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米国企業4社のビジネスGIS[先端活用事例]

GISとBIの統合でエリア・マーケティングが変わる!

(2006年06月02日)

企業では、すでに何年も前から、ダイレクト・メール(DM)を送付する地域を絞り込む際や新規店舗の出店場所を選定する際などに、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)を活用してきた。だが、テクノロジーの進展は、GISをビジネス・インテリジェンス(BI:Business Intelligence)と統合することを可能にし、企業はさまざまな角度からビジネスを分析して経営上の最適なデシジョンを下すために地理情報を活用できるようになった。本稿では、GIS+BIシステムの利用で最先端を歩んでいる米国企業4社の事例を紹介する。

ゲーリー H.アンテス
Computerworld米国版

Business GIS Case Study 01
GISツールとBIツールの連係により、確度の高い出店計画を策定
●米国ステープルズ http://www.staples.com/

 米国ステープルズは2005年、5,000カ所に上る候補地の詳細な検討を経たうえで、95店舗を新しくオープンするという計画を立てた。同社は、米国マサチューセッツ州フラミンガムに本社を置くオフィス用品小売業の最大手で、米国、カナダ、ヨーロッパに1,300以上もの店舗を展開している。

画面1:SASインスティテュートのビジネス分析ツール「SAS Analytics Server」

 店舗の新設には、もちろんリスクが伴う。それは、店舗を閉鎖する際のコストで計られることが多いが、ステープルズの場合、1店舗の閉鎖に50万〜100万ドルのコストを要するという。よって、店舗の新設には慎重を期す必要があるわけだ。そこで、同社では、米国タクティシャンのデスクトップGISツール「Tactician One」とSASインスティテュートのビジネス分析ツール「SAS Analytics Server」(画面1)とを連係させて、そこから得られる情報を基に、店舗経営の基盤となる「出店場所」を選び出すことにした。

画面2:技研商事インターナショナルのデスクトップGISツール「MarketAnalyzer」

 タクティシャンは、デスクトップ・ツールとオンライン・サービスの2種類のGISを提供している。日本では、技研商事インターナショナルが同社の「Tactician One」を日本向けにローカライズしたデスクトップGISツール「MarketAnalyzer」(画面2)と、Webベースのサービス「Tactician Online」(画面3)を提供している。MarketAnalyzerには、独自のアプリケーションが追加されており、デジタル地図や国勢調査などの統計データと自社データを組み合わせて、店舗開発、顧客分析、リテール・サポートなどマーケティングに必要なデータ分析を行うことができる。

画面3:技研商事インターナショナルのGISサービス「Tactician Online」のリポート画面

 ステープルズでは、Tactician OneとSAS Analytics Serverを用いて、1週間の売上げあるいは売上げ見込みを郵便番号地域別に予測する「不動産モデル」を作成することから始めた。同社の販売予測担当ディレクター、アラン・ゴードン氏によると、この不動産モデルには、競合店の情報やその地域の住民構成など、出店場所の選定に影響する約30の要因が盛り込まれており、なかには、競合企業がまだ知らないような要因も存在するという。

 また、的確に出店場所を絞り込むために、SAS Analytics Serverによって、外部の業者から購入する地理情報の修正や改良を行い、データの精度を高めている。

 ゴードン氏は、「不動産モデルは、出店場所の選定のほか、予算の作成、従業員の勤務スケジュールの作成、DMキャンペーンなど販促プログラムの作成といった作業にも用いられている」と語る。現在、同社では、6つの部門にTactician Oneを導入しているという。

 「GISを用いたマーケティングに力を入れれば入れるほど多くの問題が見つかる。われわれはそういった問題を改善していくことで、市場競争を勝ち抜こうとしているわけだ」(ゴードン氏)

 ゴードン氏によると、地点間の車による移動時間をデータとして含んでいる商用のGISツールでは、移動時間を算出する際に道路のタイプに応じて車の走行速度を変更することは可能だが、各地域の実際の交通事情までは考慮されていないという。そのため、ステープルズでは、各地域の交通事情を盛り込んだGISツールを構築している。同ツールでは、郵便番号を基に交通事情の調査を行うため、ある郵便番号地域から交通量が異なる郵便番号地域を通過して別の地域に車で移動するのにかかる時間を現実に即して把握できるようになった。

 なお、近年では、GISツール・ベンダーならびにBIツール・ベンダー各社は製品間の連係を進めており、ユーザー自身がGISツールとBIツールを連係させるために手を煩わされることはほとんどない。しかし、タクティシャンとSASのツールはまだ連係が取れていないため、ステープルズは、両社のツール間のデータのやり取りをFTP経由で行っている。

 ゴードン氏によると現在、同社は、SASとタクティシャンのツールが「DB2」または「Oracle」データベース内の同一のテーブルにアクセスすることを可能にする独自のインタフェースを開発中だという。

Business GIS Case Study 02
地理情報を基に、的確な広告配布対象の絞り込みを実現
●米国アリゾナ・リパブリック http://www.azcentral.com/arizonarepublic/

 米国アリゾナ州フェニックスにある新聞社、アリゾナ・リパブリックは、ESRIのGISツール「ArcGIS」を導入することで、同社が発行する新聞の広告チラシの配布プロセスを芸術と言ってよいほどのレベルにまで高めた。

画面4:アリゾナ・リパブリックが利用しているカスタム・ツール「Market Focused II」の画面。配達システムから購読者情報を取り込んで作成した配達ルートを地図上に表示している

 アリゾナ・リパブリックでは、毎日、「Market Focused II」というカスタム・ツールによって、配達システムから購読者情報を取り込んで新しい配達ルートを作成し、それを地図として表示している(画面4)。その際、ArcGISによって、地理データベースの読み出し/管理/クエリが行われる。

 このシステムを利用すると、特定の郵便番号の地域、番地、あるいは特定の広告主の店舗が設置されている周辺地域に配達される新聞に、チラシが折り込まれるように指定することができる(画面5)。具体的には、広告主が経営する5カ所の店舗に最も近い500世帯にだけ、あるいは、広告主の店舗の近くの特定の非購読者世帯に向けてチラシを配布することが可能になる。広告主の依頼は、配達システムおよび広告受注システムに反映される。

画面5:ESRIのGISツール「ArcGIS」の画面。広告主がチラシの配布対象を自社の店舗から一定の距離に住んでいる住民に絞り込める

 アリゾナ・リパブリックの主席アナリスト、カレン・パリラ氏は、プール業者を例にとって、Market Focused IIの効果的な利用法を紹介する。

 「家庭用プールの販売業者なら、自社の店舗の近隣でプールを持っている家に狙いを絞ってチラシを配布すればよいし、また、高級プール専門の保守業者ならば、年収が17万5,000ドル以上の世帯にだけチラシを配布するのもよいだろう」(パリラ氏)

 パリラ氏によると、この独自システムを導入する以前は、チラシの配布対象の分析は郵便番号から把握できる情報を基に行うほかなく、できることにも限界があった。「当社のシステムはより強力なものへと生まれ変わった」と、同氏は自信を見せる。

 一方、パリラ氏は、「地理情報を用いた分析は膨大な演算能力を必要とするため、システムにはそれなりのスペックが要求される」と注意を促す。

 ArcGISファミリーには、利用形態によって、「Desktop GIS」「Server GIS」「Embedded GIS」「Mobile GIS」という4タイプの製品がラインアップされている。Market Focused IIは当初、Desktop GISと連係してユーザーのPC上で利用されていたが、85カ所の店舗を中心とした半径3マイル地域の調査といった複雑なクエリを実行しようとすると8時間以上もかかることがあった。そこで、アリゾナ・リパブリックでは、Desktop GISをServer GISにリプレースして、アプリケーションの処理をすべてサーバに集約させ、ユーザーはWebブラウザからMarket Focused IIを実行するというWebアプリケーション型に変更した。これにより、上記のクエリを、わずか35分で実行できるようになったという。


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