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[米国]
セールスフォースのシステム・ダウン──「事後対応のずさんさ」にユーザーの不満が集中

(2006年02月01日)

 米国セールスフォース・ドットコムのオンデマンドCRMアプリケーション・サービスが、昨年12月20日に続いて1月30日にもダウンした。それに対するユーザーの不満は、「障害」そのものよりも、同社の「事後対応のずさんさ」に集中しているようだ。

 セールスフォースのシステムは、1月30日に5〜6時間にわたって断続的にダウンを繰り返した。これにより、顧客が社外のアプリケーションとデータにアクセスするために使用しているAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)がほぼ終日機能しなくなった。

 今回のダウンは、昨年12月のダウンと同様に、セールスフォースのシステム、およびその運用管理体制の不備を露呈させた。と同時に、彼らの事後対応の悪さも浮き彫りにする格好となった。また、この事故を機に、セールスフォースのサービスが内包している「スローダウン」の問題にもあらためて注目が集まっている。これは、「システムが完全にダウンしなくとも、そのレスポンス速度が急激に悪化する」という問題であり、複数の顧客がこの種の問題に頻繁に遭遇したと報告している。

 セールスフォース側は、今回の障害の原因や継続時間、深刻度などについて、まだ公式に何も説明していない。さらに、IDG News Serviceが1月31日に接触した同社戦略担当幹部のブルース・フランシス氏も、それらの明言を避けている。

 そうしたなか、一部のユーザーは、システム障害発生時(および、事後)における同社の顧客対応のずさんさに不満をつのらせており、SalesForceWatch.comなどのブログで、怒りを発散したり、ログやダウンタイム通知を交換したりした。ダウン時の不満を記録するために自分専用のブログを立ち上げたユーザーもいる。

 セールスフォースはこれまで、同社サービスの安定性をしきりに強調してきた。ところが、「サービスのアップタイム(もしくは連続稼働率)」に関する具体的な保証を、顧客に対して行っているかどうかの明言を避けてきた。また、フランシス氏も、今回の事件に関連して、セールスフォースの「(アップタイム保証を含む)サービス・レベル保証条項」について何も語ろうとしなかった。

 ちなみに、IDG NEWS SERVICEが独自に取材した複数の顧客は、自社とセールスフォースとの契約にサービス・レベル保証は何も含まれていないとしている。だが、セールスフォースのSEC(米国証券取引委員会)提出文書には、一部顧客とそうした条件を取り決めたと明記されている。

 周知のとおり、セールスフォースは、ここ数年で急成長を遂げており、同社がホスティングしているセールス/顧客サービス/マーケティング管理システムの(2005年10月末時点における)ユーザー数は全世界で35万人強(社数にして1万8,700社)に達している。その顧客リストの中には、数千以上のユーザー・ライセンスを購入する大規模企業もいくつか含まれており、それらの企業が、サービス・レベル保証や保証不履行時の罰則規定なしで大きなソフトウェア契約を結ぶとは考えにくい。

 しかし、セールスフォースの顧客の多くは、12ユーザー以内のライセンスを購入する小規模な会社である。セールスフォースは、こうした顧客との契約に、サービス・レベル保証やサービス・ダウン時の返済金などの条件を盛り込むのを避けているようだ。

 実際、7人の従業員のためにセールスフォースから7ユーザー・ライセンスを購入しているニュージャージー州の開発会社、インターネット・クリエーションズのチャド・マイヤー氏は、「以前、サービス・ダウン時の返済金に関する取り決めを結ぼうと、セールスフォースとねばり強く交渉したが、拒否された」と証言している。マイヤー氏は、そうした対応に不満は感じたものの、結局、今月初めにセールスフォースとの契約を1年更新した。ただし、たび重なる障害や導入予定の新機能が当初の計画どおり提供されなかったことなど、サービス上の問題点を数多く指摘した結果、セールスフォース側に、ユーザー当たりの月額料金の値引きを了承させたという。

 それでも、マイヤー氏は、今回の障害を機に他のCRMホスティング・プロバイダーへの乗り換えを検討している。仮に、セールスフォースムの顧客対応が今後も改善されなければ、「乗り換えを断行する」と同氏は明言し、こう続ける。

 「私が問題にしているのは、障害そのものよりも、障害が起きたあとの彼らの対応だ。例えば、今回の障害が起こっている最中に、彼らは障害発生を認めたものの、復旧の予定時刻は示さなかったし、事後の謝罪や説明もなかった」

対応改善への期待

 もっとも、セールスフォースが提供するITサービスの利用状況や利用形態によって、顧客企業が感じる障害の深刻度はそれぞれ異なる。そのため、サービス・レベル保証の必要性についての認識に差があるようだ。

 例えば、2002年からセールスフォースのサービスを使い続け、現在、125ユーザー・ライセンスを導入しているペンシルベニア州デボンのITサービス会社、ディシジョンワンの幹部、フランク・テート氏は、「セールスフォースのサービスはスムーズであるし、過去2年間で1度しかダウンを経験していない。サービス・レベル保証の必要性は特に感じない」と語る。

 また、業界アナリストの中には、セールスフォースの顧客対応は早晩改善されると見る向きもいる。米国ヤンキー・グループのアナリスト、シェリル・キングストーン氏は言う。

 「サービス/サポートの品質は、顧客企業がセールスフォースようなITサービス・プロバイダーを取捨選択するうえで最重要の指標だ。そのことは、セールスフォースも十分に理解しているだろう。確かに、顧客数の急増に彼らのシステムやサービス体制はまだ追いついていないかもしれない。だが、例えば、コンティンジェンシー・プラン(不測事態対応計画)の不備は、彼らに限らす、若くて急成長中の企業にはよくあることだ。セールスフォースが企業として成熟していくにつれて、顧客対応は必ず向上するだろう」

 とはいえ、セールスフォースが顧客サービスのレベルアップを早急に進めなければ、競争相手にシェアを奪われる可能性もある。というのも、彼らの競合他社は、セールスフォースの顧客奪取を目的に、アップタイム保証やバックアップ条項をすでに掲げているからだ。

 例えば、ネットスイート(NetSuite)は、システムの整備・保守計画に沿った停止時間を除いて、月〜金曜日(および、土日の大半の時間)に「(連続稼働率)99.5%」のアップタイムを保証しており、その水準に達しなかった月には違約金を支払うとしている。

 また、セールスネット(Salesnet)も、契約で99.6%のアップタイムを保証している。ちなみに、同社のサービスの場合、昨年1年間における予定外のダウンタイムは1時間だけだったが、2時間のシステム・ダウンが発生した場合に備えて、顧客対応の方針をきちんと用意している、具体的には、トップ・レベルの顧客に対しては、1時間ごとにシステムの現状と復旧プランについての最新状況を同社幹部が電話で報告し、それ以外の顧客に対しては、営業担当者が電子メールを送るという。

 この種の通知こそ、セールスフォースに対して顧客が望んでいることでもある。あるユーザーは、SalesForceWatch.comへの書き込みの中で、「セールスフォースが100%のアップタイムを確保できるとは思っていないし、そのようなことはまったく期待していない。ただし、問題発生時に顧客に状況をきちんと伝達することを100%確約してもらいたい」と述べている。

 ちなみに、このユーザーの会社では、セールスフォースのシステムがダウンすると46人の従業員の仕事がストップし、数千の取引客に影響するという。

 もちろん、自社内で運用しているアプリケーションにも、クラッシュやスローダウンは起こりうる。また、ITサービス・プロバイダーが、システム障害の発生率をゼロにするのも不可能であろう。その意味でも、問題が起きた後にどのように対処し、事態の収拾を図るかが重要なのである。

(IDG News Service ニューヨーク支局)




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