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拠点間のデータ遅延を解消する「WAN高速化」最新事情
アクセスを高速化し、遠隔業務でも高い生産性を実現
(2007年11月02日)
個人情報保護法や金融商品取引法(通称:日本版SOX法)などに対応するべく、多くの企業がコンプライアンス(法令順守)を強く意識するようになってきている。その一環としてITリソースを1カ所に統合する動きが活発化してきた。ITリソースを一元管理すれば情報漏洩を防止し、コスト削減にもつながる。他方、拠点内にあったサーバを統合されてしまったあとのクライアントは、WAN(Wide Area Network)を介して遠く離れたデータセンターのサーバへアクセスしなければならず、回線遅延の問題が深刻化している。本稿では、企業がITリソースを統合する過程で顕在化してきたWANの遅延問題を取り上げ、WAN高速化装置の導入効果などについて解説を行う。
岩本直幸
ネットマークス パートナーソリューション事業部 SND営業部 市場開発グループ
コンプライアンス強化の動き
2007年8月にIDC Japanが発表した「国内コンプライアンス関連IT基盤市場規模予測」によれば、2006年から2011年の国内コンプライアンス関連IT基盤市場の年間平均成長率は38.2%、投資規模は2006年の2,688億円から2011年には1兆3,565億円に拡大することが予想されている。このデータから、企業がコンプライアンス強化に向けてIT基盤への投資を加速していることがわかる。
コンプライアンス強化のために必要となるIT基盤は、高いセキュリティ・レベルを保持し、なおかつデータの一元管理と事業継続(BC)/災害復旧(DR)を実践できる基盤でなければならない。そのため企業は、下記に示す各段階に従ってIT基盤を整備している。
(1)分散した業務システムの統合
(2)アクセス制御を考慮したデータセンターへのITリソース統合
(3)内部統制対策としてのBC/DR
第1段階は、分散した業務システムを統合し、アクセス制御によるセキュリティ強化やデータ集約が実施される。サーバやストレージは分散していてもよく、重要なデータへのアクセス統制が先決となる。
第2段階では、拠点ごとに分散したサーバやストレージの集約が行われる。セキュリティ・レベルの高いデータセンターへサーバ/ストレージを統合することで、情報漏洩を防止し、一元化によるメンテナンス・コストの抑制、データの有効活用を実現する。
第3段階では、統合した業務システムやサーバ/ストレージに対するBC/DR基盤を整備する。一元化されたデータが消失すると、企業は多大な損害をこうむることになる。そのため、メイン・サイトとは地理的に離れた別のサイトにデータをバックアップしておき、災害時でもリカバリおよびサービス継続ができる仕組みを整備する。
コンプライアンスによる弊害
ITリソースの統合が進む一方で、リモート拠点のクライアントは、コンプライアンス強化の流れにより業務の劇的な変更を迫られている。
サーバ/ストレージの一元化は、従来拠点内のサーバにアクセスしていたクライアントに、遠隔地にあるサーバへのアクセスを強いることになった。遠隔地のサーバへは、WAN(Wide Area Network)を介してアクセスすることになるが、その際WANの回線遅延が影響し、企業にとって重要な要素である生産性の向上に支障をきたすようになった。
日本は、アジアの中で韓国と同様にブロードバンドが普及している国の1つだ。そのような回線事情で生産性が低下することは実際に起こりうるのか、と疑問を持たれる方も多い。しかし、回線の太さに関係なく、回線遅延は必ず発生する。特にWANを介して遠隔地にあるファイルを開く場合、LANを介したファイルのオープンが数秒だったのに対して、WANを介した場合には数十秒もかかることがある。
光回線で結ばれた東京─沖縄間(約1,500km)の通信事情を例に回線遅延を考えてみる。光が1km進むためには約5マイクロ秒が必要であり、光であっても東京─沖縄間では約7.5ミリ秒の遅延が起こる。これに加えて、機器を通過する際に発生する機器遅延や通信経路による距離増加なども重なり、合計すると約30ミリ秒まで遅延が増大する。
このように、距離が離れれば必ず回線遅延が発生し、通信経路などによっても遅延は増減する。クライアントとサーバは、アプリケーションに応じた要求/応答のやり取りを行うが、遅延が増大すると必然的にやり取りも遅くなる。仮に、クライアントとサーバ間で1,000回のやり取りを行った場合、遅延が1ミリ秒のLAN環境であれば、1秒(1ミリ秒×1,000=1秒)でやり取りが完了するが、遅延が30ミリ秒のWAN環境となると、30秒もかかってしまうことになる。
WAN高速化装置に対する期待
上記のような状況を受け、WAN高速化に対するニーズが高まってきた。2004年以前は海外の細い回線に対するソリューションとして、回線に流れるデータ量の圧縮やTCPウィンドウ・サイズの拡張により、高遅延下で使用できていない帯域を埋める装置がリリースされていた。2004年以降は、米国アクトナ・テクノロジーズ(2004年6月にシスコシステムズが買収)や、米国ディスクサイト(2006年5月に米国エクスパンド・ネットワークスが買収)などが注力していたWAFS(Wide Area File Services)装置がリリースされ、サーバ統合に伴い、遠隔利用が増加したWindowsファイル共有(CIFS)を高速化する装置が登場した。
WAFSが登場した背景は、データ圧縮やTCPウィンドウ・サイズの拡張だけではCIFSを高速化できず、CIFSに特化したアプライアンス製品のリリースが市場で求められていたからだ。しかし、WAFS装置には高速化のためにファイルを保存する必要がある。サーバ統合を進める企業にとっては、拠点からサーバを撤去した後に、情報漏洩のリスクがあるWAFS装置を新たに拠点に設置するという矛盾につながり、受け入れにくいものがあった。
こうした背景の中、ベンダー各社からファイルを保存しなくとも拠点間通信を高速化できる「WAN高速化装置」がリリースされた。WAN高速化の対象プロトコルは、各社ともCIFSをメインにしているが、NotesやExchangeのほか、SQL ServerといったRDBMSのプロトコルも一部、高速化対象となる。そのため、WAN高速化装置では多様なプロトコルをサポートし始めている。対応プロトコルが増えることで、WANを介したアクセスの大半で遅延を回避し、業務の生産性低下を防ぐことができるようになる。さらに、装置上にはファイルを保存しない点が、コンプライアンス強化にも貢献することから、この装置への注目が高まっているのだ。



















