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データセンター革新

設備・設計から考えるデータセンターの「電力供給と冷却」

米国企業3社は“電力食いのヒート・アイランド”にどう立ち向かったか

(2006年09月08日)

Case Study 02……ILM
床下のケーブルを整理し、ブレード・サーバのラック間を空けて対処

 米国サンフランシスコにある、ルーカス・フィルム傘下の映像製作会社のインダストリアル・ライト&マジック(ILM)は移転の際、新たに1万3,500平方フィート(約1,250平方m)のデータセンターを建築した。そこでは、床を2フィート(約60cm)かさ上げして、21台の空調ユニット(総合冷却能力は600トン以上)と1平方フィート当たり最大200ワットに対応できる電力供給設備を設置することで、28台のラックに収められた多台数のブレード・サーバへの電力供給を実現している。

■電力供給問題への対処のポイント

 最新設備を誇るかのように見えるILMのデータセンターだが、管理を務めるシニア・システム・エンジニアのエリック・バーメンダー氏は、「完成と同時に時代遅れになってしまった」と打ち明ける。

 同氏によると、設計図では1列当たり6台のラックを収容できるようになっていたが、実際には、各列に2台のラックしか入っていないという。これは、コンセントの数が足りないからである。かさ上げした床の下に敷設された2本の配電レールは、1台のラックにつき4個の電源プラグをサポートするよう設計されているが、最新のブレード・サーバ用ラックは、5〜7個のコンセントを必要とする。したがって、ラック6台分のサーバを組み込むためには、別の所から電源を調達しなくてはならないのだ。

■冷却問題への対処のポイント

 トリニティ同様、ILMのデータセンターでもブレード・サーバ用ラックの放熱が激しいため、ラックの列の間隔を空けることによって放熱を分散している。上述した、電源の都合から1列当たり2台のラックしか設置できないという制約が逆に功を奏した形となったわけだ。

 なお、ラック内でスペースを空けてブレードを収めることによってラック内の温度上昇を抑えるという手もあるが、バーメンダー氏はこの方法では不十分だと考えている。「スペースを空けると、サーバの集積度が低下してしまう。集積度が高いほうが、電力消費量の大きいファンの設置数が少なくて済むので、全体の消費電力は節減される」(同氏)

 移転前のデータセンターの空調ユニットは、対面の状態で配置されており、12インチ(約30cm)かさ上げした床の下には空気が滞留するスペースが生じていた。7年間にわたる機器の移動や変更の結果、床下の電源ケーブルやネットワーク・ケーブルが乱雑に放置されたままになり、これらが空気の流れを阻害していたのだ。そこで同社は、祭日と重なる週末の3日間にわたり、データセンター全体の電源を落として、床板を外して不要なケーブルを取り除き、使用中のケーブルを整理するという作業を行った。その結果、いくつかの区域で空気流量が10立方フィート/分(cfm)から100cfmに改善されたという。

写真1:IBMのラック冷却システム「IBM eServer Rear Door Heat eXchanger」。ラックのドアに水冷パイプを内蔵し、冷却水を循環させることでラックの発熱を抑える

 しかし、機器の数が多すぎたため、この策も気休めにすぎなかった。バーメンダー氏は、この移転がなかったら、データセンターをコロケーション施設に預けるしか選択肢はなかったと語り、「古いデータセンターの管理者たちは、われわれと同様の問題に遭遇する可能性がある」と警告する。

 なお、バーメンダー氏は、「IBM eServer Rear Door Heat eXchanger(開発コード名:Cool Blue)」(写真1)のようなラック内蔵型の冷却システムは利用したくなかったと話す。なぜなら、結局、維持すべき冷却システムを増やすことになるからだ。「統一冷却方式のほうが消費電力の面ではるかに有利だと判断した」と同氏。

 HPのドナベディアン氏は、「皮肉なことに、多くのデータセンターでは、必要以上の冷却能力を持っているにもかかわらず、実際には、機器を十分に冷却できないでいる」と指摘する。同氏の推定では、データセンターの送風システムの効率を最適化することで、最大で35%の電力料金を節約できるという。

Case Study 03……テレマーク・ワールドワイド
床上げと十分な天井高の確保によって対処

 ILMのバーメンダー氏のアドバイスは、ITサービス・プロバイダーの米国テレマーク・ワールドワイドが運用する顧客用のデータセンターにもそのまま当てはまりそうだ。同社のCOO(最高執行責任者)のマービン・ホイーラー氏が管理する、1平方フィート当たり100ワットをサポートするよう設計された60万平方フィートものコロケーション施設でも、消費電力と冷却の問題が徐々に大きくなりつつあるという。

 テレマークのコロケーション施設は、床が24インチかさ上げされ、天井までの高さが20フィートとなっているため、空気流を管理するスペースは十分である。さらに、同社はフロア・スペースをいくつかのゾーンに分割し、必要に応じて空気流を増減している。また、同施設では、あらゆるサーバに対して2倍の電力容量を確保してあるという。

 しかし、ホイーラー氏は危機感を感じ始めている。同社の顧客が高さ10フィートあるいは12フィートのラックに移行しつつあり、床面積当たり電力量が3倍にも増加するケースがあるからだ。今のところ、テレマークは使用する床面積に基づいて料金を請求しているが、コロケーション・サービス・プロバイダーは、今日の状況に応じて、料金モデルを改定する必要がありそうだ、と同氏は指摘する。「今後は、床面積よりも消費電力量をベースとした価格設定が増えてくるだろう」(同氏)

*  *  *

 以上、3社が実践したデータセンターの電力供給、冷却の問題に対する取り組みを紹介した。なお、今回説明しきれなかった内容も含め、データセンターの電力と冷却の問題を解決するための対処法を表1に示したので、参考にされたい。

 EYPのグロス氏は、サーバ・ラック1台当たりの平均消費電力量は、この3年間で2倍になったと指摘し、次のように警告している。「床面積当たりの電力量は今後、さらに加速をつけて増大していくと思われる。しかしながら、半導体の分野で低消費電力を実現するCMOSが登場したときのような解決策は見えていない。よって、工夫するしかない」


表1:データセンターの電力と冷却の問題を解決するための8つの対処法

COLUMN
データセンターの電力問題の解決策として注目を集めるDC給電システム

 電源の供給方式には、AC(交流)方式とDC(直流)方式があり、電源ソケットから流れる商用電源はACとなっている。ただし、CPU、メモリ、ハードディスク・ドライブなどの動作電源はDCであるため、AC給電方式のIT機器はこれらを動作させるために、機器内で電流をACからDCへ変換しなければならない。また、AC給電方式のデータセンターに配置されているサーバは、通常UPS経由で電力が供給されるが、この場合、UPSが商用電源をDCに変換してバッテリに蓄電しつつ、再度ACに変換して、IT機器に電力を送るため、電流変換は合計3回行われることになる(図A)。

 一方、DC給電方式のシステムにおいては、電流変換はACからDCへ1回行うだけでよい(図B)。これより、変換に伴う電力のロスや発熱量が低減し、消費電力量を抑制することが可能になる。そのほか、DC給電方式はAC給電方式よりも回路が簡素であり、故障時には直接バッテリから電源を供給することができるため、システムの信頼性の向上も図られるとされている。


図A:AC給電方式のIT機器の給電の仕組み

図B:DC給電方式のIT機器の給電の仕組み

 ちなみに、電流変換に用いられる電力は決して少なくない。米国EYPミッション・クリティカル・ファシリティーズの調査によると、450ワットのサーバの場合、電流変換のために用いられる電力は約35%だという(図C)。

 現在のところ、一般企業向けの製品でDC給電方式に対応しているIT機器(サーバ、スイッチ、ルータなど)は多くないが、増加の傾向にあり、今後の普及が見込まれている。


図C:450ワットのサーバの消費電力の内訳


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