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データセンター革新

拠点間のデータ遅延を解消する「WAN高速化」最新事情

アクセスを高速化し、遠隔業務でも高い生産性を実現

(2007年11月02日)

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モバイル環境でのWAN高速化

 近年、ノートPCに専用ソフトをインストールすることで、モバイル環境でもWAN高速化を実現する製品が主要ベンダーから提供され始めた。執筆時点で製品をリリースしているベンダーは、ブルーコート、パケッティア、リバーベッド、シトリックスの4社である。

 モバイル向けWAN高速化ソフトがインストールされたノートPCは、ハードディスクに一定量のキャッシュ領域を確保し、データをキャッシュすることでWAN高速化を図る。WAN高速化装置と同様に、キャッシュ領域に保存するデータが、ファイル単位かバイト単位かで製品を大別することができる。

 ファイル単位でキャッシュするモバイル向けソフトでは、バイト単位でのキャッシュに対し、データ内の共通なビット列を排除することができず、ファイルすべてをキャッシュするためハードディスクに無駄が発生する。また、ノートPCにファイルが丸ごと残っているため、情報漏洩の危険性もある。一方、バイト単位でキャッシュするモバイル向けソフトは、高速化するためにあくまでデータ・セグメントをノートPCに保存しているにすぎない。こうした点は、WAN高速化装置と同様である。

 上記の説明をパターン・とパターン・に分けて図示した(図3)。パターン・に該当するベンダーは、ブルーコートとパケッティアで、パターン・は、リバーベッドとシトリックスとなる。


図3:WAN高速化用モバイル・ソフトの通信パターン

 4社の製品を比較してみると、高速化するプロトコルの種類とライセンス形態に大きな違いがある(表1)。リバーベッドは同時接続数を基にモバイル・ソフトのライセンスを提供しているが、それ以外のベンダーはユーザー数を基準にしている。モバイルでの利用が外出時などに限定されるのであれば、VPN(Virtual Private Network)のライセンスと同様に考えることができ、全モバイル・ユーザーの3、4割で検討すれば十分だろう。これは、全ユーザーが常にモバイル環境にいるわけではないからだ。

表1:モバイル環境でWAN高速化を実現するソフトの比較

 なお、モバイル向けソフトを利用するには、必ずデータセンターにWAN高速化装置を設置する必要がある。よって、WAN全体のネットワーク構成の設計作業は欠かせない。また、リバーベッドのようにWAN高速化装置の全モデルをモバイル向けソフトに対応させているベンダーもあれば、シトリックスのように「WANScaler 8000」シリーズに限定している場合もある。この点は注意が必要だ。

モバイル向けソフト導入時の注意点

 モバイル向けソフトが最も効果を発揮するのは、外出先からの利用である。そうなると、当然、VPNとの相性を無視することはできず、使用するモバイル・ソフトとVPNの実地テストは欠かせない。また、日本の場合、少人数のオフィスも多いため、モバイル・ソフトをWAN高速化装置と併用、またはWAN高速化装置の代用とするケースが多くなることも予想される。

 しかし、モバイル向けソフトは、WAN高速化装置と同レベルの性能を発揮するわけではない。モバイル環境や少人数のオフィスであっても、WAN回線全体を考慮した通信が行えないモバイル向けソフトは、使用する回線が混み合ってしまえば、性能は一向に上がらない。WAN回線に複数人が同時アクセスする場合、モバイル向けソフトよりもWAN高速化装置に共通データのキャッシュを持たせ、帯域を制御する方が高速になることも多い。やはり少人数オフィスの場合といえども、モバイル向けソフトと合わせて、WAN高速化装置の導入検討が必要であると言えよう。

今後のBC/DRを支える技術「FAN」

 企業が取り組むコンプライアンス強化の第3段階では、BC/DRとして、メイン・サイトとは別にバックアップ・サイトを構築することは冒頭で述べた。しかし、バックアップ・サイトは、メイン・サイトと同等規模の設備を構築する必要があることに加えて、災害発生時に利用するという位置づけであるため、実際は利用頻度が低くなる。

 そこで、ミラー・サイトという考え方が生まれた。これは、災害時だけに利用するバックアップ・サイトとは異なり、クライアントは普段からミラー・サイトへアクセスすることができる。ミラー・サイトを効果的に活用すると、メンテナンス時にも事業が継続でき、さらに各地に分散した事業部門ごとに、地理的な要素を加味したアクセス制御が行える。

 ミラー・サイトを構築するには、ミラー・サイト/メイン・サイト/リモート拠点間の回線遅延を克服する技術が必要である。そのため、各サイト/拠点にはWAN高速化装置の導入が前提となる。WAN高速化装置を導入することで、リモート拠点のクライアントは、各サイトのサーバへ高速にアクセスできるようになる。しかし、クライアントがアクセスするファイルは事業部門やプロジェクトごとに多くのサーバに分散しているため、各ファイルの保管場所を見つけ出すのに手間取ってしまう。

 そこで、FAN(File Area Network)というアプローチが注目されるようになった(図4)。FANとは、物理的な設置場所を問わず、NAS(Network Attached Storage)などで接続されたファイル・サーバを統合・管理できる技術である。FANの機能は、マイグレーション、レプリケーション、プレイスメント、情報のクラス分け、アクセス制御の5つからなる。

図4:FANによるファイル・サーバ統合/制御のイメージ

 FANの必要性を示すかのようにここ数年、FANを構成するための要素技術であるNFM(Network File Management)製品のベンダーを、WAN高速化/WAFSベンダーが次々と買収しているのが目立つ。シスコは2007年3月に米国ネオパス・ネットワークス、F5は2007年8月に米国アコピア・ネットワークスをそれぞれ買収している。また、パケッティア製品をOEMで販売しているブロケード・コミュニケーションズ・システムズも、米国ニュービューを2006年3月に買収している。

 このように、WAN高速化装置やWAFS装置によって距離の概念がなくなることで、FANに注目が集まるようになってきた。FANにより、リモート拠点のクライアントはファイルの物理的な保管場所を意識しなくて済む。管理者にとっては、物理的に分散したファイルを一元管理でき、クライアントへの影響なしにデータ移行やサイト間レプリケーションが行える。

 ただし、FANは距離に依存しないアクセスができて初めて成り立つ技術である。そのため、コンプライアンス強化の第3段階で、WAN高速化装置を導入した上に成り立つ技術と言える。


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