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データセンター革新

高可用システムの根幹を成す「物理インフラ」を再点検する

データセンターの「立地・建築・設備」やサーバ・ルームの「電力/熱問題」に着目

(2007年05月10日)

ITシステムを構成する各種のハードウェアやネットワークは、電源や空調をはじめとする設備やそれらを収容する建物といった物理的なインフラストラクチャ(物理インフラ)の上に成り立っている。ビジネス・コンティニュイティを実現するには、そうした物理インフラの信頼性を高め、ITシステムの可用性や災害など非常事態に対する耐久性を高めていく必要がある。本稿では、IT/IS部門スタッフがこうした物理インフラに対してどう取り組むべきかを探る。

小山健治

データセンターで
問題化する「電力」と「熱」

 クレーン船が送電線に接触したことが原因で、真夏の首都圏が長時間にわたって麻痺した2006年8月14日の大規模停電は記憶に新しい。この事故で、大都市の生命線のもろさが、はからずも露呈した格好だ。また、地震や津波、洪水などの広域災害も生活やビジネス活動にとって見逃し難い脅威である。それに、日本国内ではまだ危機感が薄いが、欧米では爆破などのテロ行為も社会にとって大きな脅威となっている。そうしたことを背景に、今、経営と直結するITシステムをさまざまな非常事態から保護し、リスクとビジネス・インパクトに見合ったビジネス・コンティニュイティを確立することの重要性が叫ばれるとともに、ITシステムの基盤となる物理的なインフラストラクチャ(物理インフラ)に注目が集まっている。

 IT/IS部門スタッフにとっては、ビジネスの拡大に合わせてサーバやストレージなどのハードウェアの増強を図ったり、ハードウェアのトラブルに対処するためにコンポーネントを冗長化して可用性を高めたりすることはごく基本的な取り組みである。しかしながら、ITシステムという限られた局面だけの対策では、本当の意味でのビジネス・コンティニュイティは実現しえないのが現実だ。むしろ、ITシステムの度重なる増強がマイナスの影響をもたらしてしまうことさえある。

 例えば、近年表面化してきたのが電力に関する問題だ。ブレード・サーバに見られるように、ハードウェアの高密度化が進み、1本のラックに従来よりも多くのサーバを搭載することが可能となったが、その分、電力の供給が追いつかないというケースが目立ち始めているのだ。ハードウェアの消費電力量は向上する一方であるのに、電源容量は簡単には増やすことができない。ほとんどの場合、建物内に引き込める総電源容量は着工時に決まっているからだ。電力設備を増強するためにはビル内の配線工事を含め、膨大な費用がかかる。こうしたことから多くの企業が電力不足に陥っているのである。

 さらに、仮に必要な電源容量をまかなえたとしても問題は終わらない。サーバなどのハードウェアが消費した電力は熱に変わるため、今度は空調設備を増強しなければならないという問題が出てくるのだ。一般的なサーバは、ファンを回転させて外気を取り込み、背面から排出することで内部を冷却するという仕組みをとる。このとき、サーバ内部の温度は外気温より10〜15℃ほど高くなる。すなわち、仮に取り込む外気温が35℃程度であった場合、サーバ内部は50℃近くまで上昇し、まさにダウン寸前の状態となるのだ。そうならないためにも、常にサーバ・ルームの室温は22〜23℃程度に保っておく必要があるが、当然のことながら、これらの空調設備もまた大量の電力を消費する。こうして、「電力」と「熱」の問題は悪循環に陥ることになるのである。

物理インフラを把握する
ための3つのポイント

 これらの問題の解決策を探る前に、物理インフラの全体像を把握しておきたい。首都圏を中心に全国の複数の拠点でデータセンター・サービスを展開しているNTTコミュニケーションズでは、ユーザー企業に対して信頼性の高いサービスを提供するうえで、次の6つのポイントからデータセンターの機能を整理している。

(1)立地(ロケーション)

(2)建築(コンストラクション)

(3)設備(ファシリティ)

(4)セキュリティ

(5)ネットワーク

(6)オペレーション

 このうちの(1)(3)が、一般的な意味での物理インフラである。これらについて、同社がいかなる施策や対策を講じているのかを知ることにより、ビジネス・コンティニュイティを支える物理インフラのあり方や基本的な考え方をつかむことができよう。

(1)立地に対する着眼点

 同社がデータセンターを設置するにあたってひときわ重視しているのが立地である。立地における中心課題は、地震や津波、洪水などの広域災害に対する備えが強固なことであり、地盤の安定度、活断層の有無、標高、海岸線からの距離、液状化度、定期航空路の有無といった要素について検討がなされる。例えば、同社の首都圏のデータセンターは、次のような立地条件にある。

●地盤:安定した地盤を形成。杭の支持層となる地層は、N値60以上(注1)の上総層群である
●活断層:付近には見つかっていない
●海岸線からの距離:約10km
●航空路:上空に定期航空路なし

 そして実は、もう1つ見逃してはならない重要な条件がある。それは「都心からの距離」や「交通アクセス」だ。同データセンターは、東京都心からの距離が約20kmで、なおかつ幹線道路からのアクセスも良好な場所にある。その理由を、同社ITマネジメントサービス事業部アウトソーシングプラットフォーム部PFサービス推進部門の担当課長を務める本橋寿哉氏は、次のように説明する。

 「災害対策には2つの考え方があり、従来は都心からある程度の距離、つまり震度が−1される60km以遠に重要なデータを保存しておくという考え方が主流だった。しかし、データセンターが災害を免れてシステムが無事に生き残ったとしても、肝心の“人”がそこに駆けつけることができなければ、ビジネスを継続することは難しい。そうした意味で都心から20km程度の近距離にあることは、非常に重要な要件となる。また、近傍の幹線道路は東京都の『緊急道路障害物除去路線』に指定されており、災害時には優先復旧されることが期待できる」

(2)建築に対する着眼点

 建築のレイヤにおいても、同社は現段階で考えられる限りの対策を施している。同社のデータセンターは、「阪神大震災規模の地震でも機能上支障なく稼働すること」を基本方針とし、建物特性を考慮しつつ、耐震・制震・免震構造を採用している。

(3)設備に対する着眼点

 設備についてはどのような特徴を備えているのだろうか。その概要を示したのが図1である。立地や建築と同様、このレイヤにおいても耐震性を高めるためのさまざまな工夫が施されるとともに、セキュリティに関しても高い配慮がなされていることが見てとれる。

図1:NTTコミュニケーションズのデータセンターの設備概要

 ここで特に注目したいのが電源供給のメカニズムである(図2)。同データセンターでは、通常時でも必ずUPS(無停電電源装置)を経由してサーバやストレージなどの設備に給電する体制をとっている。

図2:通常時でもUPSを介して電力を供給し、緊急時は発電機に切り替わるまでの「つなぎ」として利用

 「日常生活ではまったく意識されることはないが、電力会社から供給される電力では、実際にはまれに瞬断や電圧の乱れなどが発生しており、それによってシステムに悪影響を及ぼすことがある。UPSを介することにより、こうした電力の品質を高め、ひいてはシステムの安定稼働を支えることが可能となる」と、本橋氏はその理由を語る。

 これらのUPSは、万一の停電時には、本来の機能であるバックアップ電源としての役割を発揮し、重要なIT機器に対して電力を供給する。もっとも、UPS自体が備えているバッテリーの容量には限界がある。そこで同データセンターでは、停電時には自前の発電機を動かし、3〜5分後にその動作が安定した時点で、UPSのバッテリーと切り替えて継続的に電力を供給するという仕組みをとっている。

注1:ボーリング調査によって得られる地盤の強度を示す数値。一般に50以上で強固な地盤とされる


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