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「デル神話」は続いているのか。PC市場の革命児の今を追う

新社長の下、顧客満足度の向上、エンタープライズ事業の拡大に強い意欲を見せる

(2006年09月01日)

顧客満足度向上の要となる宮崎カスタマーセンター

 宮崎カスタマーセンターは、2005年11月17日に開設され、国内向けのユーザー・サポートと電話によるセールス(インバウンド・セールス)を行っている。当初は100人体制でスタートしたが、前述のとおり年内には500人体制、2010年には1,000人体制となる計画だ。なお、現在の300人のうち、約100人がテクニカル・サポート、約200人がセールスを担当しており、全員がデルの社員である。

写真3:デルの宮崎カスタマーセンター所長兼ホーム&ビジネスセールス事業本部統括事業本部長の天野総太郎氏

 宮崎に拠点を設置した理由を、宮崎カスタマーセンター所長であり、ホーム&ビジネスセールス事業本部統括事業本部長を兼務する天野総太郎氏(写真3)は、「PCの普及率、労働人口、教育レベル、そして地域の文化といった要素を総合的に評価し、宮崎への進出を決定した」と語る。

 また、宮崎県や宮崎市では、産官学が一体となってIT人材の育成に積極的に取り組んでおり、いわゆるUターン/Iターンも強力にバックアップしている。これらが雇用の活発化に大きな威力を発揮しており、宮崎カスタマーセンターにおいても、実際に9割が県内からの採用だ。

 インバウンド・セールスは、新聞や雑誌などに掲載されたデルの広告を見て、電話でPCを注文したり、購入前の相談を行う人たちへの対応が主な業務だ。宮崎カスタマーセンターでは、中小企業やSOHO、個人の顧客を主な対象としている。デルにとって、電話やWebによるダイレクト販売は主軸の1つ。それだけに、同センターが担う役割は大きい。

 「今後は、マーケティング・チームの一部を宮崎に設置し、セールスとマーケティングの一体化をさらに進めたい」(天野氏)

写真4:ジャパンサービス統括本部宮崎カスタマーセンターテクニカルサポート本部長の大宮哲夫氏

 もう1つの役割であるテクニカル・サポートに関しては、企業向けデスクトップPC「Optiplex」シリーズが主な対象だ。「顧客調査では宮崎カスタマーセンターのサポートは高く評価されている。短期間でここまでの高評価が得られたのは予想以上の成果」と、サポート部門を統括するジャパンサービス統括本部宮崎カスタマーセンターテクニカルサポート本部長、大宮哲夫氏(写真4)は胸を張る。

 実はここ数年、デルは顧客満足度の低下という大きな問題を抱えてきた。コンシューマー向けのテレビCMの開始や、初心者層までをターゲットとした製品群の投入などにより、シェアは3位まで上昇したが、その一方で、サポート体制の整備が遅れ、顧客満足度を引き下げたのだ。

 初心者の顧客が増えたことも、サポート現場での対応の遅れを助長した。問い合わせ件数が増加するとともに、1件の対応時間が長時間化したからだ。

 そこでデルは、大規模な改革に乗り出し、その一環として、宮崎カスタマーセンターを設置した。これに加え、今年2月には、一部のアプリケーションに関するヘルプデスク・サービスを有料で開始したほか、米国で提供しているPCリモート診断サービス「Dell Connect」も、準備が整い次第、開始する予定であるという。

 また、昨年10月には、PCに同梱しているサポート・マニュアルに日本独自のものを一部追加した。これは、電話による問い合わせが多い質問をまとめた128ページの冊子という形で提供され、この半年ですでに2回の改訂が行われている。

 「問い合わせ内容の傾向が変化するのに応じて、マニュアルを改訂している。このような対応も、社員が直接サポートを行い、問い合わせ履歴をリアルタイムで集計できるダイレクト・モデルならではの強みである」(大宮氏)

 これらの取り組みによって、デルの顧客満足度は回復しているようだ。「デルでは、テクニカル・サポートを受けた人のうち、毎週約1,800人を対象に20以上の設問を用いた顧客満足度調査を行っている。この結果を見る限り、サポート体制に対する評価は確実に改善している」と大宮氏は語る。

スケールアウトを主軸に置くエンタープライズ戦略

 メリット氏が示した2つ目の方針が、「エンタープライズ/サービス事業の拡大」である。同氏は、「私には、エンタープライズ事業の豊富な経験やノウハウがある」と自信を見せる。

写真5:デルのエンタープライズマーケティング本部長の桜田仁隆氏

 ここでも2つのポイントがある。その1つは、6月20日に発表した、第9世代サーバと呼ぶIAサーバを主軸にした戦略だ。デルは、「スケーラブル・エンタープライズ」というコンセプトを提唱している。標準化された技術を活用することで、高い投資効果を得られるシステム構築や、効率的な運用管理を可能とする考え方だ。エンタープライズマーケティング本部長を務める桜田仁隆氏(写真5)は、「第9世代サーバは、スケーラブル・エンタープライズ戦略を、より現実的なものとする」と語る。

 第9世代サーバは、1Uラック型の「PowerEdge 1950」、ブレード・サーバの「同1955」、タワーおよび5Uラック型の「同2900」、2Uラック型の「同2950」の4機種(写真6)が第1弾として投入され、第9世代であることを示すために、いずれも型番の100の位は「9」となっている。CPUに5000番台(開発コード名:Dempsey)または5100番台(開発コード名:Woodcrest)のデュアルコアXeonプロセッサを搭載することにより、従来製品と比較して最大152%のパフォーマンス向上を図りながら、最大25%の消費電力低減を実現している。


写真6:第9世代サーバ。「PowerEdge 1950」(左上)、「同2950」(左下)、「同2900」(中央)、「同1955」(右)の4機種

 さらに、Fully Buffered DIMM(FBD)DDR2メモリを採用し、ハードディスクはSAS(Serial Attached SCSI)、SATA II(Serial ATA II)のいずれにも対応している。ラック型では、2.5インチと3.5インチの両方のSASドライブを搭載可能だ。

 「最新の標準技術により、処理能力と可用性が向上している。加えて、ハードディスク構成は、性能と信頼性を重視する場合と、容量とコストを重視する場合というように、用途に合わせてを柔軟に選択できる。ここに第9世代の特徴がある」(桜田氏)

 このスケーラブル・エンタープライズの基盤となるのがスケールアウト型のシステム構築手法である。スケールアウトとは、複数台のサーバやストレージで現在のビジネス規模に適したシステムを構築し、将来、ビジネスが拡大した際に必要に応じて機器を追加していくという考え方だ。初期投資コストが低く抑えられる、必要なときに最新の性能を持った機器を最適なコストで導入できる、柔軟性が高くリソースを有効活用できる、といったメリットがある。

写真7:中国厦門のCCCに新設された生産拠点。日本など中国以外のアジア地域向けのPC、サーバを生産する

 これに対して、数年先のピーク需要に耐えうるようなハイスペックの単一システムを用意するスケールアップ型の構築手法では、稼働当初はそのシステムの性能は十分に活用されない。そのため、導入後、しばらくの間は、膨大な投資額に見合わない状態が続くことになる。また、デルの説明では、スケールアップにはベンダー固有の独自技術を採用したハードが多く、さらに、需要のピークを超えると、システム全体のリプレースが必要になるケースも多いという。

 IT資産を保護しながら、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できるという点で、現在においてはスケールアウトが最適な選択肢だというのがデルの見解なのである。「第9世代サーバの登場によって、ユーザーが享受できるスケールアウトのメリットは、ますます大きくなるだろう」と桜田氏は語る。

写真8:CCCの内部。ベルトコンベアが縦横無尽に工場内を行き交う。ユーザー個別仕様での生産が可能

 加えて、デルでは、生産拠点の強化も図った。デルの日本向け製品は、中国福建省の厦門(アモイ)にあるCCC(China Customer Center)で生産されている(写真7、8)。2000年11月に稼働した同工場は、日本や中国をはじめとするアジア向けの製品を生産しているが、このほど、新たな生産設備を隣接地に建設。既存の生産設備を中国向けとし、日本向けを含めて中国向け以外の製品は、すべて新設備で生産される。

 「品質を維持するために、プロトタイプによる事前評価、最終製品の品質チェックの実施、工場での検査体制の継続的な改善などに取り組んでいる」(桜田氏)。

 新たな生産設備によって、安定した供給体制とともに、品質管理の強化も図るというわけである。


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