいのか」すらわかっていない。そうしたPC初心者の潜在的な要求を聞き出し、どうやって実現するかを考え、そのための具体的な操作方法を教えるのが仕事である。
ただし、実際は「何がしたいのか」から教えることはめったにない。業務でPCを利用する人は、自分がPCでやりたいことのイメージ(Excelで○○を集計したい/Wordで報告書を作成したいなど)を持っている。また、個人でも「年賀状を作成したい」「電子メールを利用したい」と目的を持っている人がほとんどだ。
【必要な経験/スキル】
コンピュータ用語には、特殊な単語や一般的な意味と異なることばが多い。略語が多いのも特徴だ。多くの人は、カタカナ語と略語が出てくるだけでやる気をなくす。平易なことばで専門的な知識を伝えるスキルは重要だ。
コミュニケーション・スキル
第10回で紹介した「ヘルプデスク」と同様、コンピュータの初心者を対象とするため、一般的なコミュニケーション・スキルは必須である。
さらにエンドユーザー・トレーナーは「初心者の気持ちを理解する」ことも重要だ。「マウスが机の端まで到達し、これ以上動かせません」と言われたら、「マウスを持ち上げて戻してください」と即座に指示しなければならない(これは、筆者が初めてマウスを使ったときの実話である)。
「マウスは卓上で動かすもので、直接画面に接触させるものではない」とか、「画面をクリックするは、マウス・カーソルを画面に持っていって、マウスのボタンを押すことである」といった、PC操作に慣れた人にはあたりまえのことをていねいに教える必要がある。
プレゼンテーション能力
講習会を担当することが多いので、発声や話の組み立てを行うスキルも重要である。可能であれば専門的なトレーニングを受けることが望ましい。
ソフトウェアの知識
高度な知識は必要ないが、講習会で利用するソフトウェアに関しては十分な知識が必要だ。要求される知識よりも、ワンランク上の知識を習得していることが望ましい。
論理的な文章を書く能力
上級トレーナーは、講習会で利用するテキストを作成することも仕事の1つである。したがって、論理的な文章を書く能力も求められる。
【適した人材】
人と話すことが好きな人、人とのコミュニケーションを嫌がらないことが最低条件である。良好なコミュニケーションは、経験を積めばテクニックで補えるので、上手下手はあまり関係ない。相手に「どうしても理解してほしい」という強いモチベーションを持てることも大切だ。
一方、コンピュータの知識はそれほど高度なものは求められない。実のところ、得意である必要もないと言ってよい。むしろコンピュータが苦手な人のほうが受講者の気持ちを理解しやすいため、すぐれたトレーナーになることが多いのだ。あまりいないと思うが、「コンピュータは苦手だけど、好き」という人が理想的である。
【雇用側が求める能力】
前向きで万人に受け入れられる性格(キャラクター)。トレーナーは短期間で複数の受講生に教えるため、受講生の好き嫌いを表面に出してしまうような性格の人材は不向きだ。
【採用の決め手となる“究極の質問”】
「母校の中学校で、インターネットの使い方教室を担当してもらえますか」
今まで取り上げてきた職種とトレーナー職の大きな違いは、複数のレベルや意識の異なるユーザーを相手とすることである。エンドユーザー・トレーナーとはいえ、通常接する「受講生」は、多かれ少なかれPCに興味がある(またはPCを操作しなければならない必然性に迫られている)人たちである。しかし中学校で教えるとなれば、そうはいかない。中学生の集中力を途切れさせないだけでも一苦労である(自分の中学時代を思い出してほしい)。
そういった中学生たちに「ものを教える」ことを尻込みしているようでは、エンドユーザー・トレーナーは務まらない。集合教育は未経験でも、自分が教壇に立っている姿を想像できないようでは、この仕事は難しい。
【年収】
エンドユーザー・トレーナーには高度なITスキルは要求されない。そのため年収も300万円から500万円と、ほかのIT業種と比較して低い。実際の現場では派遣社員も多く、待遇もあまりよくない(ことが多い)。
ソフトウェア・ベンダーの認定資格を取得すれば、多少の年収アップは期待できる。しかし、トレーナーのままで年収700万円を超えるのは難しいだろう。専門職としてのキャリアアップを望むなら、プロフェッショナル向けのトレーナーを目指そう。
- 新時代のITキャリア【ITトレーナー編】
- 第1回 「オフショア・プロジェクト・マネジャー」
- 第2回 「ベンダー・マネジャー」
- 第3回 「BIアナリスト」
- 第4回 「IT財務責任者」
- 第5回 「下流プログラマー」
- 第6回 「上流プログラマー」
- 第7回 「システム・エンジニア」
- 第8回 「プロジェクト・マネジャー」
- 第9回 「アーキテクト」
- 第10回 「ヘルプデスク」
- 第11回 「テクニカル・サポート」
- 第12回 「システム管理者」
- 第13回 「ネットワーク管理者」
- 第14回 「一般ユーザー・トレーナー」
- 第15回 「ITプロ/開発者向けトレーナー」
- 第16回 「ITコンサルタント」
- 第17回 「CIO(Chief Information Officer)」
- 第18回 「CSA(Chief Software Architect)」















