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データセンター革新

グリッドの経営価値【後編】

データセンターとグリッド

(2007年05月16日)

リソースの仮想化と運用の簡素化

 マツダの事例は、あくまでも災害復旧のための“効率的な仕組み作り”を目指したものだが、当然、グリッド技術の適用目的はそれだけに限定されるものではない。

 例えば、企業の業務(アプリケーション)の中には、サーバに大きな負荷をかける時間帯が異なるものがある。そうした業務をうまく組み合わせ、グリッドの技術で仮想的に統合されたITリソース上で動作させるようにすれば、サーバの使用効率と投資対効果を高めることが可能になる。

 もちろん、異なる業務を担うサーバを物理的に統合・集約するだけであれば、グリッドの仕組みを用いずとも、仮想化技術(ないし、仮想マシン)の活用で事足りる場合がある。

 また、実際にも、ユーザー企業の多くが、異機種サーバの集約・統合やレガシー・マイグレーション、および運用コストの削減を目的に、グリッドではなく、仮想化技術の採用に乗り出している。

 とはいえ、管理すべき仮想マシンのインスタンスやプロセッサ・リソースの数が増えてくれば、それらを一元的に管理するためのソリューションが必要になってくる。そうしたソリューションを提供するのは、すなわち、グリッドにほかならない。

日立製作所の吉野松樹氏(ソフトウェア事業部 先端情報システム研究開発本部担当本部長)

 「現時点では、企業が管理すべきプロセッサの数にしても、その上で動作する仮想マシンの数にしても、グリッド化による一元的な運用管理が必要な数量には達していないかもしれない。しかし、それらの数が増えてくれば、結局は、グリッド的なアプローチによる運用管理が不可欠になる。また、そうしなければ、何らかのシステム・トラブルが発生した際に、それがどの業務に影響を与えるのかがわからなくなり、システムの運用自体が行えなくなるおそれがある」と、日立製作所の吉野松樹氏(ソフトウェア事業部 先端情報システム研究開発本部担当本部長)は指摘する。

 また、仮想化技術を用いてサーバを集約し、コスト削減を実現したとしても、それによって、1つのサーバの障害が広い範囲に影響を及ぼす危険性は高まる。そうした危険性を回避するためにも、グリッドの技術が必要とされると、吉野氏は言う。
 

 「これは、あるグローバル企業の例だが、この会社では、世界各所に分散していたメール・サーバを1つに集約し、メール・サーバに対するワークロードを世界規模で平準化させたらしい。ただ、このような仕組みを構築すると、逆に、“single point of failure(単一障害点)”の問題が頭をもたげてくる。とすれば最終的に、グリッド技術を活用し、グローバルな複数の拠点に負荷を分散するようなことが必要になるだろう」(吉野氏)

 加えて、グリッドには、(データセンターが分散化している、していないにかかわらず)運用管理を合理化できるという本質的なメリットがある。

 もちろん、グリッドによって、ITシステム運用の完全な自動化(ないし無人化)が実現されるわけではない。例えば、グリッド・ミドルウェアによるデータセンターの最適化や運用は、あくまでも人が記述したポリシーに沿って行われる。

 また、グリッドの技術を取り入れた管理システムにしても、予期せぬ事態の発生を検知したり、それをオペレーターに通知したりすることはできるが、想定外の事態に対する解決策を自ら割り出し、システムに対して自動的に講じる機能は有していない。

 さらに、現時点では、グリッド技術の導入によって、ITシステムの操作手順が具体的にどれだけ削減されるのか、または、人的ミスがどの程度まで排除されるのかを示す、標準的で定量的な指標があるわけでもない。

 とはいえ、グリッド技術の活用によって、煩雑な運用管理の業務をかなりのレベルまで簡略化できることは確かであろう。

 今日、ITシステムに対するビジネス要求が増大の一途をたどる中で、運用管理技術者の絶対数は減少傾向にあり、企業の運用管理担当者の負担は増す一方となっている。とすれば、“運用管理の合理化・省力化を可能にする”という一点だけをとらえても、グリッドの導入は、検討に値する十分な価値があると言えるのである。


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